第6話 オーガへの奇襲

作戦を皆に伝えると、みんなも小さい声で了解する。そして僕たちは足音のする方へゆっくりと歩み寄る。もちろん皆に成長率を強化ブーストするのも忘れない。消費がえぐいのでしっかり回復ヒールで魔力回復も行う。

オーガが一体木々の間を抜けるように歩いていた。僕らの武器はリーネの攻撃魔法と僕の補助魔法と棍棒、アレサの剣とサルヴァンの棍棒だ。当然リーネの攻撃魔法が最大火力となる。


「よし、まだこちらには気づいていない。やろう」

「いくわよ、氷弾アイスバレット……」

強化ブースト……!」


リーネが氷弾アイスバレットで人の頭くらいの氷塊を作り出す。それに強化ブーストをかけ、サイズを強化。するとその大きさが3倍くらいになった。凄すぎんかこれ。


「これ、凄くない…? 頭でいいのよね? シュート!」


どでかい氷塊がオーガの後頭部目掛けて飛んでゆく。速度まで上昇しており、激しい音をたててオーガの後頭部に命中。氷塊は砕け、オーガも頭から血を流して前に倒れた。受け身も取れず地に倒れ伏したため土煙が立ち、派手な音がする。


「やった! アレサ、やつの足首を刺して!」

「任せろ!」

「俺はオーガの頭をぶっ叩く!」


チャンスとばかりに僕たちはオーガにトドメを刺しにいく。まずアレサがオーガの足首に剣を刺す。その剣は深々と食い込むがオーガは動かない。そしてサルヴァンが棍棒でオーガの頭を叩き始める。硬質化を使ったのだろう。サルヴァンが叩く度にオーガの頭から血が噴き出していた。


「や、やったか?」

「これだけ頭を破壊したんだ、生きていないさ」

「念の為トドメを刺しておこう」


アレサがオーガの首に剣を突き立てる。剣を抜くとおびただしい量の血が吹き出た。返り血でアレサの革鎧や着衣に血が付着する。


「お、俺たちオーガに勝ったんだよな?」

「そうだな、どう見ても私たちの勝ちだ! 勝った、オーガを倒したぞ!」

「うん、背後からの奇襲だけど勝ちは勝ちだ!」

「わ、私の魔法が決め手よね!?」


僕たちはオーガを倒してことに興奮し、テンションが爆上がりだった。オーガは初心者の壁と言われ、このオーガを倒せるならDランク入りも夢じゃあない。


「うん、リーネの魔法一発でほとんど死んでたからね。これは相当凄いことだよ!」


オーガをほぼ一撃で仕留められる魔法使いとなると、中級クラスの冒険者でないといないらしい。今までオークですら一撃といかなかったのにこれは凄い進歩だ。


「これはルウの強化ブーストのおかげよ。これだったら次の洗礼はアレサの方が良さそうだね。私はルウのおかげで火力上げられるもの」

「い、いいのか? ありがとうリーネ!」

「俺も賛成だ」

「僕も」


気をよしくしたリーネが洗礼の順番をアレサに譲る。確かにこれならその方がいいだろう。サルヴァンの次に危険が高いのはアレサだ。パーティ全体の底上げを考えるなら、やはりアレサが洗礼を受けるべきだろう。


「ところでこれ、どうやって運ぼう?」

「一応木の板はあるけど、乗らないよね?」


牽引用の木の板はオークのサイズに合わせてある。とてもオーガを運べるサイズではない。


防壁プロテクションに乗せよう!」

「できるの!?」

防壁プロテクションは張る向きは元々自由なんだ。後は拡大解釈で壁は動かせるものとすればいいんだよ」


本来防壁プロテクションの壁は動かせない。しかし空中に張るなら固定しているものは無いのだから、動かせてもいいよね、と拡大解釈すればいいのだ。


僕は早速 防壁プロテクションで少し地表から浮かせた位置に壁を横向きに広げる。そしてその壁にオーガを乗せた。もちろん重いので強化ブースト回復ヒールで魔力や体力を回復させつつ、時間をかけて乗せることに成功。

そしてもちろん効果時間も強化ブーストを忘れない。なんかもう強化ブースト回復ヒールで大抵のことはできるんじゃないだろうか?


そして僕たちは意気揚々と仕留めたオーガを持ち帰り、凱旋するのだった。周りが僕たちを見ている。底辺パーティと言われた僕たちがオーガを狩ったのだ。見る目も変わるだろう。


「おいおい、あいつらオーガを狩ったのか?」

「やるじゃねーか」

「なぁ、あれ宙に浮いてるけどどうやってるんだ?」


案の定周りが僕たちを見て驚いている。傍から見たらオーガが浮いているように見えるのでめっちゃ注目されてるし。聞かれても教えてやらんけどね。

解体場へ持っていくとおっちゃんもかなり驚いていた。


「ほぅ、オーガを狩るとはやるじゃねーか! だがオーガは取れる素材が牙や爪くらいでな。まぁ、魔石があるからオークよりは値がつく」


そう言うとおっちゃんは慣れた手つきでオーガの心臓近くから黒い結晶体を取り出した。


「なかなかのもんだな。これなら爪と牙を入れて金貨1枚でいいだろう。売るか?」

「売ります!」


もちろんとサルヴァンが答えると、おっちゃんは金貨1枚の木札をサルヴァンに渡した。1回で金貨1枚は僕たちの狩りの最高収入だ。その価格に色めき立ち、僕たちは両手を挙げて喜ぶのだった。

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