第13話:夢への道
前世では毎日死の恐怖に怯えていました。
健康な身体に転生させてもらえたから、自由に駆け回って生きて行きたい。
でも、この世界がとても危険なのは、お父さんから教わっています。
イワナガヒメ神のお陰で転生できたのに、夢を叶えられないうちに死んでしまうのは絶対嫌です。
旅に出る前に強くならないといけません。
旅に出てからも死にたくないですから、完璧に準備しておきたいです。
馬から落ちて死ぬ人もいると教わっていますから、乗り方を教わりたいのですが、何故馬の乗り方を覚えたいのかと聞かれたらどう返事しようか……
悩みましたが、僕を愛してくれるお父さんとお母さんに嘘はつけません。
素直に本当の事を言おうと思っていたのですが……
「そうか、そうか、ケーンは乗馬を覚えたいのか、やっぱりお父さんの子供だな」
「何を言っているのよ、馬が好きなのは私も同じよ」
「分かっているさ、だからケーンに教えるのは交代でやる、それで良いな?」
「ええ、良いわよ、私の方が絶対に教えるのが上手いから」
「はっはははは、教えるのが上手いか下手かなんて競うような事じゃない」
「ごめんなさい、その通りね、ケーンにケガをさせないようにするのが1番ね」
僕のせいで夫婦喧嘩が起こるかと心配しましたが、じゃれあっていただけのようで、直ぐに仲良くなっていました。
それからお父さんとお母さんが毎日乗馬を教えてくれました。
最初は、馬の背がこんなに高いのかと怖くなりました。
でも、お父さんとお母さんだけでなく、馬も優しく教えてくれました。
直ぐに上手になったと言いたいですが、そんな事は無理です。
僕は馬に乗っているのではなく、馬に乗せてもらっているのです。
僕が徐々に乗馬を覚えているので、お父さんとお母さんはフィンリー神官と相談して、馬を増やす事にしたそうです。
家は村の中では飛び抜けて裕福になりました。
村の共有財産と同じだけの富があるのですから当然です。
その富の一部を使って馬を買う事にしたのです。
馬を買うと言っても、行商人から買う訳ではありません。
お父さんやお母さんと同じように、村を猛獣や魔獣から守る役割の家には、家と同じように馬が飼われています。
そんな家の馬にも子供を作らせるのです。
お父さんお母さんは、家の馬にも子供を作らせると言っていますが、必ず子供が生まれるとは限らないとも言っているのです。
村で戦いを担当しているのは、お父さんとお母さんを入れて6人です。
全員が1頭ずつ馬を持っていますので、3組のペアができます。
騎士なら1人で2頭ずつの馬を持っているそうですが、この村では1頭ずつです。
自由民は1人1頭しか馬を持ってはいけないのかと聞くと、そうではなく、村では山羊や羊の餌が優先なのだそうです。
ですが、僕が果樹を実らせ薬草を生長させるようになったので、家畜の餌に余裕が出て、馬の数を増やす事にしたそうです。
昔は、穀物で作ったエールと大麦パンやライ麦パンでお腹を一杯にしていました。
今は、フルーツワインと大麦パンでお腹を一杯にしています。
小麦は行商人に売りますが、ライ麦を馬の餌にできるようになっています。
いえ、余った穀物は非常用に備蓄しています。
馬を含めた家畜の餌は、穀物の藁をあげています。
お父さんたちが里山に連れて行って好きに食べさせることもあります。
それと、僕が足らなくなった家畜の餌、藁を作る事があります。
当然ですが、ちゃんと小麦や大麦も実らせます。
実った小麦や大麦は村の備蓄にしています。
それと、僕がこっそりとリンゴや柿を食べさせてあげる事もあります。
馬たちが僕を可愛がってくれるのは、その所為かもしれません。
それと、村の人たちには内緒で、沢山の大豆を生長させて、家畜たちにあげる事もあります。
僕は大豆が好きなので、自分の分をこっそり成長させるのですが、馬たちも大好きなので、おすそ分けしてあげたのです。
それと、行商隊から質の良い鉄器を買えたお陰で農地が広がりました。
質の良い斧が手に入ったので、里山の木を伐採して畑を広げたのです。
ただ、里山にあった果樹は村の近くに植え替えました。
これまで里山だった所が畑になりましたが、まだ切り株が残っているので、普通の畑ほどは収穫できないとお父さんが言っていました。
それでも、家畜のための牧草や野菜は植えられると言っていました。
これまで内山と呼んでいたところに手を加えて、里山にすると言っていました。
ただ、これまで奥山と呼んでいたところを内山にするのが危険なのだそうです。
下手に人間が入ると、フェロウシャス・ボアのような、人を襲う魔獣が村にやってきてしまうそうです。
だから、お父さんたち戦いを担当する村人が、里山と内山を周ります。
僕が小麦と成長させるので、6人が畑仕事をしなくても大丈夫だそうです。
食べ物を作れるようになるのは、とても大切だと思いました。
「フェロウシャス・ボアだ、フェロウシャス・ボアがでたぞ!」
里山の方からお父さんの声がかすかに聞こえてきます。
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン!
恐ろしい魔獣が現れた事を村人に知らせるための太鼓が叩かれます。
僕は吐き気をこらえてお父さんたちが逃げてくる方に走ります。
こうなったら、自分の手で命を奪うのが嫌だ何て言っていられません。
僕がやらないと、お父さんたちがフェロウシャス・ボアに殺されてしまうのです。
僕は身体中に流れる魔力の量を増やしました。
特に目に流して、遠くまでも見えるようにしました。
少しでも早く、遠くにいるうちに殺さないといけません……
4頭、何で4頭もいるのですか?!
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