―30― お肉食べ放題
ダンジョン攻略はなんの不自由もなく終わった。
「ダンジョンのボスをこんなにあっさり倒すとかすごすぎです!」
とか言われたけど、いやいや、実際ボスが弱かっただけだからね。
それから、姉のほうの詩音には自宅まで来てもらいアイテムボックスに放り込んだ大量のモンスターの肉を取り出してもらう。
「おぉ……! こんなにもあるのか」
目の前には山積みにされたモンスターの肉があった。これだけあれば一週間はもちそうだ。
「ふむ、我に感謝するんだな」
詩音がそう言って胸をはっていた。
これに関してはマジで感謝しかない。
さて、詩音が帰ったのを見届けると、さっそくこれらをいただかなくては。
今日のダンジョンでは、道中にフロストウルフ、ボスはキングフロストウルフが現れた。
フロストウルフは冷気をまとっていて、倒した後でも肉がひんやりしたままだった。
「まずは焼いてみるか」
とりあえずフライパンで肉を焼く。
焼肉のタレで味付けすれば、さらにうまいはずだ。
「ピヨピヨっ!!」
ふと、いつの間にか現れたピヨちゃんがフロストウルフの肉をおねだりしていた。
そういえば、ピヨちゃんにご飯を食べさせてなかったし、きっとお腹を空かせていたに違いない。
「今日はたくさんあるから、好きなだけ食べていいぞ」
「ピヨーッ!」
ピヨちゃんは嬉しそうに鳴くと渡した肉をあっという間に平らげてしまう。その上でさらにおねだりしてきた。
「よーしっ、次々焼いていくぞぉおおおお!!」
「ピヨォォオオオオッッ!!」
そんなわけでひたすら焼きまくった。焼いて焼いて焼いて、食べて食べて食べまくった。途中から焼くのが面倒になって生で食べていたが。
「ふぅ、流石にお腹いっぱいだな」
一時間後、オレは腹を抱えて寝転がっていた。ピヨちゃんもオレの横で寝転がっている。
数日ぶりにお腹がいっぱいになるまで食べることができたなー。
そういえば、これだけフロストウルフを食べたら新しいスキルを手に入れることができているんじゃないかな。
お、やっぱり手のひらから冷気を出すことができる。
『鑑定結果、スキル名〈冷気〉。ランクF』
相変わらずランクはFだ。
とはいえ、冷気と水生成の2つのスキルを組み合わせたら、氷の槍を自在に操ることができそうだし、意外と使い勝手が良さそうではある。
「やべっ、明日の分も食べちゃったな」
周囲を見てフロストウルフの肉が一切残っていないことに気がつく。
当初の予定では一週間はしのぐつもりだったが。
これは明日も彩雲堂姉妹に連絡して、ダンジョンに潜る必要がありそうだな。
◆
「ありがとうございます!! 瘴気を治していただいて!」
翌日、彩雲堂姉妹に連絡をいれると、また瘴気に冒されているという設定の三人の女の子を連れてきた。
まだ他にも組織の一員がいたのかよ。こんなに中二病がいるなんて、この国の将来が心配だ。
すばやく瘴気とやらを治して、全員でダンジョンに潜る。
正直、中二病につきあうのは面倒ではあるが、こうして連絡をいれたらいつでも人を集められると思えば、秘密結社ギルドギアのボスを務めるというのはメリットのほうが大きいのかもしれない。
しばらくは秘密結社ギルドギアのボスをやることにしよう。
「なぁ、カナタ。こんなことを言うのは忍びないのだが、魔石をいくつか回収してもよいか?」
いつも通り魔石を飲み込もうとして詩音に止められる。
「あぁ、いいけど、なんでだ?」
「組織の資金源にしたいのだ」
「ふーん、別にいいけど。あんまりお金にはならないんじゃないのか?」
Fランクモンスターから手に入れた魔石は換金しても大した額にはならない、と鑑定スキルが以前説明してくれたことを思い出す。
「ん? いや、そんなことないぞ。これ一つだけでも10万ぐらいで売ることができる」
「は?」
Fランクモンスターの魔石が10万だと!? もし、それが本当ならオレだって飲み込まないで売っていたぞ。
「おい、鑑定スキル。これはどういうことだ?」
周りの人に怪しまれないように、小声で尋ねる。
『ご主人さま、わたくしと厨二病の痛い少女の言葉、どちらを信じるのですか?』
考えるまでもなかった。
断然、鑑定スキルだ。
「よしっ、お前ら好きなだけ魔石を待ち帰っていいぞ!!」
「おぉー、我がボスは随分と太っ腹だぞ! 少しは組織のためを思ってくれているようだ!」
「流石です、カナタ様!!」
たとえ魔石一つ分の価値が低くても大量に集めればそれなりの額になるはずだ。
それに、オレのわがままでダンジョンについてきてもらっている以上、彼女たちになんらかの還元はすべきだろう。
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