Episode08-00 追う青年②
高校時代の彼は、不良グループとも呼びきれないような中途半端な悪友たちとつるみ、少々ハメを外す程度の遊びで満足するような少年だった。
だから、本来ならば高校を卒業した後は偏差値の低い大学にでも進学するか、それとも適当に働き口を見つけるか、若しくは働かずにブラブラするだけか、とにかく、そう言った生活を送るはずだった少年だ。
おそらく、彼自身も昨年のひと頃までは「そんな将来」を思い浮かべていただろう。
ただ、そんな「ちょっと悪いだけ」の少年の未来は、昨年の8月に起こった「或る事件」を契機に、一変してしまった。
「或る事件」とは、怪異が絡む異常性の高い事件に通じた極々限られた人々の間で「荒川河川敷・八等生成り事件」と呼ばれている事件。とある少年が海外から流れ着いた「悪魔」によって怪異に
その事件は、首謀者であった生成りの少年 ――
しかし、結末は「生成り穢界」の発生を事前に察知した壱等式家「
その事件に於いて、
彼と彼の恋人飯塚詩音が監禁・暴行された理由は、単純に生成りと化した大江隆司が拉致を試みた少女の居場所や連絡方法を聞き出すため。しかも、この時まで少年は大江隆司と友人関係であった。
つまり、岡田浩二という少年は友人であると思っていた大江隆司によって恋人と共に監禁され、暴行を受けたという過去を持つ。しかも、実際には先に呼び出されて暴行を受けた岡田浩二が、大江隆司の「脅し」に屈して、恋人である飯塚詩音を監禁・暴行の舞台となった荒川河川敷に呼び出してさえいる。
その結果、彼自身は単なる暴力を受けるだけであったが、恋人であった飯塚詩音は女性であるが故の酷い暴行を受ける結果となった。
そういった事があったからだろう。事件が終わりしばらく時間が経過した後、彼の恋人飯塚詩音は入院先の病院から姿を消した。
そして彼も、自責の念から失踪した恋人の行方を追い求める事になった。
******************
詩音の行方を追う浩二は、取り敢えず東京に向かう事にした。発想自体は至極安直なものだが、以前彼女が「東京に出たいな」と言っていたため、そうした訳だ。
そして、歌舞伎町や池袋など、「帰る場所をなくした若者」が集まりそうな場所を中心に彼女の行方を追い求めた。
ただ、実際には四六時中街中を探し回る訳に行かない。
彼自身も半ば家出のような恰好で実家を飛び出してきている。そのため、生活するための「カネ」を稼ぐ必要があった。
結局、短期のバイトで食い繋ぎながら、安いネットカフェで寝泊まりする日々が続き、合間合間で何とか時間をやり繰りして歌舞伎町界隈で「詩音」の行方を捜すという日々を過ごすことになった。
そして、気が付けば「秋が過ぎ、冬になり」と時間ばかり過ぎていく状況に浩二はひと頃、悶絶するほどの焦りを覚えていた。
また、この頃を境に周囲では「怪異」について語られることが多くなり、自然とその方面への知識が増えていくにつれ、浩二は、
――あの事件も、もしかしたら「怪異」が原因だったのか?――
と思うようになった。
というのも、あの事件の直前まで首謀者となった大江隆司は浩二にとって「親友」と言えるような間柄だったから。それが突然、文字通り「豹変」したのだ。
――なにか良くないモノが憑りついたに違いない――
そういう結論に達するのも無理はない。
ただ、そう考えると
――じゃぁ、もしかして詩音も?――
そんな不安がせり上がってくる。
何の理由も裏付けもない、ただの「勘」だ。しかし、そう考えると詩音が見つからない理由も「ソレが原因」のように思えてしまい、浩二は只でさえ高まっていた焦燥感を更に募らせることになった。
そんな浩二に転機が訪れたのは年が明けた今年の1月。
――
という発表があり、それを
その後、少なくない紆余曲折を経た彼は、結局「
そして程なく
――シオンって人の知り合いなの?――
ふとした事で話しかけた見知らぬ少女から「シオン」という名前を聞くに至ったのだった。
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