第7話

 仁王はやがて、無事和国へ帰りました。

 最初は門番が驚き、急いで門を開け、次に民が驚きました。民の数人は驚きのあまり倒れ伏したそうです。それも、仁王の後ろには女王が白馬に乗って着いて来ていたのですから、驚かないモノは居なかったのだそうです。女王は威張ることもなく、通りで立ち尽くす龍人達一人ずつに会釈をしながら通し過ぎたと言われています。

 女王は領土を奪い取らず、話し合いの元この国を保護することを宣言しました。多少の戦はまだあるようですが、もうこれ以上の苦しみは無くなることに民は大喜びしました。

 こうして和国の城、王室で、龍王と女王との間で同盟が組まれたので御座います…。


 それから数か月後。


 仁王は名前を新たに、仁薬師、と改め、さらに医学書を読み漁る日々に耽っていました。違うのは、医学書片手にぼうっと窓の外を見ていることが増えたことです。女王に会える日だけ、なんだかとても機嫌が良かったのであります。


 そんなある日の事です。仁王は今日も城に赴きました。しかし門が開いても通ろうとしません。

 そして城の前でこう叫んだのです。

「女神!俺と結婚してくれー!!」

 前代未聞の告白でした。まず民衆が後ろであっけを取られ、横に居た門番は耳を塞いで悶えています。その時、女王は自室で読書中でしたが、その声の大きさに驚いて、椅子から転げ落ちてしまったと、笑って後にお話しされました。

 そして何事も無かったかのように、仁王は堂々と城へ入っていったそうでございます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る