第2話 敏明 ~さよなら人生~1
『Congratulations!』
流暢な発音で、祝いの言葉がヘッドホンから流れる。
同じ言葉が過剰な装飾で表示されたモニタを見ながら、俺は頬を緩ませた。
「ふう、これで何回目のクリアだ?」
リザルト画面には、今回達成した記録と累計での記録が表示されている。
アバター名 :シグルド
職業 :勇者としてクリア(累計8回)
獲得資産 :2,532,186ゼル(累計3,633,895,461ゼル)
キャラクター獲得率:累計99.83%
アイテム獲得率 :累計99.98%
装備獲得率 :累計99.95%
エリア開放率 :累計100.00%
職業獲得率 :累計99.88%
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プレイ時間 :168時間34分(累計69,836時間21分)
クリア回数 :累計666回
「はは、獣の数字ね…。しっかし獲得率が100にならねぇなぁ。何か見落としてんのか?」
各種達成率や累計クリア回数を確認した俺は、自虐的な笑みを浮かべながらマウスを操作してランキング画面へと移る。そこには俺のIDと他のプレイヤーのID、それぞれのクリア回数が順に表記してあった。
「んで、ランキングはどうなってるかな~?…ハイ!分かってましたけど俺の圧勝!二位で51回とか雑魚すぎっしょ……」
前回見たときと、変化はただ一つだけ。数字が1だけ増えた自分のクリア回数を確認し、芝居がかった台詞を吐きながら、俺はモニタの電源を落とした。
暗くなったモニタの中には、中年男の顔が映っている。俺を見つめる、よどんだ眼。ぼさぼさで脂ぎって、頭皮を透かす髪。締まりのない顔は、口周りをだらしなく覆う無精ひげと黒ずんだ角栓で装飾されている。
先ほどまで見ていたゲーム内の秀麗な容姿をしたアバター“シグルド”とはかけ離れた、自分本来の
「ひでぇ顔だなオイ」
暗い画面から俺を覘く男が、にちゃあ、と嫌らしい笑みを浮かべた。
(昔なんかで読んだな。笑いに品のない男は滅びる、だったか…)
久々に見る自分の顔は、見慣れたゲームキャラとのギャップもあってかなり老けて見えた。30時間ほどぶっ続けでゲームしていたせいもあるだろう。
ヘッドホンを外し軽く頭を左右に振ってみると、肩や首筋に突っ張る箇所がいくつも感じられた。長時間同じ姿勢で居たためだ。
「久しぶりに風呂入って、…寝るか」
俺は誰に語るでもなく独り、次の行動を口に出した。
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