まったりした休日
-------カオ達が異世界へ転移して二年目くらいの話-------
今日はやまと屋(弁当屋)の休日で皆で馬車での朝散歩へ出掛けて戻って来た。
「せっかく馬車買ったんだからもっと乗ろうよ」
「そうですね、御者の練習したいです」
やまと屋で一緒に働く皆からそんな意見が出て、店の休日には馬車を使い、街の外へ出かける事が増えた。今日は朝食を持っての朝散歩となった。(あれ?馬車で行くのも散歩でいいのか?歩かないが……)
街の近くの草原でシートを広げて持っていった弁当を食べた。その後はシートに転がって休む者や、馬車を走らせる者達など、それぞれが休日を楽しんだ。
うちが弁当屋と言う事で、皆は朝早くから動く事に慣れているが、昼近くなると段々と眠くなってくるのか、シートへ戻って昼寝(昼前寝)をする者が増えてくる。
俺は最初からシートのど真ん中で朝寝を楽しんでいた。俺の腹の上にはマルクが乗って寝ていた。出会った頃に比べると少しだけ肉が付いてきたようで一安心。骨だけの2歳児なんて悲しすぎるからな。そんなマルクも『今年』の誕生会で3歳になった。俺の腹の上でプスプスと寝息を立てている。やはりうちの子が1番可愛いな。
気がつくと馬車はシートの横に停められていて、皆が寝ていた。草原とは言え、獣も出るので一応サモンは出してある。サモンとはモンスターを召喚する魔法だ。俺はウィズだからな。ライカンくん(ライカンスロープという人型狼?の魔物だ)を三体召喚して、周りに配置してある。
昼近くなり、腹が空いたのか子供らが起き始めた。アイテムボックスに入っていたマッツのハッピーセットを出して子供らに食べさせた。
「米食いたい」
「朝はパンだったから昼はお米だよね〜」
大人達が口々に言う。
俺はアイテムボックスからセボンのおにぎりやらサラダを出してシートの中央に置いた。
可笑しいな、大人組も皆持ってるはずなのに、何故俺が出すのを待つのだ?いいけどさ。あ、因みにマッツもセボンもダンジョンB2にあるのだ。異世界は不思議だ。
「カオるん、チキンあるか?セボンの」
「あ、チキンいいねぇ、食べたい食べたい」
「はいはい、ありますともぉ」
俺はアイテムボックスからセボンのチキンやフランクフルトを出した。レジ横のホットコーナーのやつな。それからマッツナゲットも出した。子供らが羨ましそう見ていたからな。
「ほら、子供らも食え」
そう言った途端、子供らが手を伸ばして来た。大きい子達はハッピーセットだけでは足りないか。ハンバーガーやポテトも出した。
マルクは小さい手でハンバーガーのパンをパカリと開き、ピクルスを掴んだ。それを俺の口元に持ってくる。
前にも同じ事があった。てっきりピクルスが嫌いなのかと、俺はパクリとそれを口で受け取り食べた。すると何故がマルクが悲しそうな顔になった。
後日リンさんに聞いた。リンさんは元ゲーム仲間でお子さんもいるママさんである。今はやまと屋で働く仲間だ
「マルクがピクルスを嫌い? いや、その年齢でピクルスは初だろ?口に入れてからの嫌いはあるけど、そもそもこの世界にピクルスがあるのかもわからないけどね」
「え……じゃあ、何で」
「うぅん、たぶんだけどさ、子供は口に入れる前に親に見せようとする事はよくあるよ」
「えっ、じゃあ俺はマルクがピクルスを俺に見せただけなのにパクリと食っちまったって事か?」
「そうだねぇw まぁ次同じ事があったら少しだけ齧って、美味しいねぇとか言ってみたら?」
ふふ、俺はレベルアップした。親レベルが上がったのだ。マルクが差し出して来たピクルスの端っこを齧る。
「おお!美味しいなぁ」
マルクが蔓延の笑みとなる。そして残ったピクルスを自分の口に運んだ。
「おいしぃねぇ」
「おお、美味しいな」
だがちょっと疑問。……酸っぱくないのか?子供の味覚はわからん。
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『ウエイトがライト』に続く
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