平治の乱が初陣だった落武者
ネイン
第一話 後悔するなんちゃって武士
「かぁー、騙された!
某は愚痴を吐きながら
あれは先月のことだ。源氏の棟梁である
某の実家は平安京にある。ただ、優雅な場所ではない。平安京を左右に隔てる大路の西側――
いわゆる農民の出なのだが末っ子の某を含む一〇人の兄弟は広大な畑を自衛するために刀や弓を武装する――いわゆる武装農民で農閑期には武士として動員されることもある。ちなみに一〇人兄弟の末っ子なので名は十郎と言う。
今回、某は立身出世を夢見て源氏の招集に応じた。実家にやってきた家人曰く、
「既に謀反は成功した! そなたも加わるがよい! 聞けば、兄上は武装農民から源氏の家人に成り上がったとか!」
謀反が成功したというのは、このとき既に義朝らは
「少し考えさせて下さい」
「何をいうか!」
やってきた男は身を乗り出す。
かなり圧を感じてしまうのだが……。
「今、我々に加われば官位も思いのまま!」
「⁉」
某は
「ぐふふっ、その上、宮廷には多くの女官がおる」
「な、なんですと!」
口元を綻ばせる男。嫌な笑みだが耳を傾けてしまう。
「今の身分では到底、
「行きます!」
某は即答。男の熱い演説に心打たれた。富、名声、地位……全てが手に入るのでは? と思った。
しかし、現実は甘くない。某が
某は馬に乗れるため、義朝の嫡男――ニ〇歳の
だが、やはり正気を疑った。義平は勇みながら敵に突撃する。相手を打ち破るまで。名高い義平だけあって怒涛の攻めを見せていた。ちなみに某は死にたくなかったので騎馬隊の後方に位置していた。
しかし、平家側三〇〇〇騎に対して
そのご、落武者となった某は平安京から離れて不本意ながら流浪していた。
「そもそも何故に
愚痴を言わずにはいられなかったが近くに流れている川のせせらぐ音で心がひんやりと癒される。
「川はこんなに綺麗なのに心はどんよりと曇っておるわ」
「誰の気が狂ってるか聞かせてもらおうか?」
「げぇ⁉ 義平公!」
落武者と化した義平がいた。
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