第4話 強化《ブースト》でやり返せ!
おっさんは指をパキパキ鳴らしながら僕たちを見下ろす。かなりでかい。普通なら僕たち4人がかりでも勝てないだろう。
「や、やめろよ!」
僕はリーネを庇うように立ち塞がる。男なら殴りやすいと思ったのか、おっさんは拳を振り上げた。
「
そしておっさんの鉄拳が僕の頬を殴りつけると、僕は派手に吹っ飛び、受け付けカウンターに叩きつけられた。くそ、凄く痛い!
「い、いでええええええっ!! てめぇ、何しやがった!?」
そして僕を殴ったおっさんも殴りつけた手を押さえて痛がっている。よし、これは実験成功か?
人を殴れば普通は自分もそれなりに痛い。だからそのダメージを強化するという実験をしたのだ。殴られたくないだけなら
「
僕は小声で
「おい貴様! 子供相手に大人気ないんじゃないか?」
おっさんの右腕を若い冒険者が掴む。その掴んだ冒険者は僕でも知ってるこのアプールの街の英雄、勇者ライミス様だ。
そのクールな所作と甘いマスク、そして若くしてSランクにたどり着いたというその実力。冒険者であれば誰もが憧れる男、ライミス様。当然僕たちにとっては雲の上の人だ。
「いや、それはこのガキが生意気言ったから…」
「だからって殴るのは良くないんじゃないか?」
「そうだそうだ! 大人気ない!」
「私もギルド職員として罰を与えないといけませんね」
口々に皆がおっさんを責め立てる。しかも普段は僕らのことを冷ややかに見ていた連中までもが味方していた。この
「大丈夫? ごめんね、すぐに止められなくて。あいつにはちゃんとペナルティ与えておくからね?」
アリシアさんが僕を気づかい、頭を撫で抱きしめてくれた。こ、これは心地いい…。子供扱いされてるだけなのはわかるけど、それでも僕はこの幸せを噛み締めたい!
あ、リーネの視線が冷たい……。庇ったのになんでじゃ。
「さぁ、この子達に謝るんだ!」
「くっ! わ、悪かった、やりすぎた。済まなかったな坊主」
勇者様に無理やり頭を下げさせられおっさんは謝罪する。
「で、でもよぉ、俺だって右手のこれ、ヒビ入ってるぜ。むちゃくちゃいてぇよ」
おっさんは相当痛いのか、苦痛に顔を歪めながら右手を押さえている。骨折は冒険者にとっては致命的だ。低級の
僕も自分の腫れ上がった頬を
「
すると、本当に歯がくっついた。拡大解釈様々だ。骨を治せるならお金取れないかな?
確か利き手の骨折だと金貨4枚だっけ。なら金貨2枚ならいけるかもしれない。
「ねぇ、おっさん。その骨折もしかしたら治せるかもしれないよ? もし治せたら金貨2枚払ってくれる?」
「あん? おめぇ治せるのか? 相場より安いなら払ってやってもいいぜ、いてててて……」
よーし、ここにいる勇者様が証人だ。払ってもらいましょうか。骨を直接
「
青白い光がおっさんの右手を包む。するとおっさんの表情が和らぎ始めた。そして驚きへと変わる。
「すげぇな坊主! 治ったぜ! ありがとうな!」
「約束の金貨2枚」
「ちっ、まぁしゃーねーな」
おっさんは勇者様を見ながら皮袋を出すと、そこから金貨を2枚僕に渡してくれた。臨時収入げーーーっと!
「凄いな、君。低級の
「おいおい、底辺パーティなのにヒーラーは有能なのか?」
「確かレベル3だよな?」
勇者様が驚き、周りも不思議がっている。これ、まさか追求されたりしないよね?
一応冒険者同士で能力を直接聞き出すのはご法度なんだから無いと思いたい。とにかく今は離れた方が良さそうだ。
「あの、勇者様ありがとうございました。そ、それじゃ! 行こうみんな!」
「お、おう!」
僕は急いで頭を下げると、サルヴァン達を促して早足でギルドから駆けて出ていくのだった。途中誰かが呼び止めていた気がしたけどシラネ。
しかしこの拡大解釈、やはり相当使える。あんなものにまで作用するなら使い道はいくらでもありそうだ。
僕達は金貨2枚の臨時収入に顔を綻ばせながら再びアルテアの神殿を目指すのだった。これでまた誰かが洗礼を受けて恩恵ギフトを授かることができるじゃないか!
そして、そのスキルも拡大解釈で…。
うん、楽しくなりそうだ!
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