服わぬ者

@Alpha-G

0話

「イノリ!何なの?あのバカでかい怪獣みたいなモンスターっ!」

「知らないわよっ!大きさもだけど、問題なのはっ!私達がっ!何をしても全く効果がないっ!って事よっ!」

「どーなってんの?このままじゃぁ街も人も…守れない…」

「でも私達が頑張らなきゃぁ」

「押し戻すわよっ!ミコトお願いっ!」


「ディア・アジールっ!」ミコトはステッキを振り上げ、モンスターと待ちの間に光の壁を作り出す。


今まで彼女等が見たことのない『敵』は巨大な角と喉元を青白く光らせる。


「口を開けたところに叩き込むわっ!」ソラはそう叫ぶと、モンスターの真正面でステッキを構える。

ステッキは金色に輝き、大きな翼生やした。

モンスターは頭を振り上げ、咆哮と共に大きく口を開けた。


「ディア・シュトルムっ!」


ステッキの先端から光り輝く竜巻がモンスター目掛けて放たれる。


モンスターは、まばゆい光弾を竜巻に向かって放った。



放たれた光弾は竜巻を消し去り、光の壁に遮られる事もなく、先の建造物や道路は数キロ先まで消し飛んだ様だ。


「皆!大丈夫!?」

「ソラちゃんっ!どこっ?ソラちゃんっ!」

「ミコトっ!どうしたのっ!」

「ソラちゃんがっ!ソラちゃんがっ!ソラちゃんがっ!」

「落ち着いてっ!ソラは大丈夫よっ!」

「いやぁっ!大丈夫な訳ないよっ!街だってこんなに…ビルも……ソラちゃんソラちゃんソラちゃんソラちゃんソラちゃんっ!」

「落ち着きなさいっ!」

「いやぁだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

「お願いだから落ち着いてってばっ!」

ミコトと呼ばれた少女は泣き崩れた。


「そうだよぉ…落ち着てねぇーお嬢ちゃん」


不意に声を掛けられ、驚きながら見上げると、初老の男性ニコニコしながら立っていた。


「お友達も、街に居た全員無事だから」


「え?」


次の瞬間、目の前に公園と、騒めいている人々が現れた。

いや、現れたとか表現のしようが無い状態だった。


「えっ?あれっ?えっ?」


「お嬢ちゃん達のお友達は…あっ あそこに居るね」


「えっ?えっ?えっ?」


「じゃあ、おじさんはお片付けしに行くからねー」


「えっ?あのっ!あのっ!」


「んーーー…お嬢ちゃん達の胡散臭い加護も切れたみたいだね。うんうん良かった良かった…じゃぁ元気でね~」


初老の男性はニコニコ笑いながらウィンクをした。


イノリは初老の男性に聞きたい事が有り過ぎて、言葉にならない状態だった。

何か言おう何か言おうと必死に思っている矢先に、ミコトの嗚咽が聞こえ思わず振り返った。


「私はここに居るから…ねっ」とミコトを抱きしめて宥めるソラを見つめ、振り返ってみると既に彼はいなかった。

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