第12話体育祭2
『・・・えー姫野さんは大丈夫との事です、安心しました。皆さまは水分補給をこまめにお願いいたします。では続けて選手宣誓に移りたいと思います』
宣誓っておいまさか。
『選手宣誓は3年1組、生徒会長を務めます、九条朔夜さんが行います』
ドM雌豚生徒会長きた。
悪い予感しか当たらない。
『九条さんは生徒会の激務をこなしながらも柔道、空手、剣道、弓道などなど数多くの部活動で輝かしい結果を残されており、今体育祭でも期待されています』
それただ痛い目やきつい目に遭いたかっただけじゃ。
教頭が壇上に上がり、朔夜が壇上の前まで走ってくる。
マイクが用意され、朔夜は右手を上げて宣誓を行う。
『宣誓! 僕達、私達はスポーツマンシップに則り!』
うん。
『例え息が切れ、膝を地に付こうとも立ち上がり』
いきなり鬼か。
『対戦相手に罵倒されようとも感謝の念を忘れずに』
対戦相手殴れよ、もう。
『生命の続く限り戦い抜くことを、誓います!』
比喩表現とかじゃなさそうで怖い。
『生徒代表、3年1組、メs・・・九条朔夜』
おい今。
『九条さん、ありがとうございました。・・・最後に少し噛んでしまって照れている、会長の貴重な可愛い姿が見れましたね』
赤くなってるのは興奮してるだけだし、ただ雌豚って言い間違えそうになっただけだよ。
『それではこれにて開会式を終了いたします。退場し、時間になり次第競技を始めていきたいと思います』
※ ※ ※
『さぁお待たせいたしました。とうとう競技の始まりです。最初の競技は100M走です』
グラウンドのスタート地点に参加する生徒が集まっている。
皆(♂)、中々いい身体をしているじゃないか・・・。
クラスのテントから次々に出走していく選手達を眺める。
やはり運動部の生徒が有利なようで1着になるのは運動部が多かった。
『皆さん大変素晴らしい走りを見せておりま――おおーっと! ここで今体育祭でも一際注目を浴びている選手の登場だーー!!』
ん? 朔夜?
『噂の転校生の鷺ノ宮鏡花さんだー!』
んん鏡花? 転校生ってだけで注目されてるのか?
『鷺ノ宮さん・・・まさかの和服で体育祭に参加だぁー!』
狂気の沙汰だよ。
『手を振っているー! いやーサービス精神が最高ですね』
ライブ会場か。
『そして今――スタートしましたっ、とこれはー! なんと鷺ノ宮さん歩いているー! これは和服では走れなかったってことでしょうか』
せやろな。
鏡花は案の定、最下位だった。
しかし何故か皆、異様なほど盛り上がっていた。
どこから来るのその人気?
なんだかんだ美少女だからだろうか?
※ ※ ※
『次は借り物競争です。待機列にいる生徒の皆さんは誘導に従いスタート地点へ移動してください』
そう・・・次は借り物競争。
俺が参加している数少ない競技の一つだ。
なぜ俺がこの競技に参加したのか?
ふふ、それは借りてくる物をごまかし、イケの私物をさりげなく借りパクするためさ。
この知略・・・自分が怖いぜ全く。
『まずは一年生の出走です。選手の皆さんはスタートした後、地面に置いてるあるカードの物を借りてゴールしてください』
一年生が次々に出走するのを、二年生の待機列で眺める。
と、そこで出走した一人がこちらへ走り寄ってくるのが見えた。
リリーだ。
「攻一、ちょっと貸してほしい物があるんだけど!」
「嫌です」
「そんな!」
脊髄反射で断ってしまったが、さすがににべもなく断るのもどうかと思い一応話を聞くことにした。
「カードには何が書いてあったんだ?」
「あ、ちょっと恥ずかしいからあっちで話していい?」
恥ずかしい内容ってどんな内容だ?
好きな人とか?
疑問に思いつつ二人で移動する。
移動した先でリリーは恥ずかしそうに口を開いた。
「えっと、あのねカードの内容・・・攻一の着てる服全部なの」
「そんなことある?」
絶対嘘だろ。
もし本当ならこの高校自主退学するわ。
「いや待てよ・・・まさかお前、借り物競争にかこつけて俺の私物をパクろうとか考えてないよな?」
「そ、そんな事ないわ」
「本当か? いいか、もし俺の言う事が当たっているなら考え直すんだ」
「うう・・・」
「確かにパクった物を眺めたり、飾ったり、匂いを嗅いだり、枕元に置いたり、一緒に生活を送りたくなるだろう」
「やけに具体的ね」
「気のせいだ。今初めて考えた」
決して前日の内から考えたりしてない。
ふぅ、と俺は一呼吸置き少し冷静になると再び口を開いた。
「・・・まぁ、流石に決めつけるのは良くないな」
「攻一・・・」
「カードの内容を見せてくれ。もし衣類とかだったらもちろん協力する」
「全然関係ない内容だったら?」
「今後常に厚着」
「あじゃあいいです」
「おい! やっぱ関係ない内容だったんだろ! あ、逃げるな戻ってこい!」
追いかけてたら俺の借り物競争は不戦敗になってた。
リリーには逃げられた。
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