第二話 謀反に参加した意味なし
「聞こえなかったか? そちは今なんと言った? さぁ申せ!」
ひぇぇ! 恐怖で膝が震えてきた!
目の前の人物は年下ではあるが、齢一五のときに自身の叔父を討ち果たした若武者。その強さから
下手なことを言えば即、斬首されるに違いない。某は膝を地につけて手で顔を覆い、
「おぉ……生きてて良かったです……ずっと
義平を泣き落としてみた。
「は……? そちと我はほぼ初対面であろう」
すると、義平は少しふらついていた。
「まずい」
と、義平が小さく呟いて体を横に傾けて――、
倒れた。
「!」
某はあわてて駆け寄る。
恐怖心故に目の前のことがみえておらんかったが、義平の頬は痩けており、武具を一切身に
「すまぬがあそこまで連れていってくれ」
義平は倒れたまま川の向こう側を指差す。
指の先には
さすがの某も見捨てることはできなかったので肩を貸して義平と共に石山寺へと向かうことにした。
各地の寺にいる僧侶は某のように戦で負けて寺に駆け込んだ者が多く、彼らは駆け込んだ先で命を救ってもらい自らも僧侶となるのだ。つまり、落武者の行き場としては
――山の斜面にある石山寺の本堂に近づくと黒色の法衣を着ている僧侶と出会い、快く本堂へと入れてくれた。
某と義平は本堂の正堂(仏像を安置する場所)と礼堂(礼拝のための場所)の間にある
「では、
そう言って黒衣の僧侶は踵を返して部屋から退出した。また、義平は
見るからに義平は弱っているように見える。
とりあえず、怖いので正座待機。
「そういえば、そちは乱を起こすときに突然、我の部隊に組み込まれていたがどこの武家の者だ?」
「武家の出身ではなく、農民の出の者です」
「は……?」
義平は顔を顰めながら上体を起こす。
「そんなわけあるか」
「いや、本当のことですよ。源氏の
「父上はそんなことは命じてない」
「へっ……⁉」
そんなはずはない。
では家人と名乗る人物は一体何者だったのだろうか?
義平は逡巡したあと、口を開いた。
「そういえば
「な、なんですとおおおおお‼」
某は思わず立ち上がってしまった。
奮起した意味もなく。戦った意味もなく。敗れた意味もなく。今、流浪しているということなる……………某は膝から崩れ落ちた。
「結局、そちは戦いに参加した。自業自得だ」
それはそうであるが! そんなこと言わなくてもいいわ! 義平ぁ!
「だって! 官位くれるって!
思いの丈をぶつけてしまった。
「
「っ!」
相手の言葉で心に突き刺さるような痛みを感じた。
言われてみればそうだ。
「くわえて宮仕えの女性が狙っているのは
「そ、そんな! 勝っても負けても意味ないということか! うわああああああああ!」
「やかましい!」
某が絶望しながら背中から倒れると義平は一喝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます