ニート転生《てんしょう》
コトノハザマ
第1話 シグルド ~旅の終わり~
左手に感じる振動に刹那遅れ、鼓膜が破れるかと思うほどの爆音が響く。
舞い上がった粉塵は暫くの間視界を遮っていたが、重力には逆らえずやがて落ち着き、目の前が光に包まれた。
暫くの静寂ののち、状況を確認せんとした兵士らが物陰から姿をあらわす。
地に伏して身動き一つしない巨大な
「すげぇよ!あの魔竜をたった四人で討伐するなんて信じられねぇ!!」
「おおお、あの方こそ救世主じゃ…」
「はぁ…シグルド様、すてきです……」
限りない賞賛を浴びながら、俺は振りむいて死力を尽くし共に戦った仲間を見やる。
「やったな、アニキ!」
シーファ。
百射百中の弓の名手にして隠身と気配探知の術に長ける
「我が千年の宿願ここに果たされり。
マジカ。
あらゆる魔道を修めた千年の時を生きる魔女。千年前、魔竜に住んでいた村を滅ぼされ、その際に呪いを受ける。以来、童女の姿のまま死ぬことも出来ぬわが身の呪いを解くべく、魔道の研究に一生を費やしてきた。俺と出会い人としての愛を思い出し、死ぬためではなく共に生きるために仲間になる。
「シグルド様、妾は信じておりました…」
ホーリィ・ロイセ・グランベルド。
四肢欠損の再生はおろか死者蘇生の奇跡をも起こす聖女にして、この地を治めるグランベルド王国の王女。王国の危機たる魔竜の復活に際し、わが身を賭して討伐に立ち上がった。俺と共に数多の死線をくぐり抜けた、半身ともいえる存在。
かけがえのない仲間であり、心から愛する女たちへ俺は微笑みかける。
「皆、よく俺についてきてくれた。ありがとう」
その言葉を聞くや、三人は俺の懐へ飛び込んできた。皆、その秀麗な顔を歓喜の涙と押さえきれない感情でくしゃくしゃにして。
俺は三人の肩を抱き、三様の髪へ顔を埋めた。じわじわと、達成感が湧いてくる。
兵士らの喝采が徐々に小さくなり、代わって荘厳な音楽が俺たちを包み込んだ――。
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