解説資料-11

 帝都編終了です。

 もう少し帝都の事書こうかとも考えましたが、ストーリー的にはあんま居座ると中だるみしますし、ここはスピーディーに(この長さで何を言ってるのやら)

 というわけでラクティが懸念した様に、ホントに大陸の一番西まで行くことになりました。そして同行者も増加。

 ちなみに予告しますと、ファリウス聖教国編が終わりましたら、第一部は終了予定です。まあすぐに第二部とかの予定ですが。

 まあ、そこまでにあと……六十話くらいはありそうですが(マテ)


 さて、では解説資料。今回も新キャラ多数ですね。


【登場人物】


〇コウ(神坂かみさかこう) 十九歳・男性

 現技量ランク:近接-銅、遠距離-黒、法術-銅、探索-赤

 帝都に来ていきなり強烈な存在に次々と会うことになったが、考えてみたらすごい人脈を作れたともいう。

 また、この帝都で新たに魔技マナレットという力を手に入れた一方、法術クリフの使いこなしにはかなり難があることを自覚した。

 今までは大火力で押しきれてたからね。

 エルフィナとの距離感は相変わらずだが、手を繋ぐくらいは普通に。

 実際、付き合い始めてまだ四カ月の初々しいカップルだし、恋愛メンタル高校生以下なのでこんなもんです(笑)

 プラウディス帝が橘老みたいだと思ってて、何気に好感度高め。

 また会いに来たいと思っている。

 今回で近接、法術が銅、遠距離が黒となってしまい、現役では大陸最高クラスの冒険者になってしまっている。


〇エルフィナ 百五十五歳・女性

 現技量ランク:近接-青、遠距離-赤、法術-灰、探索-紫

 コウと同じく、今回の戦いで精霊行使エルムルトの使い方が未熟だと痛感した。ちなみに、精霊珠メルムグリアによるブラフはエルフィナ自身のアイデア。実のところ、常時召喚状態の方がコンマ数秒程度だが、逐一呼び出すより速いらしい。

 ただ、それだとバレるからとやったが、今回思った以上にそれが効果的に働いた。

 今後同行者が増えるので、精霊行使エルムルトの力の修練には少し不便だが、そもそも法術と違い教本や教師等いないので、どうしたものかと悩んでいる。

 ちなみに今回は披露しなかったが、魔技マナレットも練習中。

 コウとの距離感は本人も手探りだが、付き合ってまだ四カ月。森妖精エルフである彼女の感覚では、文字通り付き合い始めたばかりなので、今の距離感で結構満足している。

 今後同行者が増えることでいちゃつきづらくなる……という懸念すらないらしい。

 今回で遠距離の技量ランクが法術なしで赤という破格の評価に。加えて探索も紫に。

 なお、作中あまり書かれなかったが、帝都グルメは全力で満喫していた(笑)


〇プラウディス・レイル・グラスベルク 六十七歳・男性

 グラスベルク帝国の第九十六代皇帝。

 即位前は継承順位十九位だったが、元軍属であることから帝国軍の協力を取り付け、上位の継承権者を次々と屈服または恭順させていった。

 そして最後に第一皇位継承権者である当時の皇帝デュラザインの第一皇子マリウスを、向こうが出した条件である継承権者同士の一騎打ちで見事に打ち破り、皇帝に即位した。

 皇帝となった彼は、皇位継承の混乱に付け入ろうとした周辺各国を撃破、そのまま帝国の版図とする。

 その後インフラを整備し、さらに法術具の開発を推し進め、さらに教育機関を整備した。

 在位四十年を超えるが、歴代でも最高の名君とも呼ばれている。

 ただ、その一方でほいほい市井に出てはあちこち見てまわるということをやるらしい。周りは大変そうである。

 なお、帝位継承争いが起きる前は冒険者でもあり、現帝都冒険者ギルド長であるグリンラッドとは旧知である。

 先述した教育機関から出た者を積極的に官吏に登用し、国政の効率的な運用を推し進めている。

 一方で伝統ある貴族はその地位に見合う立場を与えられていないと思われており、貴族で彼を嫌う者は少なくはないが、あまりにも勢力が違うため、宮中でのはかりごとすらできない。

