第9話 試験合格、動き出す闇

「おめでとうございます!お二人も今日から冒険者です!」


ギルドに着き、戦利品と共に報告して受付のエマさんから無事に合格通知をもらう事ができた。


「これからはお二人に冒険者のお仕事を簡単にご説明しますね」


そう言って、エマさんの冒険者講座が始まった。


試験に合格して無事に冒険者になった俺達は今後、ギルド内にある掲示板に貼ってある依頼書を読んで自分のやりたい仕事を受けて、それを完遂して報酬を貰っていくのが冒険者の主な流れとなる。

依頼の難しさはランク付けされており、それと今の自分の実力をしっかりと吟味して仕事を受けるようにと注意を受けた。毎年、無謀な仕事を受けて命を落とす冒険者は一定数いるらしい。

俺達のような新人は最低ランクのEランクの依頼からやっていくのがセオリーとのことだ。


「説明はだいたい以上です。それではお二人とも良き冒険者ライフを」


そう言って、エマさんの冒険者講座は幕を閉じるのだった。


「今日は疲れたねカイン」

「まぁ、あれだけ動けばな」


そう言って、シエルと共にギルドを後にしようとした時。


「あ!あなた達!」


声を掛けてきたのは試験の時に助けた3人組の女性の人だった。


「あの時の!怪我した人は大丈夫ですか?」


シエルがそう聞くと


「えぇ、2人のおかげで助かったわ。まさか冒険者試験の最中だったなんてね。2人ならきっといい冒険者になるわ。お礼という訳じゃないけど分からないことがあったら何でも聞いてね」


「はい、ありがとうございます!」


シエルがそう返事をすると女性は笑顔で手を振って去っていった。


「いい先輩に会えて良かったね」

「そうだな、幸先よさそうだ」


こうして、俺とシエルの冒険者への第一歩は大成功に終わった。



冒険者になってからというもの俺は儀式をやるのにふさわしい場所を探すために森の探索を進めていた。


しかし、そのような場所は都合よく見つからず魔物を何体か倒して帰る日々が続いたある日、俺はゴブリン達の相手をしていた。


だが、最後の1体になったところで一目散へとゴブリンは逃げて行った。その後を追いかけると一つの洞窟を見つけた。

ゴブリン達の巣穴は冒険者達に見つけられると掃討され、穴自体は封鎖されるのでこの穴は比較的、最近になってから作られたものだと分かる。

俺は洞窟へと足を進める。ゴブリン達が被害を出す前に早く退治しなければならない。幸いなことに俺の実力ならばゴブリンには遅れを取ることはない。



結論から言うと全く問題はなかった。

あの逃げたゴブリンが最後の1体だったらしくそいつを倒したら終わってしまった。

しかし、倒し終わってから洞窟を探索しているとあることに気が付いた。


「ここ、本当に巣穴か?」


そう、のだ。

ゴブリンの巣穴は獲物の骨や排泄物などで酷く汚れるものだ。作られてから日が浅いということを加味してもここにはあまりにも何も落ちてなどはいなかった。


歩きながらそう考えていると一箇所の壁に目が止まった。


一見、なんの変哲もない岩壁。


だか、どうにも違和感を感じる周りの壁と質感が違うのだ。

そして、触れてみて初めて分かった違和感の正体。


「この壁…魔法で作られたものだ」


手から伝わる微かな魔力でこの壁が偽物である事が分かる。

個性魔法を使い、壁を消しさると奥へと続く道が現れた。

先の方は真っ暗で何も見えないが何かが俺を呼んでいる気がした。それが何かは分からないが何か確信めいたものを感じた。


この先に俺の望んだものがある。


少しの恐怖とそれを上回る好奇心に駆られて俺は闇へと足を踏み入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る