第11話体育祭1
雲一つない澄み渡る空。
校庭にはグラウンドを囲むようにテントが建てられその下には多くのパイプ椅子が並べられている。
生徒は皆、体操服に着替え校庭の隅にクラスごとに並んでいた。
雑談でざわつく中でスピーカーから放送が響く。
『それでは……これより第26回体育祭を始めたいと思います!』
周囲からパチパチとまばらに拍手が起こった。
『選手、入場!』
掛け声とともに生徒は綺麗に整列し順に行進を始める。
『さあ待ちに待った体育祭がとうとう始まりました! 小説的には唐突に始まりました』
メタいメタい。
『一体今は何月なのか……一切そのあたりの質問にはお答えいたしません! 作者にも一切わかっておりません!』
いや決めろ。
『さあ二年生の入場が始まっているところですが――あーっと! これはどういう事だー!』
なになに?
『一人だけほふく前進で入場しているー! カメラを構えているぞー!』
うん。
『手元の資料によると……佐藤攻一君だー! どういう事なんだー!』
俺だわ。
いや俺はただ生徒(♂)の太もも撮ってるだけだから。
『おーっと、各教師陣が登場ー! 羽交い絞めにして取り押さえたー! 入場から5分で退場だー!』
※後の新聞部による佐藤攻一インタビューより一部抜粋
『納得できませんね。俺はただ美しいものを後世に残そうとしただけですから』
※ ※ ※
『さあ、入場も終わりグラウンドに全校生徒が整列しました。申し遅れました私、今回体育祭の実況解説を担当いたします葉梨 好男(ルビはなしよしお)といいます。よろしくお願いします』
ちなみに俺は説教を食らい、教師陣テントの横。
位置的には生徒たちの正面になる。
『えーここで本来の体育祭なら校長のありがたいお話ですが』
うん。
『いらないんで無しになります』
いいの?
『では次に準備体操になります。全校生徒の皆さまは適度に前後左右間で距離を空けてください』
前後左右に生徒いないです。
『生徒を代表して体育委員の姫野リリーさんは壇上にお願いします』
ここで変態。
生徒の列の中からリリーが走って壇上までやってくる。
『姫野さんは有名ファッション雑誌のギャンギャンにて読者モデルをされており、その事から今回校長に鼻息荒く推され体操の代表になっています』
校長も変態。
校長の話無くなった原因これじゃない?
『ちなみに本日校長は諸事情により欠席されております』
そもそもおらんかった。
っていうかリリー読者モデルとかやってたん?
知らんかった。
『では準備も整ったようですので体操を始めていきたいと思います』
音楽が流れ始める。
手を上に伸ばしたり、体を前屈させる中で一つ異変に気付いた。
「はぁ……はぁ……」
リリーの息が荒い。
顔も紅潮している。
普通の奴なら体調が悪いのかと心配するところだが、俺は違う。
「はぁ……はぁ……ふへへ」
こいつ人に見られる場所に立って興奮してやがる。
とんだ変態だ。
皆さん俺は無関係ですよ本当です。
そこでリリーは足にまで来たのかよろけて座り込んでしまった。
『あ……っと大丈夫でしょうか……?』
養護教諭が駆け寄り連れ立って救護テントまで歩いていく。
生徒の中には心配そうな表情をちらほら見かけるが本人はいたって満足気だ。
いますぐ土下座してくれ。
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