第5話相応しくない階段

「先に行くねー。」


とだけを言い残し雷子がトントントン!

と、軽やかに階段を駆け上がった。

 しかし孝は右足を確実に踏み面に乗せて、麻痺の左足を蹴上げに爪先を擦り上げて

摩擦面が無くなると踏み面に乗せる。


 まどろっこしいが一段一段、確実に確認して上がり切っていた。


 医療の楼閣は見上げると、途轍も無く高い。

そこには理想論という擁壁がたちはだかる。


「お母さんを往診時に点滴を射てと本気でおっしゃる?八束さん・・・。」

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