第4話南の島まで

約束の時間よりも三十分早く到着すると人数分の飲み物をカフェで買い椅子に座って彼女らをで待っていた。

一足先にアイスコーヒーを飲みながら道行くカップルを何気なく眺めている。

幸せそうな彼らを目にして少しだけ心の傷が疼いた。

本来なら僕も今頃、吉乃と夏休みを楽しんでいたのかもしれない。

未練がましい気持ちを抱くと折角旅行に誘ってくれた彼女らに失礼だと感じて頭を振る。

スマホに通知が届き、それを確認すると彼女らは揃って空港に到着したようだった。

居場所を知らせると辺りを確認する。

「おまたせ〜。今日も暑いね」

瑠璃は先んじて口を開くと隣りにいた鏡子も同意するように頷いた。

「朝食食べた?コンビニで色々買ってきたんだけど」

花音がコンビニ袋を体の前に出すと中身を見せるように袋を広げた。

「カレーパンが良い」

導がいの一番で挙手すると周りを確認していた。

僕らは同意するようにそれに頷くと導は袋の中からカレーパンを取り出す。

「じゃあ私はおにぎりにする」

次に鏡子が袋に手を入れると鮭のおにぎりを手にした。

「私はメロンパン」

続いて瑠璃が袋に手を入れるとメロンパンを取り出す。

「最後になって悪いけど…彼方はどっちにする?」

花音は袋の中に残されたコロッケパンと焼きそばパンを取り出すと両手に持つ。

「じゃあコロッケパンで。ありがとうね」

それを受け取ると椅子の上に置いておいた紙袋を手にして彼女らの前に差し出す。

「僕も飲み物買っておいたんだ。好きなの選んで」

彼女らは各々感謝を告げてくると中から好きな飲み物を手にした。

導は僕と同じようにアイスコーヒーを手にしていた。

花音はアイスカフェラテだった。

鏡子は抹茶ラテで瑠璃はライムジュースだった。

搭乗口の近くで朝食を軽く取るとフライトの時間は迫ってきていた。

チケットを持って搭乗口を通り抜けると飛行機に乗り込む。

「三時間ぐらいで着くから。早起きだった人は軽く休んだら?」

鏡子は旅行に慣れているようで僕らに提案をする。

それも当然のことで、彼女の地元に旅行に行くのだ。

鏡子が手慣れていても不思議ではなかった。

「楽しみであまり眠れなかったから…少し寝る」

花音は席について早々にシートベルトをするとそのまま目を閉じた。

隣りに座っていた導も眠そうに欠伸をするとそのまま目を閉じる。

「瑠璃と彼方は大丈夫?私も向こうで存分に楽しみたいから。おやすみ」

「私達も軽く寝ようか」

瑠璃は僕に問いかけてくるのでそれに同意するように頷く。

そして三時間ほどのフライトの末に目的地である南の島に到着するのであった。

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