第13話体育祭3
『昼休みになりました。生徒の皆さんは各自昼食を摂ってください。午後の競技開始時間は13時からになります』
午前の競技を全て消化し、昼休みの時間になる。
俺はイケと一緒に昼食を摂ろうと移動していたところ声を掛けられた。
「攻一、ちょっといいか?」
朔夜だ。
何の用だろうか。俺はイケに先に行くよう告げて朔夜に向き合った。
「いきなりすまない。少し攻一に話したい事があってな」
「何だ?」
「攻一は午後の競技で騎馬戦に出るだろう?」
「ああ」
というかそれしか出ない。
「私と一つ、勝負をしないか?」
「勝負……?」
「ああ……先にハチマキを取られた方の負けだ。負けた方は相手の言う事を何でも一つ聞く」
「ふーん……まぁ興味がなくはないが、俺にとってメリットが少ないな」
正直、朔夜に聞いて欲しい事が思いつかない。
「攻一……私は生徒会長だ……」
ニヤリと笑う朔夜。
瞬間、体が反応する。
「……ほほう、と言うと?」
わざとらしく聞き返す。
「男性更衣室の鍵、体育祭で撮影した写真、そして映像の管理」
朔夜はただただ生徒会長の権利を喋っているだけだ。
だが俺は魂で理解した。
「いい勝負をしよう」
「ああ」
俺と朔夜は熱い握手を交わした。
※ ※ ※
『さぁ午後の競技も終盤になりました。次の競技は騎馬戦です』
アナウンスが流れ、俺は競技開始の準備を整えた。
待機列から対戦相手を見つめる。
『この騎馬戦は学年対抗になっています。各学年3人騎馬を10組作り、制限時間五分の内に多くの騎馬を失格にした方の勝利になります』
一呼吸置き、説明が続く。
『騎馬の失格の条件ですが、上に乗った人がハチマキを取られるか、もしくは片足でも地面に着いた時点で失格です。もちろん暴力行為もその時点で失格になります』
説明は以上、そのアナウンスを聞いて俺は立ち上がる。
「攻一ーめずらしくやる気満々じゃんー」
イケがのんびりと言う。
今回、一緒に騎馬を組む三人の内の一人だ。
「ああ、そうだな。確かに珍しい」
なんだかんだ楽しんでいるんだろうか?
だがまぁ俺は元々、体を動かすこと自体はそこまで嫌いじゃない。
何か目的があるなら尚更だ。
「イケ、よろしく頼む」
「まかせとけーい」
サムズアップしてイケがニッと笑う。
俺もニッと笑って入場口へ向かう。
『それでは騎馬戦、出場選手の入場です。初戦は二年生対三年生になります』
入場しながら俺はもう一人の仲間のハルに声をかけた。
「ハルもよろしくな」
「おう! 楽しんでこうぜ!」
ハルは柔道部で、がっしりとした筋肉が美しい大柄な男だ。
大胸筋に上腕二頭筋なんて特に最高。
皆にお見せ出来ないのが残念でしょうがない。
『さあ、三年生と二年生の各選手が出揃いました』
三年生の選手達と向かい合う。
選手達の中にはもちろん朔夜の姿もあった。
――そしてそこで一つ、おかしな事に気付く。
なんで朔夜の隣に鏡花とリリーがいるんだ?
『尚、三人全員が女子生徒で組まれている場合、学年を問わずに参加者を決めることができます。今回九条生徒会長がそのルールを採用していますね』
そんなんあり?
おそらくは学校行事としてのお祭り的にあったルールなんだろうが……。
朔夜のあの時の言葉を思い出す。
(負けた方は相手の言う事を何でも一つ聞く)
朔夜はいう事を聞く相手を、私とも一人とも指定しなかった。
ただ、相手と指定した。
つまり負けた場合、朔夜だけじゃなく鏡花とリリーの言う事も聞かなければならない。
……中々やってくれるなあの雌豚。
『それでは各選手は騎馬を組んでください』
イケを前に、ハルが後ろになってそこに乗って騎馬を作る。
「イケ、ハル、一つ頼みたい事があるんだけど」
俺は二人にぼそぼそとある事を話した。
「おけー」
「りょうかい!」
二人は快く頷いた。
『それでは騎馬戦、二年生対三年生……スタート!!』
アナウンスと同時に両軍が一斉に走り出した。
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