 結果、亡命する貴族も少なくない。そういうのがキールゲンの周囲にたむろしてるわけですが。

 言うまでもなく帝国民の支持率は極めて高い。

 目下の悩みは、自分の支持率が高過ぎて、後継者が目立たないこと。

 ちなみにちゃんと皇太子もいる。

 ただ、プラウディスが目立ちすぎるだけで、無能ということはない。

 影も形も出てこなかったけど、皇太子は第二皇子の子である孫のユリウス。

 まだ十五歳の少年だが、資質は高いとされ、将来有望株。

 プラウディスは妃は一人しかおらず、子供は皇子が二人、皇女が一人いたが、上の皇子は成人する前に貴族との争いで謀殺され(なお下手人は一族全て処刑された)、皇女はヤーラン王家に嫁いでいる。

 もう一人の皇子であるカイカードは軍務を好み、現在の軍務卿パジェイラは彼であるが、そのまま軍事のみ統括したいというある種の脳筋。早々に継承権を息子に移譲してしまっている。実際本人の性格的にもあってるので、プラウディスも諦めている。


〇カイカード・エル・グラスベルク 四十歳・男性

 プラウディスの第二皇子。現在の軍務卿パジェイラで、一応元皇太子。

 本人は父親の背を見て育ったが、父親のようにはなれないと思い、早々に軍事面で力を尽くするようになった。こちらの方面に限れば、プラウディスよりも優れている。

 子供は四人いて、第一皇女サリア、第二皇子ユリウス、第三皇子バステリオ、第四皇女フィルナーテ。

 このうち、ユリウスが皇太子になっている。


〇ユリウス・エル・グラスベルク 十五歳・男性

 次期グラスベルク帝国皇帝たる皇太子。

 柔和な容貌ながら、祖父を尊敬し、またその跡を継ぐことを幼いころから目指してきていた存在で、『竜子ヴェイオン』(麒麟児とほぼ同義)とも呼ばれる才能の持ち主。

 立太子されたのは一年前で、まだ年若く、色々頑張っている最中。

 今回は出番なし。


〇グリンラッド・ハーヴェル 八十歳・男性

 帝都冒険者ギルドの長。

 かつては『剛刃』の二つ名を持ち、ここ五十年で唯一の、近接戦闘ランクが金の人物。三十年ほど前に引退しているが、いまだにとても元気で、短時間であればコウも敵わない。ほとんど伝説上の人物に近い。

 かつて、現皇帝が十代の頃に冒険者だった時は、彼を指導したこともある。金勘定がおおざっぱで有り金失いそうになったのを助けられたこともあるらしいが。

 また、法術ギルド長でもあるシュタイフェンとも知り合いというか、かつては一緒に冒険者をしていたこともある。

 現在でも帝都冒険者ギルドでは最強ではないかとすら云われている。


〇シュタイフェン・フィンラート 七十一歳・男性

 帝国最高の法術師クリルファであり、《法聖》アルバトス・ウェンリーの一番弟子。アルガンド王国のアクレットの兄弟子にあたる。法術ランクは金。

 [闇][火][地]の三つの第一基幹文字プライマリルーンの適性を持つ。作中明かさなかったが、天与法印セルディックルナールも持っている。

 ただ、本人の興味は新しい法術の開発に注がれていて、古い歴史などはほとんど興味を持たない。コウの持つ異様とも思える資質には興味は持つが、さすがにそれで強引に拘束するまではしてこなかった。実のところは、したところで抵抗されたら対抗手段がないのをすぐに見破ったからである。

