第7話 仕切る人
日がたつにつれて、避難所には、素性の知れない人が多く集まってきたわ。一体、どこから集まってくるのだろう。避難所の管理者が、
「どこから来て、何をしているんですか」
と尋ねると、大声を出して怒り出す。
「我々は、この大震災の被害に心を痛めて、はるばる東京からかけつけた者です。援助できるものは、いかほどもないが、すべて心のこもったものです。それをあなた方管理者は、我々を何か、商売でもするものとでも勘違いしているのではないですか。非常に失礼で、援助をしていただいた方々に無礼です。謝罪を要求します」
などと、香具師のように滔滔としゃべり出す。
管理者もほうほうの体で逃げ出して、後は、野となれ、山となれという具合。赤門さんに、言わせると、役人とやりあう時は、大声を出すのが、いいそうだ。大声で、怒っているという気持ちがわかるように、ゆっくりと話すと皆が、聞き耳を立てるようになる。
そうなるのを役人は、いやがるのだそうだ。しかし、赤門さんは、一体、何をしていた人なのか、得体がしれないところがある。
こういうふうに、何とかして、儲けようとする人間が集まると起こることと言えば、場所取りね。そして、そのもめ事を仲裁する人間が必ず出てくる。やあさんだ。やあさんと言っても、安田明夫さんでは、ありません。正真正銘のやくざです。
しかし、このやあさんという人種は、どこから、湧いてくるのかと思うほど、利に敏い。そして、大きな顔をして自分のものでもないものから、金銭をせしめようとする。
同業者から聞いた話では、やあさんも、口寄せに来るらしいけど。自分が殺害した相手を下ろして欲しいとは、言わなかったとか。
やあさんは、このやくざも人目おくような存在だった。やくざは、相手になる人間が、どの程度の力量かすぐ見分け、相手になる人間だけに暴力を働くとか、相手が自分より強いとか、死ぬことを恐れていないとわかると、相手にはしないそうです。やあさんが、恐れられたのは、単に腕力が勝っていただけではないようです。
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