第17話もうすぐ旅行も終わる

夕方近くまで瑠璃と鏡子の部屋で飲み食いを続けるとビーチへと向かうことになる。

「私達は着替えるから。彼方は先にビーチに行ってて」

瑠璃に声を掛けられて僕は了承するように頷くと部屋を後にした。

そのままホテルの外に出ると直ぐ側のビーチに向かった。

砂浜に腰掛けると旅行客の減っていった、その場所でしばらく海を眺めて過ごす。

二泊三日の旅行はもうすぐ終わる。

本当ならお盆の間も旅行に来ていたかったのだが、実家に帰ってお墓参りに行く人もいる。

それなので有給を取った二日間だけが旅行日だった。

進展があったようで特に取り立てて何かが前に進んだわけでもない僕らの曖昧な関係は、いつまで続くのだろうか。

そんなことを薄ぼんやりと考えていた。

この先で何が待ちわびているのか。

僕にはまだ分からないが、この幸運な流れに身を任せるのであった。


二十分ぐらいビーチで一人で過ごしていると彼女らは水着に着替えた姿でやってくる。

「おまたせ〜。いやぁ〜まだ暑いね」

瑠璃が呑気な口調で日差しを手で遮るような仕草を取ると彼女らはこちらにやってくる。

「私の水着どう?」

花音は少しだけ挑発するように胸を強調させて僕に問いかけてくる。

「似合ってると思うよ」

水族館で言われたとおりにおでこに視線を向けながら、ちらっと見えた水着姿を褒める。

「ちゃんと見て欲しいな♡」

「見たって…本当に似合ってるから」

「どういうところが?」

「色?派手すぎず控えめすぎず良いと思うよ」

「そう。それなら良かった」

花音はそれだけ言うと導と共に海へと走り出した。

「飲んでるんだから走るなよ〜」

その後ろから鏡子が注意するように声を掛けている。

瑠璃は二人よりも少し遅れて海へと入り、三人ははしゃいでいるようだった。

「私の地元はどうだった?」

鏡子は僕の隣に腰掛けると薄く微笑んで問いかけてくる。

「最高だったよ。嫌なことも吹っ飛んだ」

倣うように微笑みを返すと鏡子の目を見つめる。

「そんな簡単に忘れられることじゃないでしょ。分かってるよ」

それでも鏡子は僕の気持ちを汲んで包み込むような表情で言葉を口にする。

「そうだね…でも皆と居るのは本当に心地良いよ」

「そう。それなら良かったな。明日で旅行も終わりだけど…一人になって大丈夫?」

「問題ないよ。お盆休みが終わったら、また一人の生活は始まるんだし。今のうちに慣れておかないと」

「辛くなったらいつでも私達を呼んでね?何時でも駆け付けるから」

「ありがとう。助かるよ」

僕と鏡子はしばらく海で戯れている三人を眺めながら過ごす。

日が暮れるまでの間、海で遊んで過ごすと夕食のお店まで向かうのであった。

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