 コウたちからもたらされた情報により、エルスベル崩壊時のことが少しわかったことで、実は過去にもやっと興味を持ち始めたらしい。


〇ユーヴェント・ヴィ・エンブレス 四十二歳・男性

 帝国の宰相フータールにして法術ギルド長であるシュタイフェンの補佐をする男。際立って優秀なことで知られ、帝国の全てを把握してるとすらされる。

 この年齢で帝国の宰相というだけでその優秀さはお察しではある。なお、普段は爵位を表す『ヴィ』を付けずに名乗ることの方が多い。

 実は元は平民で、プラウディスの作った教育機関で頭角を現してこの地位まで上り詰めた。子爵位は宰相になる際に授与された物。

 プラウディスに信頼されていて、行政の多くを取り仕切っているのにもかかわらず、彼がいるのは宰相府ではなく、たいていは法術ギルド。

 名乗るとき、帝国宰相と名乗らずにシュタイフェンの補佐だと名乗ることの方が多い。いいのかそれで(笑)

 それからもわかるようにシュタイフェンを心の底から尊敬している。無論プラウディスを軽んじているわけではなく、むしろ心の底からの忠誠を誓っている。

 帝国の歴史、特に帝室であるグラスベルク家の歴史に詳しい。

 皇太子ユリウスの教育係でもある。


〇ファイゼル 四十一歳・男性

 帝都近郊、ルレ村にいる神官。

 非常に珍しい奇跡ミルチェを使える人物でもある。

 本来このような辺境にいることはまずないレベルの人材だが、実は戦士としても優秀。魔獣ヴィグニアを単独で何とか出来ないかと考えていた。

 奇跡ミルチェの使い手は基本的に重宝され、大抵は都市部の神殿にいることが多いのだが、彼はあえて希望してルレ村にいる。ここが故郷であり、さらに思い出の地でもあるらしい。

 ただ、その都合上、結構周辺地域への出張は多い模様。帝都にもよく行く。


〇ティナ 十一歳・女性

 ユクス村にいた少女。

 長い黒髪と薄い茶色の瞳を持つ少女だが、コウやエルフィナと初めて出会った時は金と銀の瞳だった。

 元は旅芸人の一座に両親と一緒にいたが、その一座はティナが六歳の時に野盗に襲われて壊滅。生き残ったティナは、ユクス村に拾われた。

 今回、ユクス村を含めた周辺の村が真界教団エルラトヴァーリーに襲われ、ティナたちはクラスティカの遺跡に閉じ込められた。

 その後半月以上、まともに食料もないままだったが、ユクス村の人たちが無事だったのは、ティナが神子エフィタスだったがゆえに、無意識に奇跡ミルチェを用いていた可能性が高い。

