第11話 救助隊
そうそう、早い時期に、避難所に来てくれたのは、警察やら消防の人たちでした。死体安置もあったからね。身元不明な遺体は、歯医者さんが判断していたのには、驚いたわ。内科のお医者さんなどが、そういう仕事はするもんだと思っていたから。
ところが、人間の歯というものは、顔が分からない状態になっても、ちゃんと残るらしい。そこで、カルテを持参して、歯の治療歴を見れば、この方は、どこの誰だとわかるというのね。歯医者さんて、とてもそんなことはしないような印象だったけど、見直しました。
でも、米軍まで来たのには、驚いたわ。
「ワタシタチ、トモダチ」
なんて言ってたけど。とにかく、米軍の兵隊さんの大きかったことと言ったら、信じられないくらいだった。
私は、青森にいたから、三沢基地からキャバレーに来てくれた兵隊さんはいたので、珍しくはなかったけど、その人たちよりも大きいという印象だったわ。どうも、海兵隊の兵隊さんらしい。
後で、赤門さんは、もしかすると、原発が、やばいのかなといっていたけど、本当にその通りでした。彼の言葉を、そのまま記すと、
「日本の太平洋沿岸の原子力発電所が爆発して、放射能がもれる事故が起こると、日本の安全保障に支障が出るから、念のため海兵隊の派遣という形で、隣の国が手を出さないように、米軍が駐留するんだ」
しかし、海兵隊の人は、私たちがとても持てないような、大きな荷物を軽々と肩にして、ニコニコしている。こんな人たちを相手に、昔、戦争をしたのかなと考えると、勝てるわけはないなと、変なところで納得したわ。来てくれた最後は、自衛隊だった。
地震と津波で、あらゆる施設が破壊されたので、「水がない」、「電気がこない」、「トイレがつかえない」、「燃料がない」、「道路が走れない」と無い無い尽くしだったけど、自衛隊には、何でもあるという印象でした。
まず、給水車、炊飯車があって、風呂も設置してくれたし、勿論、病院もあるし、当然だけど、自分たちの寝床と食料は、自分たちで用意する。ここが、ボランティアとの大きな違いね。
やあさんこと、安田明夫さんが、自衛隊のテントに行くと、突然、
「隊長」
と言って、敬礼する兵隊がいました。私は、あれっ、この人は元、自衛官って思いました。
後で話してくれたところによると、安田さんは、中尉まで務めたが、部下の問題の責任を取って、辞職して、それから日本中を放浪していたそうです。
それで、何でもできるのわけがわかりました。整理整頓は当たり前、料理から機械整備からできるのも当然というわけでした。
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