第6話勝手ながら別れてからも彼女は僕の幸福を願っている
ホテルに戻ってくると瑠璃と鏡子の部屋に集まった。
買ってきた飲み物やつまみをテーブルの上に広げると各々が飲み物を手にする。
「導はもう酔ってるの?」
確認事項ではないが彼女らに問いかける。
「気にしないで。その内、治まるから」
「そうなんだ。水とか持ってくる?」
「いいよいいよ。飲んでるといきなりシラフになるから」
「変な体質だね…」
「ふっと我に返るんじゃない?」
瑠璃は説明をしてくれると気にしないでいいとでも言うように軽く手を振る。
「コップいる人〜」
鏡子が全員に問いかけて花音が手を挙げる。
「花音はワインかぁ〜。後でちょっとちょうだい」
「いいよ。鏡子はまだビール?」
「うん。暑いからね。二本ほど飲んで早くベッドで横になりたい」
鏡子は冗談でも言うように笑って軽口を叩く。
「窓側のベッドは私ね〜」
瑠璃もハイテンションで陽気な雰囲気を醸し出していた。
「ビーフジャーキー食べたい」
導は今まさにステーキを食べてきたというのに更にお肉を所望していた。
「私はチーズ。鏡子の分も残しておくね」
「ありがとう〜」
花音と鏡子は仲の良いやり取りをすると再び酒宴は始まった。
僕と瑠璃と鏡子はご当地のビールを飲んでいた。
しばらく酔っぱらい同士のくだらない会話を繰り返しながら、お酒を飲み進めると彼女らはベッドで横になった。
独り残された僕は椅子から立ち上がると部屋に戻っていく。
ベッドで横になり何気なくスマホを手にすると気になっていた吉乃のSNSを覗きに行った。
「彼方は本当に良い彼氏だった。どうでもいい彼氏じゃなくて本当に良い彼氏。私のことをいつでも気にかけてくれて気を使ってくれる。欲しい時に欲しい言葉をかけてくれるし私が不満を言っても機嫌を損ねる様なこともない。いつも優しくて私をファーストに考えて行動してくれた。それなのに私は身勝手な理由から彼方を裏切った。今からでもあの日に戻って全て無かった事にしたい。けれどそんなことは無理だから私は彼方の幸せを陰ながら祈るばかり。幸いにもこのSNSを目にした彼方の同僚が数名いた。DMが来て色々と話をしたけれど皆良さそうな娘達だった。彼方が彼女らの誰かと上手くいけばいいな」
最近の書き込みにこの様な文章が残っており僕は目を見開く。
他にも僕の内面や外見を褒める内容がいくつもあり少しだけ気が引けてしまう。
何よりも実名が晒さているため失礼にも若干の恐怖のような感情を抱く。
そんな中で数名の同僚と言う部分は、今旅行に来ているメンツをさしているのだろうか。
彼女らは吉乃とSNSを通じて僕のことを知ろうとしてくれていたのかもしれない。
確認は取れていないが吉乃も彼女らも僕のために行動してくれているはずだ。
そんな彼女らの優しさを全身で感じながら僕は心地の良い昼寝に身を任せるのであった。
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