第5話 敏明 ~さよなら人生~4
「お前は、何という…。真っ当に働いて生きる気が無いのか?給付金も生活保護も、原資はちゃんと働いている国民が納めた税金だ。やむにやまれぬ事情で困窮して、何とかそこから抜け出そうとする人を助けるための補助じゃないか。…それをお前、怪我も病気もない、大学まで出たお前がただ何もせず生きるために受け取ろうというのか?」
顔を真っ赤にしながら非難してくる親父に、どうにも腹が立ってきた。
「ハァ!?使えるモンは使うのが賢い生き方だろうが!税金?だったら国民のために使えよ!俺らの世代は不景気直撃、就職氷河期で賃金も安くてまともに仕事も無かったんだからな。その埋め合わせを国がするのは当たり前だろ!!」
「敏明、考えを改めるんだ。そんな、世間に寄生して生きるようなこと。きっとお天道様は見てらっしゃる。自分の行いは自分に還ってくるんだぞ」
「還ってくる?だったら良いじゃねぇか。他の、運よくまともな仕事がある奴が働いて税金納めて、それを俺が使うんならギブアンドテイクだぜ」
「何を言っているんだ。ギブアンドテイク?お前は何も差し出していないだろう?」
親父の物言いにかっとなった俺は、壁を殴り声を荒げた。
「俺が就職してないからその分他の奴が就職出来ただろうが!!他の奴が成功したり金稼げたりしてるのは、全部俺が譲ってやったからだ!だから俺に還すのが当然なんだよ!!」
静かな廊下に、俺の荒い息だけが響く。
数分、経ったろうか。俺の息が落ち着いたころ、微動だにしていなかった親父が口を開いた。
「そうか、よく分かったよ」
親父は漸く理解できたらしい。声も震えず落ち着いている。
親父もボケては無いなと安堵した俺は、印鑑や身分証明書等を用意しておくよう伝えつつ階段を上って部屋に戻る。
「さて、寝るか」
明日からは書類作りに勤しまねばならない。ネットには先にやっている奴らが親切にもノウハウを紹介しているので、それを踏襲するだけだ。親戚連中に話して必要書類用意させるのはダルいので、お袋に任せよう。
さて、久々に忙しくなるかな――。そんなことを考えながら敷きっぱなしの布団で横になった俺は、30時間の徹夜の影響もあってすぐに眠りに落ちた。
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