第19話:砂糖作りと薬草作り。

 お父さんの話を聞いてとても心配になった。

 何時王侯貴族が僕を連れに来るのか不安だった。


 1番危ないのは次に行商人が来る時だと言われていたので、その日が来ないようにジョイ神様とイワナガヒメ神様に毎日祈った。


 神様に頼るだけではいけないので、自分でも頑張った。

 村の価値をあげるために、王侯貴族の農園に連れていかれないように、村でしか作れない砂糖の野菜と回復薬の薬草を作ってみた。


 ジョイ神様の神与スキルを、木属性魔術はとても凄かった。

 限られた土地でしか育たないと聞いていた砂糖の野菜がすくすくと生長した。

 砂糖の野菜は砂糖大根と呼ぶそうだ。


 砂糖大根を絞った汁を煮詰めて茶色い砂糖を作る事ができた。

 だが3kgの砂糖大根から100gの砂糖しか作れなかった。

 それに、物凄く沢山の薪が必要だった、これでも得なのか?


 僕ならこんな砂糖よりもドライフルーツの方が好きだ。

 みずみずしくて美味しい果物の方が大好きだ。


 でも、アイテムボックスのない行商人では、生の果物は商品にならないのだと教えられたから、しかたがないのだろう。


 それと、砂糖大根の良い所は、砂糖が作れるだけではなかった。

 汁を絞った後の粕を、家畜がとても美味しそうに食べたのだ。


 絞り粕には砂糖が残っているはずだから、カロリーが高いと思う。

 家畜を育てるにはちょうど良い餌になると分かった。


 回復薬の材料になる薬草の促成栽培にも成功した。

 伝説級の回復薬の材料になる薬草は、エリクサー薬草と呼ばれているそうだ。


 最初はどうやって良いか分からなかったが、ジョイ神様に願うと自然と呪文が思い浮かんできた、ありがとうジョイ神様。


「フォースィング・カルチヴェイション・オブ・エリクサー」


 行商隊代表が言っていた場所を思い浮かべて呪文を唱えた。

 万年雪が積もり、アイスドラゴンが守る大山脈の高地だ。

 とても寒くて、雪まじりの激しい風が吹き荒れている場所を思い浮かべた。


 僕は砂糖大根とエリクサー薬草だけを交互に育てようとしたが、お父さんだけでなくフィンリー神官にも止められた。


 砂糖大根は2日に1度で良いけれど、エリクサー薬草は2度だけで良いと言われてしまった。


 他の日は、これまで通り薬草と果樹に魔術を使いなさいと言われた。

 どうしてなのと聞くと、簡単に作り過ぎない方が価値が出ると言われた。

 だったら作るだけ作っておいて、売らずにどこかに隠しておけばいい。


「お父さん、砂糖は茶色いの?」


「そうだぞ、砂糖というのは茶色い物だぞ」


「白い砂糖はないの?」


「白い砂糖、聞いた事もないな」


 おかしい、前世の僕が知っている砂糖は白かった。

 それに、こんなに嫌な味は混じっていない。

 何か白くする方法があるはずだが、僕には分からない。


 こんな事ならもっと勉強しておけばよかった。

 動画やアニメ、マンガやラノベだけでなく、役に立つ事も観て読んでいたら、砂糖を白くする方法を知っていたかもしれない。


「王様や貴族様なら白い砂糖を知っているかな?」


「いや、お父さんは王侯貴族にも知り合いがいた。

 晩餐会やお茶会に招かれた事もあるが、そこでも砂糖は茶色かった」


 そうか、この世界の砂糖は茶色いんだ。

 日本のやり方が分かったら、この世界の砂糖も白くできるのか?

 僕の木属性魔術で白い砂糖が作れないか?


 僕はジョイ神様に砂糖の作り方を教えて欲しいと心の中でお願いした。

 でも、ジョイ神様は何も答えてくれません。

 白い砂糖を作る魔術と思ったが、呪文は思い浮かばなかった。


「どうした、ジョイ神様が砂糖は白くなるとお告げされたのか?」


「違うよ、お告げがあったんじゃないよ、何となくそう思っただけだよ」


「そうか、だったらいい。

 大きな都市に行くと、砂糖5gを銀1gで売っている。

 そうだな、銀貨1枚で砂糖15g買える思えばいい」


「お父さん、僕にはよく分からないよ」


「そうか、そうだったな、村ではお金なんて使わないからな。

 だが、もし村から逃げるならお金の価値は覚えておいた方が良い。

 次に行商隊が来る時は、安い物でいいからお金で売り買いしてみろ」


「うん、分かったよ」


 前世でも買い物をした事がない。

 ずっと病院のベッドだったから、初めて買い物する事になる。

 なんか今からとても楽しみだ!


「あ、でも、お金はどうするの?」


「これまでは売った分を全部武器や農具にしていたが、もうどうしても欲しい物がなくなったから、お金でもらう。

 それを使って買い物の練習をすればいい」


「僕が頼んだみずみずしい野菜や甘い野菜の種が高かったらどうしよう?」


「その時には欲しかったのとは違うと言って断ればいい」


「それは悪いよ」


「その辺はお父さんが上手くやってやる。

 それに、こちらにはエリクサー薬草と砂糖がある。

 ケーンが頼んだ野菜の種がどれほど珍しくても、足元にも及ばない。

 次の行商隊は金貨の山を置いていくぞ」


 お父さんがうれしそうに話すが、よく分からなかった。

 砂糖とエリクサー薬草が高いと言うのは分かったが、金貨の山に実感がなかった。


「ふ~ん、それは良かったね」

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