夢を視た
のーと
第1話
さよならのタイミングを見誤ってしまったせいで、今日が僕の失恋記念日になった。
君の横顔を気づけば追っていた。
どこにいても手を振り返してくれるような優しいヤツ。
その対象はいつも僕以外だったけれど。
青春の1ページ、その、蚊帳の外で。
青空に気を取られていた僕には他人事の夕焼けしか訪れなかった。
吐けば真っ白に広がって、凍った心を誤魔化してくれる。そのまま無視を続けて深呼吸して考え続けた。寂しく冷たい風の中、足はすっかり埋まっている。しかし1歩進んでしまえばそれすら僕の存在証明だ。もっと降れば埋もれてしまうような脆いものだけれど、今日くらいはもう少し残しておいて欲しいものだ。
僕も失われてしまおうかと何度も思う。癖になってしまって暇な時はずっと考えているくらい。
でも、僕はあいにく芸術家にはなれない。遠くの美しいものより手の届く範囲の幸せが守れればいい。そんな矮小な人間である。昔も、今も、これからも。
3番星の君。長いまつ毛が閉じる度に世界の回転が遅くなる。美しい鼻から喉仏までの曲線はいつも僕を魅了した。
僕の抱く歪な思いの一端が醜い口から出ていってしまうことは何とか阻止して一生懸命はにかんだ。
君たちの物語に僕が出てくるコマはひとつもない。
隅っこでたむろってる、その中でも小さな意思しか抱いてないように見られる僕。そんな僕の独白。
本当はいつも通り捨て置かれるはずだったもの。
……でも、今もまだ角が少し取れたなにかがごろごろ胸の中で転がっているんだ。だから今日でどうにか吐き出してしまって思い出にしたい。
だって昨日ウエディングドレスを纏った4番星に誓ったんだ。
タイムカプセルはもう掘り返さないって。
雪はいつの間にか止んでいた。僕が踏み固めた奴らもこれから溶けて土に馴染んでいくんだろう。だから、付けた足跡は無駄にはならない。
冷たい息で肺を凍らせて首を思いっきり上に振る。
星空に大泣きの笑顔を。
夢を視た のーと @rakutya
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