第2話

ー「国民はもう限界でございます王!一旦此処は休戦の狼煙を上げるべきで」

ー「いいえこれはチャンスで御座います王、今此処で勝機を上げておけば一つ大国を潰せるのでございますぞ。」

ー「な、なりませぬ…人間族は世界最多の一族、どう考えても兵の数に劣りが見えます。今一度お考えを…。」

 家臣たちが目の前でわぁわぁと言い合っていました。仁王はそれを目を瞑り俯いていました。

「…いや。」

 口を開くと家臣は一気に静まり返りました。次は何を言い出すのかと、もう心臓が避けそうな龍人もいたほど、その空気は緊迫していました。

「宣戦布告は受ける。」

ー「なんと!!」

ー「では兵を集めましょう!出来る限り多く!」

 仁王は胡座をかいたまま、大きくそう宣言しました。その瞬間弾けたように家臣は準備に入ろうとしました。

「待て。その必要はない。」

「と、申しますと?」

「戦は、俺一人で行く。」

 仁王の言葉に、家臣は獲物に飛びつく腹をすかせた野生の肉食獣のように一斉に反論し始めました。

 そりゃそうです、仁王は兵を従わず、たった一人で迎え撃つと言ったに等しかったのですから。

 …記憶世界の戦争というのは、各国が領地を争うというものは変わらず、敗北した国はその領地の半分、領土主、王が打倒された場合は領土全てを勝利した国に差し出す、というものでした。国民が住むためにはそれだけの土地が要ります、それが多いと言う事は兵の数も多い、そう予測できるのも容易でした。

 敵国は、ここ最近勝機を連続であげ、次々と国を膨らませていく強さをもつと、様々なところで噂が立っていました。彼らの耳に届いていないはずがありません。その戦のあとは、誰一人国に帰ってこず、戦場は人間特有の狂気に満ちて恐ろしい所業だという噂です。だからこそ、その国を統べる王の名前も姿も、誰一人わからないのです。

 それに比べれば、和国はまだまだ小さく、ましてはまだ賊の素質は抜けきっておりませんから完全に纏ってすらいません。領土が今の半分ともなれば国民がこの戦で数多命を落としても入りきらないのは城の誰しもが判り切っておりました。

「何を言っている?俺は一人で勝ってくると言っているのだ。」

 家臣たちはもう頭をくらくらとさせて、高笑いする仁王の目の前で目を回しました。

「人間は数は多けれど鈍くさいと聞く、きっと王も同族に違いない。蹴散らし一気に王の首に噛みついてやればいいではないか!はっはっは!」

 大きな牙をむき出しにやけ、自信満々の声色でそう仰いましたが、誰も賛同する声をあげなかったので、仁王はちょっと気に障ったそうでございます。

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