Episode07-11 時には立ち止まる勇気も……別にサボりたい訳じゃ無い
すみません、投稿する話を1つ間違えてしまいました。
EP07-10を2度投稿してしまいましたので、改めて-11を投稿します。
コメントで教えてくれた方々、ありがとうございました。間違い投稿の分を非公開にしたら、コメント返しできなくなったので、この場を借りてお礼いたします。
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今回の「六等穢界」、2層を占める主な怪異は「
この怪異は、どうやら通常はほとんど動かず、その場にじっとしている模様。そのため「丸太」のように見える。しかし、一旦戦闘状態となれば、かなり強烈な瞬発力を発揮して直線的な突進を見せる。また、円形の口による噛み付き攻撃も(結局1回も当たらなかったが)それなりに強力そうだ。
ただ、雷撃属性(?)の攻撃によって一時的なマヒ状態に陥るため、それが分かってしまえば対処は簡単だった。ちなみに、炎属性(?)の攻撃はダメージを与える以上に、野槌を
とにかく、雷撃属性という明確な弱点を見つけた結果、その後の俺は特に野槌に対して苦戦することも無く、寧ろ、強烈な瞬発力を伴う突進攻撃を「良い練習相手」として、鬼眼や霊交剣、呪符術の習熟に努める事が出来た。
ちなみに「鬼眼」や「呪符術」は
どうやら、この「霊交剣」は、正式には「霊的強化法」と呼ぶらしい。
何故その呼び方が分かるのかと言うと、単純な話で、
――霊的強化法★★☆☆☆
との事。
効果の程は……まぁ、身を以て知っているので今更だが、
――霊力を体内経絡に通わせることで身体的な能力を強化し、また武器に通わせることで一時的な攻撃力増強を行う。ただし見た目が若返ることは無い――
というもの。
書かれている説明文は(「若返り云々」はさて置き)あっさりした内容だが、効果は大きい。それに、使用に際して法力を消費しないのも地味にうれしいポイントだ。
とにかく、その「霊交剣」改め「霊的強化法」を意識しつつ、俺は2層を進む。そして、あらかたの「野槌」を斃したところで3層への入り口となるはずの「木の門枠」を探すのだが、
「……無い?」
常時呼び出し中の「神鳥」の視界には、一向にそれらしいモノが映らない。その代わりに、
「……穢界主なのか?」
少し離れたすり鉢状のくぼ地の中央に、ひときわ大きな「野槌」1匹と、数匹の「狗頭鬼」の集団を見つけた。
「ここって、3層構造じゃなかったのか?」
思わず疑問とも感想ともつかない言葉を漏らす俺。それに対して、
「う~ん、まだそこまで深くなってないみたい」
と応じるのはエミ。
まぁ、「六等穢界」だから全て「3層構造」だというルール(?)がある訳でもない(と思う)。「成長段階」の穢界の階層が足りない事だってあるだろう。そんな事を考えつつ、
「そういうモノなのか?」と訊く俺に、
「……さぁ?」と確信の無い返事をするエミ。
どうやらエミもはっきりと「そうだ」とは言えない模様。
と、ここで俺はある事を思い付いた。
この穢界のある場所は、所謂「空地」だった。高速のインターと自衛隊駐屯地の間の空白地帯だ。周辺には商店も民家も無かった。そのため、付近の人が「穢界」の影響を受けることも少ないだろう。だからこその発想だが、
「……ちょっと、このまま様子を見てみるか?」
と思ったわけだ。
実は現在、近場の「六等穢界」は結構数が減ってしまっている。まぁ、東京に出ればそれほど「腐るほど」ある訳だが、流石に埼玉のこの辺りでは数が少ない。だから、ここは成長途中の穢界をこのまま保全し、その成長を見守ろうという訳だ。
決して、「このまま放置してスーパーバリューストア与野店のような稼ぎ場所にしよう」と考えている訳じゃ――
「……考えてるね」
「い、いや……あっ、そうだ、彩音のレベルアップ場所としてだよ。ノヅチは雷撃が弱点なんだから、彩音の忍者スキルの『雷玉』とも相性がいい」
エミの鋭い突っ込みに、俺は取って付けたような理由を喋るが、喋りつつ、案外良いアイデアなんじゃないかと思い始めた。
結局この後、俺の意見が受け入れられ、俺とエミ(+お仲間怪異の皆様)は穢界を浄化せずに外に出る事になった。
これまで余り無いパターンだが、一応「六等穢界」なので、怪異を斃してドロップを宝珠に交換するだけで、それなりの収入になる。
六等怪異1匹斃して、浄化ポイント6(穢れポイント4)六等怪異のドロップは1つで50宝珠と交換可能。今日は何だかんだと50匹前後の怪異を斃したので、
浄化ポイント+312
宝珠+2,600
という収入になる。一方で、使用した消耗品は「無地の符冊」数束と「清めの御神酒」2本。収入と支出を差し引きすると、
(50万円くらい……)
の収入になる。
(あれ? これって、別に無理して穢界を浄化しなくても……)
そんな発想になりかけて、慌ててそれを打ち消す俺。流石に、この発想は不謹慎だと思ったからだ。
******************
このように、俺の日常はほぼ連日、どこかしらの「穢界」に行ったり、見守り(放置ではない!)を決めた六等穢界を覗いたりしながら過ぎていった。
一方、彩音の方は(今更だけど)本格的に受験勉強モードに突入。少し前のように、学校帰りに「毎日穢界へ――」という訳にはいかなくなったが、それでも時折「息抜きしたい!」という彼女を連れて、七等穢界をメインに、時折「野槌」を相手に出来る「見守り(放置ではない)六等穢界」へ行ったりした。
そんな風に日々を過ごし、カレンダーはあっという間にクリスマス。
月並みにローストチキンを焼いて2人で食べたり、クリスマスケーキに27本の蝋燭を立ててみたり(実は25日が俺の27歳の誕生日だった)り、プレゼントを交換し合ったりした翌朝、今日から学校が冬休みに突入するので、
「迅さん、忘れ物ないよね?」
「大丈夫だと思う……うん、大丈夫だ」
「本当にお邪魔じゃないですか?」
「大丈夫大丈夫、気にしないで麗ちゃん」
「じゃ、出発するぞ」
「あ、ガスの元栓……」
「締めたよ。大丈夫」
そんなやり取りを経て、俺と彩音、それにエミと……何故か白絹嬢の4人を乗せた愛車「ヴィッツ」は、一路長野県を目指して走り出すのだった。
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