第5話 魔物の森
街であの古びた本を見つけてから二日が経った。
色々とあの本を読んでみて分かったことがいくつかあった。
悪魔が一体なんなのか、どんな悪魔がいるのか、あの本には事細かに書いてあった。だか、情報量が多すぎて、とてもじゃないが二日そこらで読み切れる量ではなかった。
恐らくあの本は人間が書いた物ではないのかもしれない。今まで色んな本を読んできたがあそこまで悪魔についての記載がある本は見たことがなかった。
そして、あの時に見た言葉。
『
あれは簡単に言えば儀式だった。
悪魔と人間のお互いの命を懸けた。
人間が悪魔を召喚し、悪魔に勝負を申し込む。悪魔がこれを断ることは無い。
人間が勝てば召喚した悪魔の力全てを与えられる。悪魔が勝てば肉体と魂は喰われ、未来永劫、痛みと苦しみを与えられ続ける。
悪魔とは神話上の生き物で何が弱点でどんな攻撃しているのかは誰にも分からない。
そんな訳の分からない化物を呼び出してぶっつけ本番で倒せなんて無理ゲーもいいところだ。
だが、幸いなことに俺が手にした本には悪魔について書かれていた。
アイツらを倒し、力を手にする為に後はやれることをやるだけだ。
こんな話を信じているのは世界を探しても俺くらいだろう。何を馬鹿な事をしているのかと誰もがそう思うだろう。
だけど、俺はあの本に書かれていることが嘘だとは思えない。いや、思いたくないが正しいかもしれない。
俺の願いが叶うなら神にでも悪魔にでも縋ってやるつもりだ。
★
場所は変わって、ここは王都から出て近辺にある、とある森に来ていた。
時刻は深夜、こんな時間にこの森に近づく者は誰もいない。
だか、俺は10歳の頃からこの森に来ていた。その理由はいたってシンプル...。
森を歩いているとその理由が現れた。
黒い体毛に覆われた四足歩行の犬の様な生き物。
そう、俺は実践経験を積むためにこの森に来ている。
『魔物』
未だに謎が多い生物、悪魔が生み出した眷属と言う話もあり、その正体は解明されていない。世界各地に生息しており、国だけではその討伐が追い付かないことから魔物討伐を
多種多様な種類が存在し、今回俺が出会ったのは犬型の魔物だ。比較的弱く新人の良い練習相手となる。
―――グルルウゥゥッ!
魔物の低い呻き声が俺の耳へと届く。
俺の装備は家からパク...もとい借りてきた剣のみ。だがこの程度の相手であればこれで問題ない。
さて、ここで今一度、この世界においての戦闘を見せるとしよう。
この世界には二つの魔法が存在する。
基礎魔法と個性魔法、魔力は全ての根幹で、何をするにしてもこの魔力が大事になってくる。そして、この魔力を理解、応用して戦うのがこの世界の一般的な戦い方だ。
その中で基礎魔法でも基礎中の基礎で、誰もが一番最初に教わる技。
自身に内包する魔力を手から射出する基礎魔法。
「
俺から放たれた魔法の球が魔物目掛けて飛んでいくがすぐさまその場から跳び去り、球は森の闇へと消えて行く。
流石にこれで倒せるほど甘くはない。
この魔法は込める魔力によって威力も速さも段違いに変わっていく。
鋼鉄のような硬さからゴムボールのような柔らかさ。掴むことが出来る程に遅い球に肉眼では捉えられない程の豪速球。
全て、使用者の実力次第。なんとも分かりやすいことで。
そしてもう一つ、一般的な汎用性抜群の魔法。
―――グルラァァ!
鳴き声共に魔物がこちらへと飛び込んで来る。その直後、俺は全身に魔力を巡らせる。その魔力で肉体を強化し、常人とはかけ離れた速さと力を得る魔法。
「
軽く後ろへとステップをするだけだがこの魔法のおかげで大きく距離を取れる。
この魔法も使用者の実力次第で効果が大きく変わる。大岩を素手で砕ける程の力を有すことも神速を得ることも可能だ。
「さて、そろそろ終わりにするか」
手にした剣を改めて構え直す。
そして、再び跳躍し魔物が突っ込んでくる。
この魔法は何も身体能力だけが向上するのではない。魔力の流れを調整すれば目...つまりは動体視力も向上できる。
この向上した視力で相手の動きを見極め、攻撃へと転じる。これも魔物との戦いで重要なことだ。
魔物の攻撃が当たる直前に身を
そして、俺の目の前にある尻尾を掴み魔力で腕力で強化する。
そして
「っらぁ!」
魔物を背中から地面へと叩き付ける。直後、魔物の背骨が砕ける鈍い音と吐血を確認する。
そして、すかさず剣をヤツの喉元へと突き刺す。
魔物の体が痙攣し、やがて動かなくなり絶命きた。
剣を抜き、血をはらう。
これがこの世界での基本的な戦闘、個性魔法を会得しているならもっと楽に勝てるだろう。
俺も個性魔法は使えるが生憎とこういった戦闘には不向きな能力で、見せるのは別の機会になりそうだ。
だか、もっと力がいる。
本物の悪魔と戦うことになるならもっと力がいる。奴らは神話上の生き物でかつては神とも戦ったことがあるらしい。
しばらくはあの本を読み進めながら森で魔物討伐の日々が続きそうだ。
「さぁて、もう少し倒して行きますか」
そう言って俺は夜の森へと足を進めて行った。
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