 コウを『お兄ちゃん』と呼び、エルフィナを『お姉ちゃん』と呼ぶ。

 神子エフィタスであり、次期教皇グラフィルの候補者となるらしく、ファリウス聖教国へと旅立つことになる。

 あろうことか、エルフィナと同レベルの大食いであることが判明した。


〇ランベルト・エヴァンス 二十五歳・男性

 ティナを護衛する神官騎士。帝都大神殿の長の息子であり、奇跡ミルチェの使い手でもある。無論、普通に法術も使える。

 金髪碧眼に整った容姿で、コウは女性に人気がありそうだと思ったが、実際神殿内はもちろん、帝都での人気はかなり高かった。

 冒険者ギルドには属していないが、技量ランクの認定は受けていて、近接:紫、遠距離:紫、法術:青、探索:緑とかなりの高ランク。

 得意とする武器は長剣だが、大抵の武器は使いこなせる。


〇ミレア・カルザイン 二十四歳・女性

 ランベルトの従司祭で、ファリウスの旅に同行することになった一人。

 青みがかった長い黒髪と、青い瞳の持ち主で、普通に考えてもかなりの美人。

 神官職にあるが、奇跡ミルチェは使えず、代わりに法術は得意だという。

 また、武器の扱いに関してはランベルト以上らしい。

 同じく技量ランクの認定は受けていて、近接:赤、遠距離:紫、法術:紫、探索:緑とやはりかなり高い。


〇ファーレン 二十八歳・男性

 帝都に所属する冒険者の一人。

 灰色の髪と瞳を持ち、槍を得意とする。

 二人の仲間と共に、帝都では名の知られた冒険者だったが、今回二人の仲間を失ってしまい、現在は立ち直り中。

 技量ランクは近接:紫、遠距離:緑、法術:青、探索:青。


〇リーク 二十九歳・男性

 帝都に所属する冒険者の一人で、ファーレンと組んでいた一人。

 コウよりも頭一つは大きく、その体格で大剣を扱う、非常に強力な戦士だった一方、法術は苦手としながら、偵察や調査などを得意とする器用な冒険者だった。

 だが、アトリにはなす術なく敗れ、殺されてしまう。

 技量ランクは近接:紫、遠距離:紫、法術:黄、探索:紫。


〇ウェッジ 二十二歳・男性

 帝都に所属する冒険者の一人で、ファーレンと組んでいた一人。

 [炎][氷][暴風]と、三つも第二基幹文字セカンダリルーンを使いこなせる、極めて強力な法術士クリルファだった。実際、帝都でも有数の法術士クリルファとして知られていた。

 だが、アトリの前になす術なく敗れ、殺される。

 ちなみに技量ランクは近接:緑、遠距離:赤、法術:赤、探索:青。


〇トゥリア 二十六歳・女性

 帝都に属する冒険者の一人。

 長剣と法術を得意とする。

 襲撃してきたアトリにギリギリまで肉薄したが、一瞬で凍らされ、文字通りバラバラに砕けてしまった。


〇レスカ 二十六歳・女性

 トゥリアと組んでいた冒険者の一人。

 トゥリアとは幼馴染で、一緒に冒険者をずっとやっていた。

 今回、アトリにトゥリア達が殺されてしまい、相当なショックを受けていた。

 引退するかどうかすら悩んでいるらしいが――。


〇ファスタ 五百二十歳・男性

 ディルファーテの森、レブラスカの氏族出身の森妖精エルフ

 かなり珍しい森妖精エルフの冒険者で、弓と法術を得意としていた。

 トゥリアと組んでいた冒険者だったが、アトリの前になす術なく殺されてしまう。


〇ヴィクトル・エヴァンス 五十八歳・男性

 かつてグリンラッドとも組んでいたことがある冒険者にして、現在の帝都大神殿の長を務める人物。当然、奇跡ミルチェの使い手。

 なのだが、本人は結構気さくな人物。


〇アルバ 年齢不明(十台半ばと推測)・男性

 [奈落]のアルバとも呼ばれる、真界教団エルラトヴァーリー法術士クリルファの一人。[地]と[闇]の第一基幹文字プライマリルーン天与法印セルディックルナールを持つ。

 外見的には日本人に近い。

 言動はどちらかというと年相応の生意気さがある一方、指示に従うのも苦としない。非常に優秀な兵でもある。

 それだけに、自分勝手なアトリとは本当に相性が悪かった。

 今回、それでもアトリを死なせた責任を感じていたが、コウ相手に重傷を負う。

 かろうじて生きていたが、しばらく戦線復帰は難しい模様。

 特に法術探知能力に長けていて、実はコウが使う法術履歴探査スペルヒストリアに近いことを、法術もなしに行う事すらでき、特に法術戦では相手の法術に対応して防御を行うことを得意とする。

 ちなみに『奈落』は《意思接続ウィルリンク》が翻訳したもので、この世界では『地の中の闇』というような意味の言葉が元。


〇レガンダ 年齢不明(二十歳前後と推測)・男性

 颶風ぐふうのレガンダと呼ばれる、真界教団エルラトヴァーリー法術士クリルファの一人。[火]と[風]の第一基幹文字プライマリルーン天与法印セルディックルナールを持つ。

 外見は灰色の髪に少し褐色の肌で、瞳が金色である。

 非常に強力な法術士であり、その攻撃力は極めて高い。一方で防御はやや不得手。

 アルバとよく組んで活動をしている。

 冷静沈着で、状況判断能力にも長けている。

 今回はコウとエルフィナ相手に戦ったが、最悪自分達が敗死しても、その情報を伝えるための手段をいくつも考えていた。


〇アトリ 年齢不明(十台半ばと推測)・男性

 水のアトリと呼ばれる、真界教団エルラトヴァーリー法術士クリルファの一人。[水]の第一基幹文字プライマリルーン天与法印セルディックルナールを持つ。

 絵具で染めたような水色の髪が特徴。

 非常に強力な法術士クリルファだったが、同時にその力への過信が強く、それゆえにコウに破れ、死亡する。

 自己中心的な性格で、我侭。

 命令には従っていたが、何かとうるさいアルバは心底嫌っていた。

 なお、帝国兵千人を殺したのはアトリである。


〇ユスタリア 年齢不明(三十歳前後?)・女性(おそらく)

