第27話 水着プレイ
「そういえば、中野って私のことどう思っているの?」
夏休みの登校日。
ひさしぶりにふたりきりとなった部室で、涼城が問いかけてくる。
「私はほら、あんたに好きになってもらわないと吸血してもらえないわけでしょう?」
「そういえば、そんな設定だったな」
正直、メンヘラの自傷欲求に付き合うつもりが毛頭ない俺は、そんな約束の存在すら忘れかけていたわけだが。
涼城は、思いのほかいじらしい態度で服を脱ぎだす。
(……は?)
そう。突然服を脱ぎだしたのだ。
赤面しながら、羞恥と理性の間で思い悩んでいるのかやたら緩慢な動きで。
そうして、ぱさり、とスカートの落ちる音がして、目の前には白ビキニ姿の涼城が立っていた。
片腕をおさえ、もじもじと落ち着かなさそうに膝をこするようすが俺の欲望をくすぐる。
「ゆ、夢野先輩じゃあないけどさ……私の水着、どうだった?」
「いや……わざわざ感想を聞くために着て来たのか? 制服の下に水着を?」
プールのとき、聞けよ!!
だが、改めて見ると涼城は豊満な胸をたぷんとさせて、恥じらいながらこちらを伺っている。
プールでなく、部室で水着というありえないシチュエーションのせいなのか、やたらエロスを感じるのは俺だけだろうか。
今は手首にうっすらと巻いた包帯すらエロい。
「……可愛かった?」
「…………んんっ」
ドチャクソエロい、と正直に言ったら引かれるんだろうな……
「……可愛いよ。似合ってる。涼城は色が白いから白ビキニが映えるな」
口元を隠しながらそうとだけ告げると、涼城はぱぁ!と明るい笑みを浮かべた。
……まったく。いつもそういう顔をしてくれればいいのに。
もうメンヘラとかやめちまえよ。涼城は普通に美少女をやっていてくれ。
と、切に願ってしまう。
この時点で、俺の中の気持ちは三つ巴になっていた。
俺がはっきりと好意を抱いているのは部長だ。
だがそれは、この人をなんだか放っておけないという庇護欲のようなもの、まるで年上の妹を相手にしているようなあの感覚にあたたかさを感じているからで。
元来話す機会のない部長との時間を大切にしたい、また話したいと思ってしまうのを恋と勘違いしているだけなのかもしれない。
……勘違いで済ますには問題がある程度には、俺の中での部長の存在が大きいから、そう簡単に『庇護欲』で片づけられることでもないのが厄介なところだ。
そういう意味では、涼城も放っておけない部類ではある。
なにせリスカ常習のメンヘラなわけだし。
だが、部長と涼城に対する想いの大きな違いは、『涼城といると俺が俺でいられる』という点にあることにも気づいていた。
中二病を隠さなくていいのもそうだし、もはやなんでも話せる仲であることもそうだし。たまの中二病ムーブにもノッてくれるし。
それに、こうして目の前で水着一丁になられても互いにドン引きすることはない……
ここまで心を許し合える関係になれる女子は、今までいなかった。
互いが自然でいてもいい存在――
それが、生涯の中でどれほど恵まれた存在なのかは想像に易い。
おそらく、この先出会うこともそうないのだろう。
この縁は、宝だ。
そう思う程度には、俺は涼城に心を許していた。
そうして最後に、天音だ。
天音の存在は本当に不思議で、一緒にいると心が安らぐし、なぜか頬が緩んでしまうような……あれがいわゆる癒し系というやつなのだろうか。
俺は、天音と過ごす時間が好きだ。
だが、俺は天音と過ごすとき、つい中二病設定を忘れてしまう。
いや、正確には、天音のペースに乗せられて、『普通の男子』な俺になってしまうのだ。そんな俺の存在を天音が快く想ってくれていることもなんとなくわかる。
俺は、『普通でない俺』が好きなのに。
天音といると、つい『普通になってしまう』。
そうして、天音が隣にいるならば、それが嫌じゃない。
天音と涼城は、俺にとっていわば正反対の存在で。
普通な俺と中二病を楽しむ俺、どちらか片方しか存在することができないのだ。
そんなことを考えていると、水着姿の涼城が膝に跨って迫ってきて……
「……ねぇ。またしてよ。吸血プレイ」
「え……?」
「アレ、気持ちよかったから……」
どエロい表情で、そう懇願してきたのだ。
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※あとがき
今できているお話はここまでになります。
続きはでき次第更新予定。しばしお待ちいただけると幸いです。
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中二病を拗らせていたら、メンヘラと天使と甘ロリに捕まって青春ラブコメが始まっていた件 南川 佐久 @saku-higashinimori
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