第5話 サルヴァンのギフト

「よし、じゃあ次は俺が恩恵ギフトをもらうからな」


3人がジャンケンをしてサルヴァンが勝ち、嬉しそうに右手を高く掲げる。僕としては1番危険の高いサルヴァンが貰うのが良いと思う。


「くぅ~、仕方がないな」

「うーん、まぁすぐにまたお金貯まるよきっと。これで恩恵ギフト持ちが2人になるんだから!」


アレサは残念そうにしながらも恨みっこ無しなので受け入れる。リーネは前向きだ。確かに恩恵ギフトはなんだかんだでハズレはないと言われている。一見して役に立ちそうも無いスキルが実はぶっ壊れでした、なんて例は結構あるらしいのだ。


「よし、じゃあ洗礼受けに行ってくる!」


サルヴァンがふんす、と鼻息を荒くして神殿へと入っていく。僕たちもその後を追った。

そして中に入り、再び神官にお願いして洗礼の間へと通され洗礼が始まった。

大司祭様が洗礼の泉の水をすくい、サルヴァンの頭に垂らす。しばらくして後、サルヴァンは意気揚々として僕たちの元に戻ってきた。


「ど、どうだったのよ?」

「ふふっ、聞いて驚け。俺の恩恵ギフトスキルはな、なんと硬質化だ。自分の意思で手に持っている物や自分自身をもの凄く硬くできるらしい。使い込むほど効果も上がるそうだ」

「凄いじゃん! 攻撃にも防御にも使えそう!」

「それはいいな。パーティの火力も上がるじゃないか」


サルヴァンが得意満面に貰った恩恵ギフトを口にすると、皆が期待通りのものだと目を輝かす。これも何か色々応用が効きそうだ。拡大解釈はスキルの名前に解釈を加えるものだから、硬質化で別の解釈を考えないとだね。


「よし、じゃあ早速狩りに行こう!」

「おーーっ!!」


サルヴァンの音頭に皆が一斉に手を掲げ、皆で森へと向かった。平原でも魔物は出ると言えば出るのだが、餌が少なく身を隠せないところにあまり魔物は行かないのだ。それに薬草もほぼ生えていない。


意気揚々と街の門を出てすぐ森へ向かう。森は街を出て歩いて10分程だ。入り口近辺ならたまにオークやゴブリンは出てくるが、オーガとなるとあまりいない。もしオーガが出たら僕たちでは到底太刀打ちできないから逃げるしかない。だから狩りをやるにしても奥へは行けないため、一匹も狩れず薬草を見つけて帰ることも少なくないのだ。


「さすがに奥へは行きたくないよな。なんかいるといいけど」

「遭遇する確率を強化ブーストしてみる?」

「そんなこともできるの?」


サルヴァンも当然リーダーとしては奥に行かせたくない。しかし何かに遭遇しないことには狩りにならないのも事実だ。だったら遭遇する確率を上げればいいのだ。


「やってみようよ。遭遇率を強化ブースト!」


皆の同意も待たず僕が強化ブーストを使用する。するとズシンズシンと大地を踏みしめる音が響いてきた。


「よし、なんか来た!」

「おい、ちょっと待て、このでかい足音は結構大きい魔物なんじゃないか?」


成功した、と僕がガッツポーズを取ると、アレサが焦ったように疑問を投げかける。確かにゴブリンやオークではこんな足音はしない。もしいるとしたらそれは…。


「オーガ、オーガよ! ど、どうする?」

「に、逃げる?」

「いや、戦おう。自分たちで呼び出したようなもんだ。責任はとらないと! 大丈夫だ。オレの硬質化で!」


幸いまだオーガに見つかったわけじゃない。本当なら逃げるべきだろう。検証するにしても使ったことの無い硬質化を試すには相手が格上過ぎやしないだろうか。それでもサルヴァンが決めた以上それには従う。それがリーダーを決めた際のルールなのだ。


「じゃあ、幸いまだオーガに見つかったわけじゃないし、リーネの氷弾アイスバレット強化ブーストして先制攻撃しよう」


そして僕が作戦を提示する。サポート中心で動く僕は作戦の立案や戦闘中の指揮を執るのが役割だ。リーダーのサルヴァンは常に前に出るから戦況の確認が難しく、リーネもアレサもアタッカーだし自分で状況を判断して動くには経験が足りない。経験が足りないのは僕も同じだが、戦い方などの戦術書を読んで勉強しているのは僕だけなのだ。


「その後はサルヴァンが前に出て動きを牽制、とにかく先ずはオーガの膝を破壊しよう。そうすればまともに動けなくなるはずだ。強化ブーストでアレサを強化して集中攻撃だ」

「よし、それでいこう」

「「了解」」



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