―20― パーティーの募集
「近場にダンジョンってあるのかな?」
スマートフォンを取り出して調べてみる。
専用のアプリを使えば、近場に発生したダンジョンを検索することができる。
「お、ダンジョンっていくつかあるんだな」
検索するとアプリ上にいくつかのダンジョンが表示されていた。
これだけダンジョンがあるってことは、庭にダンジョンが発生するのってそこまで珍しいことじゃないのかも。
「えっと、重要なのはダンジョンのランクだよな。今のオレでいけるランクってFだよな」
がんばればEランクのダンジョンも行けるかもしれないけど、正直怖い。
えっと、ここをタップすればランクが表示されるのかな?
「あれ? なんか急にページが重たくなった」
なんでだ? さっきまでは問題なくページを見ることができたのに。
いくら待ってもページが表示されないんだけど。くそっ。今使っているスマートフォン古いからな。そろそろ買い時か。
『現地に行けば、ワタクシの鑑定で難易度がわかりますが』
ふと、脳内で鑑定スキルが提案をしてくれた。
「んー、でも行ってみてAランクのダンジョンとかだったら嫌だなー」
『ほとんどのダンジョンはFかEですので、その可能性は低いかと』
「そうなのか」
よしっ、じゃあまずはダンジョン行ってみるか。それから、鑑定してもらって入るかどうか決めよう。いやー、やっぱオレの鑑定スキルは頼りになるわ。
◆
「あ、君。パーティーの募集を見て来てくれたのかな」
「え? はい」
「いやー、助かるよ。人手が足りなくてさ。誰でもいいから探してたんだよ」
やべぇ。反射的に『はい』って返事しちゃったけど、パーティーの募集ってなんのことだ。
ダンジョンの穴の周りに探索者っぽい人たちがたくさんいるなーとか思っていたけど。
「オレは今回のリーダーを務めることになっている武田龍一。よろしく」
そう言った男は剣を腰に装備したガタイのよそさうなおっさんだった。
「オレは雨奏カナタといいます。よろしくお願いします」
自己紹介しつつ軽く会釈する。
「それで、ランクはいくつあるんだ?」
「Fランクです」
「ふーん、Fランクか」
一瞬だけ、武田さんが憐れみがこもった視線になったのを感じた。
気持ちはわかるよ。Fランクがなんで探索者なんてやってんだって言いたいんだろ。わかってるさ、オレだって自分がここにいるのが場違いだって。
「へー、ホントにFランクじゃん。あ、オレは山田浩二。悪いけど、あんたのこと鑑定させてもらったわ。にしても、Fランクで探索者やるやつっているんだな」
ふと、横から一人の男が割って入ってきた。
その男もオレと同じ鑑定スキルを持っているらしい。
うっ、すごくいたたまれない。早くこの場から逃げ出したい。別に彼らのパーティーに加わる必要はないし、断って一人で潜ろうかな。
「あんたの介護をするつもりはないから、それでもいいならついてきな。俺たちとしては数合わせ要員がほしかっただけだからな。なんせ、ダンジョンは最低でも6人のパーティーで入らないとダメだからよ」
え?
ダンジョンって一人で入っちゃダメなの?
あ、やべー。オレ、めちゃくちゃ一人でダンジョン潜ってたんだけど。
確かに、よく見ると、今ここにいる人数はオレ含めて6人いる。
「ち、ちなみに、ダンジョンって一人で入るとどうなるんですか?」
「バレたら罰則があるんだよ。最悪だと、探索者の資格を剥奪されるらしいぜ」
あー、やっべ。
冷や汗かいてきた。
よーしっ、オレが一人でダンジョン潜ってたことは墓場まで持っていこー。
「なぉ、鑑定スキル。このダンジョンの難易度を鑑定してくれ」
こっそり鑑定スキルに鑑定を依頼する。もし、ダンジョンの難易度がDランク以上だったら断って帰ろう。そうじゃないなら、彼らと一緒にダンジョンに潜る。
『鑑定結果、Fランクです』
よし、それなら彼らについていっても足手まといにはならなそうだな。
「一緒に行かせてください。その、モンスターを倒したことあるんで、足手まといにはならないはずです」
「そういうことだし、お前ら行くぞ」
リーダーの武田さんを筆頭にオレたちはダンジョンに潜っていった。
◆
「ねぇ、君緊張してる?」
ダンジョンにはいって直後、一人の男が話しかけてきた。
確か、山田浩二と名乗った男で、さっきオレのことを鑑定していた人だ。山田さんはヘラヘラと緊張感のない表情で話しかけきた。
「あ、はい、緊張してます」
「まぁ、でも君はなにも心配する必要ないからね。リーダーの武田さんはCランク探索者で、Cランクのモンスターをソロで倒せる実力持ちだぜ」
マジか……。
オレが倒したことあるモンスターで一番強いのはE++のハイオーガ。
Cランクなんて想像すらできない。
格が違いすぎる。
「まぁ、オレもCランクだけど。他のみんなはDランクだけど、経験はあるからね。あぁ、一人だけ君と同じような数合わせがいるけど」
そう言って、山田さんはチラリと前方にいる女の子を見る。
どうやら僕以外にも同じ数合わせにきた探索者がいたらしい。
「そういうわけだから、君はただいるだけでいいから。その代わり報酬はちょっとしかわたせないけど」
「わかりました」
オレとしてはダンジョンに潜れるだけでもありがたいことなので、報酬は少なくても仕方がない。まぁ、腹を満たせるだけのモンスターのお肉をもらいたいが。
「それと、君。さっきから気になっていたけど、随分と珍しそうな剣を持っているね」
ふと、山田さんがオレの腰にさしていた剣を指さしていた。この剣はハイオーガを倒して手に入れた報酬〈貧弱な剣〉だ。
散々使っていたナイフは刃こぼれして使い物にならなくなっていたので、せっかくだし代わりにこの剣を持ってきたのだ。
「いや、この剣は大したものじゃないですよ」
「ふーん、そうなんだ」
そううなずいた山田さんの瞳が一瞬だけ笑ってなかった気がする。まぁ、気のせいか。
「まぁ、そういうわけだから、よろしく頼むね」
そう言って、山田さんはオレの背中を叩いて、先頭へと向かった。
Fランクのオレのことを安心させようと気を使ってくれたんだろうな。山田さんいい人だなぁ。
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