 真界教団エルラトヴァーリー導師レクリアの一人と名乗った存在。

 同じく天与法印セルディックルナールを持ち、第一基幹文字プライマリルーンも複数含まれるのは確実。また、単独で広範囲の排魔の結界を張り巡らすことができるほか、アルバでも防げないコウの法術を防御できるほどの技量の持ち主。

 アルバやレガンダには『先生』と呼ばれており、彼らの上役であると思われる。

 その実力は極めて高いが、コウの魔技マナレットの威力を見誤り、大きなダメージを受けるも、魔鱗の守護デュスティエガルドという鱗に似たもので体を防御する力で耐えて、逃げた。

 厳しい時は厳しいが、それでも自分の失敗を認めることもできるなど、アルバやレガンダにとっても理不尽な存在ではないようだ。


【地名】


〇グラスベルク帝国

 大陸中央部を支配する大陸最大国家にして、ファリウス聖教国を除いて、最も長い歴史を誇る国家でもある。

 皇帝直轄領と十三の王国で構成される。

 世界最大の国家として知られている。

 現在の皇帝はプラウディス四世。


〇ヴェンテンブルグ

 グラスベルク帝国の都。

 人口二百万人を誇る、大陸最大の都市。

 バストゥリア河という大河の途中で水が溜まったオリスネイア湖という巨大な三日月湖のほとりにある街で、その都市の大きさは直径およそ五十キロ百メルテの円形状。周辺都市を含めれば、その人口は五百万人を数えるとされる。

 皇宮を中心に貴族区画が八つ、その外側に市民区画が二十五に分かれている。

 ただし、市民区画の第一区だけは皇宮と隣接している。

 この街の特徴として、大きな道は全て徒歩と馬車の行く道が分かれており、さらに主要な幹線道は高速馬車と通常の馬車でも分けられている。

 さらに帝都の馬車は極めて乗り心地が良く、高速道はかなり整備されてるのもあり、帝都横断を六時間程度で可能としている。

 しかも主要幹線道は交差点が立体交差になっていて、当然の様に進行方向も定められているので、高速馬車の速度は極めて速い。

 とはいえ巨大な都市であり、この街で生まれた者は、この街から出ずに一生を終える、という人も少なくはない。

 元々この地域は、現在の皇帝の血筋であるグラスベルク家が支配し続けていた場所で、他の勢力がこの地を支配することは、神殿が認めていなかったらしい。

 グラスベルク家は、おそらく九千年前からこの地を支配し続けている。

 帝都の地下には歴代で作られた地下水路が無秩序に広がっていて、さながら迷宮状態。全容を知る者は一人もいないとされている。


〇ヴェライズ

 帝都南東側の門前町。

 オリスネイア湖を挟んで帝都と隣接してるが、実質帝都東側の玄関とも言え、帝都に行くための船が多数出ている。

 船には三種類あり、一日かけて到着する帆船と、起風宝珠シュファラウドを併用する帆船。そして積載制限はあるが、わずか一時間で着く水流推進装置オリオスビュストを用いた小型艇がある。

 ちなみに門前町とあるが、この街だけでも人口は十万人もいる。


〇オリスネイア湖

 帝都の東から南に接する巨大な三日月湖。バストゥリア河の水が途中で三日月湖状にたまったものなので、わずかに流れがある。

 とはいえその大きさはすさまじく、幅は四十キロ八十メルテ、長さに至っては二百キロ四百メルテもある。

 このため、帝都の南~東側から帝都に入ろうとする場合、この湖を迂回するか、または帝都の門前町から船で行く必要がある。その門前町の一つがヴェライズ。


〇クラスティカの遺跡

 帝都南西部にある遺跡。

 天然洞窟を利用した神殿で、二千年ほど前には使われていたらしく、当時は周辺に街もあった。

 ただその後、河の流れが変わったとかで水の確保が難しくなり、人が住まなくなったもので、周辺の村々の緊急時の避難所として、食料や水生成の法術具クリプトなどを保管してあったらしい。


