Episode06-29 スーパーの穢界 ⑤2人の秘密?


 第2層で最初に会敵したのは8匹の怪異グループだったが、どうやら2層は怪異の数が多いらしい。


 というのも、次いで遭遇した怪異も6匹前後のグループだったし、その次も8匹のグループと続いたからだ。構成としては「餓鬼+呪鬼+怨霊」とワンパターンだし、単体として六等穢界になったといっても呪鬼以外はそれほど手強い印象は持たない。しかし、この数と連戦するのは……


「はぁ、はぁ……ちょっと休憩」

「すみません、私も」


 俺はともかく彩音と白絹嬢がバテてしまう。


 2人とも、ちょっと息が切れた感じ。


「法力切れっぽい」

「同じく」


 なるほど、と思う。俺は最前列で剣を振り回しているだけ(その方が手っ取り早いから)だが、後ろの2人は「神楽舞」をやったり、呪符術を撃ったり、何かと法力を消費する行動をしている。


「ごめん、気が付かなかった……見張ってるから少し休もう」


 配慮が足りなかったことを詫びつつ、俺は周囲の警戒に意識を振り分ける。場所的には「ザ・一本道」といった通路の途中なので、前方に注意していればいいだろう。それに「鬼眼」スキルには今の所「怪異」の存在は映っていない。


「これ、高いんだよね~」


 休憩モードに入った彩音は、そうぼやきながら「宝珠アイテム:霊水」の小瓶を取り出して一口。


 対して白絹嬢は「そうよねぇ」と同意しつつ、こちらも「霊水」を飲む。そして、


「あれ? 彩音は『清めの塩』とか使わないの? そろそろ使った方が良いと思うけど」


 との事。ちなみに「清めの塩」とは宝珠ショップで買えるアイテムで、文字通り穢れポイントを減らす効果の品物だ。ただ、俺と彩音はこの手のアイテム・・・・・・・・を使った事が余り無い。なので、


「え? まだ大丈夫だよ」


 という彩音の返事になるのだが、その返事を聞いた白絹嬢がスマホの画面をタップしてスクロールさせつつ、


「なんで?」


 と、ちょっと素っ頓狂な声を上げる。


「なんで、穢れポイントにこんな差があるの?」


 彼女の疑問はソレ・・だった。


******************


 パーティーを組んでいると、怪異を斃したことで得られる浄化ポイントは等分されて各自に分配されるし、「穢れポイント」も等分されて割り振られることになる(ちなみに、六等穢界の雑魚敵だと1匹斃して浄化ポイント+6pt・穢れポイント+4ptだった)。また、ドロップした換金アイテムはパーティー用のインベントリ(いつの間にかアップデートで改善されていた)に収納される事になる。


 一方、パーティーメンバーは各自の表層的な「状態」を確認することが出来、その中には身体障壁や法力の残量/最大値やレベル・クラス情報なんかが含まれ、当然ながら穢れポイントの現在値も見る事が出来る。


 それで、白絹嬢は俺と彩音と彼女自身の数値を見比べて疑問を持った模様。まぁ、俺と彩音がそろって「穢れポイント:34」なのに対して、白絹嬢だけ「穢れポイント:52」だったから、疑問に思うのは当然だろう。普通は「ゼロ」スタートなら同じ数値になっているはずだから。


 ちなみに、俺と彩音は以前は「10分で1pt減算」だったが、今は「5分で1pt減算」になっている。扇谷高校での事件の際に「エミ」を召喚し、その後エミが「出っ放し」状態になった結果、なぜか減算のペースが速くなったからだ。もしかしたら、一緒に「出しっ放し」になっている「お仲間怪異軍団」の栄養分になっているのかもしれない。


 一方、白絹嬢は「1時間に1pt減算」なのだろう。丁度これまでに怪異を40匹ほど斃しているので、40×4÷3=53.3。この穢界に入って1時間半ほど経過しているので、計算としては合っている。


 ただし、計算は合っていても白絹嬢の常識(というか、一般的な式者の常識)には合致していない。なので、説明する事を求められ、


「――という訳で、俺と彩音は穢れポイントが早く減るみたいなんだ」


 俺はザックリと「エハミ様」や「エミ」の加護について説明。


「……なんかもう……」


 対して白絹嬢は目を白黒させた感じで呟くと、


「そういう事……なんですね」


 何故か諦めたように呟いた。


「こ、こんど、麗ちゃんの分の穢れもどうにかできないかエミちゃんに訊いてみるから」


 とは彩音のフォロー(?)


 対して白絹嬢は、


「その『エミちゃん』という神様の分霊は、この前の学園祭の時に怪異を引き連れていた女の子ですか?」


とか、


「ちょっと前の生成りの八等穢界で悪魔を斃した時も?」


 と確認するように訊いて来るので、取り敢えず「そうだよ」と答える。そして、


「えっと、今はどちらに?」

「ああ、エハミ様と一緒に旅行中」

「……旅行中?」

「うん、関西方面から九州まで行けたら行くって」

「なに……その自由な感じ……」


 という会話の後、彼女は「清めの御神酒(1合瓶)」をあおるように一気に飲んで盛大にむせていた。たぶん「霊水」と間違えたのだろう。


******************


 その後、昼食として持ってきたお弁当を食べつつ、それを食べきったところで小休止が終了。ちなみにお弁当の評価につては、そこそこの「高評価」だった。


 その後は、行動再開前に「念のため」ということで俺も彩音も「清めの塩」を振り撒いて「穢れポイント」をゼロにリセットする。


 そして、後衛役の2人の負担を減らすため、


「一応、念のため助っ人……まぁ役に立つか分からないけど、小鬼太郎、来い!」


 「使鬼召喚:小鬼」を発動。


 空中に放り投げた「無地の符冊」がパッと燃え上がると、次の瞬間には「小鬼太郎」がその場に出現。コイツを呼び出すのは扇谷高校の事件以来だが……


「あれ?」と彩音。

「うん?」と俺。


 以前は小学生の3,4年生くらいの背丈で、ちょっと頼りない体つきだった小鬼太郎が、今は少し背が伸びて、何となくだけど体格が分厚くなって見える。


「なんだろう……成長した?」


 俺の問いかけに彩音は首を傾げる。一方、白絹嬢は


「八神さんなら……そういう事もあるんじゃないですか」


 妙に投げやりな返事だった。


「と、とにかく、俺と小鬼太郎で前衛をやるんで、2人はペース配分も考えてよろしく」


 ということで、2層探索を再開。


 この後、彩音が「段ボール箱の宝箱」を見つけて、今度こそ自分で開けた結果『浄化ポイント100pt』と書かれた紙切れを発見(本当に33ptづつ分配された)したりしつつ、順調に2層を攻略。


 結果として、2層で合計40匹ほどの怪異を斃したところで


「階段……だね」


 更に下層へ降りる階段を発見した。



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