第19話一人の一日

お盆が街には訪れていた。

私は一度実家に顔を出して両親に報告をする。

「子供出来たから。これから一人で育てる」

私のぶっきらぼうな言葉と態度を目前にした両親はあまりの出来事に顔を見合わせている。

「彼方くんの子供?」

母親は思わず初手で核心を突く言葉を口にして私は俯いた。

私の様子を見て両親は表情を歪めて嘆息する。

「何でそんな裏切るような真似をした…」

父親の呆れるような言葉を耳にして勝手ながら私は心に傷を負っていた。

「何処の男の子供だ?」

「名前も覚えてない」

私の言葉に再度呆れたような表情を浮かべた両親は俯きながら首を左右に振る。

「一体何してるのよ…」

母親の呆れた声を聞いて私は泣き出しそうな思いに駆られる。

「無理矢理とかじゃないんだよね?」

母親の言葉に頷いて応えると両親は仕方無さそうに頷いて鼻から息を漏らす。

「わかったわ。帰ってきなさい。一人で産んで育てるなんて簡単なことじゃないわよ。お父さんもお母さんもまだ若いから手伝うわよ」

優しい言葉に甘えるように頷くと久しぶりに母親に抱きついた。

「辛かったのね。誰もが吉乃を許さなくても私達だけは許すわよ」

「うん…うん…」

涙ぐみながら母親の言葉に甘えると父親は一度立ち上がる。

「彼方と同棲していたんじゃないのか?今は何処で住んでる?」

「一人暮らししてる…」

「じゃあ荷物まとめに行くぞ。これからまたここに住むんだから」

父親の不器用な優しさに触れると一つ頷く。

子供の頃のように父親の後を付いて玄関に向かう。

そのまま車に乗り込むと一人暮らしのアパートへと向かうのであった。


一人暮らしをして間もないアパートには荷物も少なく処分する物もあまりなかった。

父親の車に荷物を詰め込むと後日、アパートの契約解除を済ませるのであった。


お盆休みに突入して一人の広すぎる室内で目を覚ます。

旅行も終了して一人で考え込む時間が出来てしまった。

何も考える必要など無いはずなのに気付けば思考が回っていた。

その度に頭を振って別の思考に切り替えると一度風呂場に向かう。

シャワーで全身の汗を流すと身支度を整えた。

マンションを出ると車に乗り込んで近くのスーパーに向かいお墓参りの支度を整えた。

そのまま車で移動をして墓地へと向かう。

お墓の掃除をしてキレイにするとお線香に火をつける。

お花と供え物を墓前に置くと手を合わせる。

もう慣れた心に少しだけ仄暗い感情が立ち込めるがいつものように頭を振る。

目を開けて立ち上がるとそのまま帰路に就く。

帰宅すると部屋のベランダで迎え火をする。

一人きりの室内でぼぉーっとして過ごしていた。

スマホが震えて手にすると表示された通知を見て返事を送る。

「両親に良い人居ないのかって聞かれたから、一緒に旅行した人なら居るって伝えたけど問題ないよね」

導から通知が届いてその内容を見て軽く苦笑する。

「構わないよ」

そんな気軽な返事をすると本日は一人で過ごす予感がしていた。

暇な一日になりそうでソファで横になるとのんびりとした一日が過ぎていく。

お盆の誰も居ない一日を僕は今年初めて過ごすのであった。

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