【その他】


水流推進装置オリオスビュスト

 オリスネイア湖を渡るための船に取り付けられている法術具クリプトで、名の通り水流を噴出して推進力とする高速艇に利用されている。

 大出力が難しいため、大型船には取り付けられず、十人程度が乗る小型艇で利用されている。また、航行を安定させるため、いわゆる水中翼船の技術も取り入れられている。

 これを利用した船は非常に速度が速く、時速四十キロ八十メルテという破格の速度を誇る。実は、この世界において最も高速で移動できる手段でもある。


〇帝国軍の組織と階級

 帝国軍はその規模が極めて大きいことから、この世界では唯一、階級制を採用している。

 階級は佐官レグラス尉官ギルアス兵官エルアスとあり、それぞれの中でさらに三段階。

 佐官であれば大佐ヴァルレグ中佐ファイレグ少佐ティスレグとなる。兵官エルアスは、曹長ヴァルエル軍曹ファイエル伍長ティスエルとなる。

 さらにその下に階級なしの一般兵がいる。


 この階級は帝都の防衛を担う帝都衛士ヴェルダートも帝国軍も同じ。

 両組織はともに一番上には皇帝がいるが、実際に皇帝が直接指揮を執ることは滅多にない。

 軍務卿バジェイラと呼ばれる皇帝名代が実質軍務すべてを統括する。

 帝国軍を実際に指揮するのは、軍務卿バジェイラの下に四人の将軍ジェルラがいて、その下に二人の副将軍ディルジェルラが配されている。その下からは階級を持つ兵士たち。

 帝国軍全体ではおよそ二十万とされる。


 帝都衛士ヴェルダートは、軍務卿バジェイラが軍としては統括しているが、最終的な指揮権は帝都市長にある。

 帝都衛士ヴェルダートは人数が現在は三万人と決まっており、最高位である大佐ヴァルレグの人数は四人。実際の指揮は主に彼らが執る。


 また、この二組織とは別に、近衛軍ノエンティアというものがある。

 これは皇帝と皇宮守護を主任務とする部隊で、実質これが帝国の騎士団に相当する。人数はわずか三千人。ただし、全員が非常に強力な兵士で構成され、三倍の数の帝国軍すら圧倒するとされる。

 そしてその中でもごく一部が皇宮騎士リストーラと呼ばれる特別な存在。

 近衛軍は皇帝直轄であるため、軍務卿バジェイラの権限も及ばない。

 帝国軍の中から抜擢されることもあれば、元冒険者で取り立てられることもある、血筋なども関係なく皇帝自身によって選抜される部隊で、その中でも皇宮騎士リストーラは最高位の存在であり、巡検士アライアも兼ねてることもある。


〇謎の水中遺跡

 コウとエルフィナが調査した遺跡。

 発見自体は大分昔からされていたが、水底にあって誰も入れなかったため、調査はほとんどされていなかった遺跡。

 この遺跡で、河湖妖精リヴィニウが元は人間だったことが記録されていた。

 空白の千年の間に、こういった施設で保護されていた人間の子供たちが変質したのが妖精族フェリアであるという可能性が見えてきたのである。

 なお、この事実は現時点では帝国法術ギルドと政府の一部で留め置かれている。

 妖精族フェリアはともかく、亜人族インフェリアまでもが元人間となった場合の影響が大きすぎる故である。


デミグラスソースヴェンテルシアライネ

 読んで字のごとく。

 地球にあるそれとほとんど同じソース。この世界ではヴェンテンブルグの名物。

 元は一人の料理人が作り出したものらしいが、あまりに美味しいため帝都中に広まり、今では帝国の名物料理の一つともなっている。

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