7月25日(火):スタートダッシュ無計画

「えぇ!?何も決めてないんですか!?」

度肝を抜くアテム。無理もない。

合宿をするなどと宣言しておきながら、この男─メタは今夏の計画の一切を未だ見積もっていないのである。


「昨日は結局語るだけ語って終わりましたけど、そろそろ日程とか場所とか決めないとヤバいんじゃないですか!?」

「ええ。それは勿論そうなのですが…合宿といっても、僕自身そのようなものは人生経験に持ち合わせていないもので…」

お察しかも分からないが、メタはその礼節の丁寧さに反して意外にも勢いで解決する男である。


「ええっ、ならなんでこんなものやろうって言い始めたんですか…いやダメな訳じゃないですし、むしろ楽しそうとも思いますけど」

「……です」

「え?」

「友として、夏の思い出を作ることができればなと…そう思ったんです」

「たいちょお…!」

メタの発したそれは、微かながらもアテムの胸中を揺り動かした。

「であればますます早く決めないと!隊長空いてる日教えてください!」

「常に空いてます…」


赤く灯ったメタの表情には、安堵と期待の笑みがあった。



心躍らせ、アテムがスマホに指を走らせる。

「7月31日から8月2日、と…カレンダーに登録しておきました!」

「ありがとうございます。では場所ですね、どこに致しましょうか…?」

「んー、どっちかの家、とか?」

刹那に身構えるメタ。

「待ってください、なんで隊長が身構えるんですか!そういうの普通は女の子側がなるやつでしょ!?」

「アテムさんダメです!友人とはいえダメです!社会は黙ってくださりませんよ!」

「なんでですか!わたしと隊長の関係でしょ!?」

「ダメですダメですー!!」


この後、メタが翌日までに行先を自宅でリストアップしてくることを持ち出すと、隊は普段の活動に移るのであった。

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