第3話ネコさんと女の子

庭でひなたぼっこをしながら毛づくろいをしているネコさんにお客さんがきました。ネコ集会で一緒のミケさんです。


「相談したいことがあるニャ」

「どうしたニャ。真剣な顔をして」。


「集会場に集まるときにみんなが使っている塀を知っているかニャ?」

「知ってる、知ってる、あの塀の上は集会場に行く近道だし、まわりに水が入ったペットボトルが置いていないから快適な通り道だニャ」


「あの塀の上を歩いていると、子どもたちがたくさんいる家が見えるニャ」

「うん、うん。ランドセルで学校に行く子や、学生服を着ている子もいる家だニャ」

「どうやらあの家はお父さんやお母さんの居ない子が集まる家のようだニャ」

「ふむふむ」

「最近あの家に新しい女の子が暮らし始めているニャ」

「それは知らなかったニャ」

「でもね、その女の子は寂しいのかいじめられているのか・・よく庭のすみっこで泣いているのだニャ」


せっかく気持ちよくひなたぼっこをしていたのに、悲しい話を聞かされるのかとネコさんはがっかりしました。

「それで相談なのだけど、あの女の子が泣いているときに何かしてあげたいのニャ」

「なるほど・・」

ネコさんはミケさんが捨て猫だったことを思い出しました。でもそのことをネコさんは口にしませんでした。


「何かしてあげる・・といってもぼくたちネコにできることは少ないニャ」とネコさんはミケさんの目を見つめました。

「そこで何かいいアイデアが浮かばないか、相談しにきたニャ」

「ふーむ・・・。余ったお菓子か、ボクの家で月に一度でる大好物のサバ缶でもプレゼントするかニャ」

「良いアイデアだけど、あの女の子はサバ缶が好きかどうかわからないニャ。今考えたのだけど、あの女の子が泣いているときに涙をなめてあげるというのはどうかニャ」

「え!?人間の涙を飲むとお腹をこわすと聞いたことがあるニャ。それは危険だニャ」

「ほんとうに?」

「試したことはないけど。トラさんがそう言ってた。それにいきなり顔をなめたりしたらその女の子もびっくりするニャ」

「そうか・・ダメかニャー。」


2匹の会話はしばらく止まってしまいました。スズメの親子が元気に目の前を飛んでいきました。


ネコさんはひらめきました。「そうだ!これでどうだろう。その女の子が泣いていたら隣に座ってあげる」

ミケさんはしばらくネコさんを見つめていたあとに言いました。「それだけかニャ?」

「うん。この前、うちの太郎くんが風邪をひいた時に、お母さんが寝ている隣でずっと座っていたニャ。太郎くんはお母さんが居なくなると辛くて泣き出すのだけど、居てくれると泣き止んでた。どうやら人間は隣に誰かいると嬉しくなる生き物らしいニャ。だから女の子は絶対喜んでくれるよ」

「うーむ、ネコさんの言うことは当たっていることが多いしニャー」

「大丈夫!こういう時のカンは良く当たるんだ」

「よし!それならそうしよう」

ミケさんは目を輝かせて「また来るね!」と言って帰っていきました。


気がついたら夕方。温かい陽光のぽかぽかはなくなっていました。それでもネコさんは寒くはかんじていませんでした。今日も良い一日になりました。ニャー。

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