Episode06-19 八等穢界くらいは
だだっ広い空間に、ぽつりぽつりと外灯のような光源が点在する。この特徴は怪異が「無限湧き」する特性を持った穢界である事を示すものだ。まぁ、中には偶然に「無限湧き」の特徴と似た外観を持った普通の穢界が出来る事も有るだろうし、その逆に、それらの特徴を持っていないのに「湧く」穢界もあるだろう。だから全部が全部「そうだ」とは言えないが、とにかく、そういう傾向がある。
それで、今俺と彩音が足を踏み入れている「八等穢界」は、やっぱり思った通りに「無限湧き」した。
これは、クラスチェンジしたばかりの彩音が「下忍クラス」や「忍術」、更には、買ったばかりの「祝福されたソード&スピア」の扱いに慣れるためには好都合だった。
とにかく彩音は、
「迅さんは後ろで見ててね」
と言うと、単身で八等レベルの「小骸穢」に立ち向かう。
一方、俺はそんな彼女の後ろ姿を見守ることしかやる事がない。「何かあったら割って入る」という
(セーラー服で槍を片手に戦う美少女忍者とか……)
やっぱり、余計な事を考えてしまう。
しかも彩音は時折、自分自身にバフを掛けるために「巫女クラス」の「スキル:神楽」を舞う。以前も長尺の六尺棒を片手に舞っていたので、それがソード&スピアに変わっても「舞い」の勝手は同じらしい。
(しかも、元「ギャル・巫女」……すんごいのが出来たな)
そんな事を考えている俺の目の前で、
「次は……
彩音は一区切りつけて「神楽」スキルを使用し始める。
ちなみに、今日これまでは全体的な能力向上の「
「
その状態で、彩音は次の外灯の下で小骸穢に対して
「炎玉!」
を投げつける。すると、
――ゴウッ!
噴き出した炎は、先ほどまでよりも一回り大きく色も濃い。これは
「ああ、忍術の臨事即用って効果は霊力依存じゃん」
という事。俺は、彩音がそうやって自分のスキルの効果の確認も忘れない事に感心しつつ、
「もしかしたら40か45くらいを境に強くなるのかもな」
的な相槌を打つ。それで、
「そういえば、迅さんって今どんな感じ?」
連続で「炎玉」を投げて外灯1つ分の小骸穢(6匹くらい居た)を燃やし尽くした彩音が問いかけてくる。「どんな感じ?」とは、俺の能力値の話だろう。
「ああ、ええと――」
という事で、俺は彩音にステータス画面を見せる。
*******************
八神 迅 26歳 男性 Lv:17
クラス:退魔剣士 ★★★☆☆
身体障壁:245/245
法力:205/205
穢れポイント:0
状態:普通
浄化ポイント:837
能力ポイント:20
*******************
筋力 38(+2)
体力 35(+2)
敏捷 37(+2)
知力 34(+2)
霊力 47(+3)+10
神威 08
装備:
「8MGOODS」ジャケット・スラックス・ワイシャツ
須波羽奔・形代(攻撃力+50、対霊+50)
アームプロテクトホルダ
イヤーマウントアナライザ(EMA-VerⅡ.05)
ファントムタッチコントローラ(PTC-02)
田貫の脚絆(身体障壁+10、敏捷+1)
身体障壁 245(+40)
法力 205(+10)
クラススキル:
退魔剣士の心得★★★☆☆
退魔剣---*上位スキル「霊剣技」に統合
呪符術★★★☆☆
「破魔符」「鬼火符」「氷霊符」
単結界★★★
「
使鬼召喚★★★★☆
「蛍火」「神鳥」「小鬼」「エミ」
小者の心得★★★
陰陽学生の心得★★★
スキル:
鬼眼★★★☆☆
霊剣技★★☆☆☆
神人★☆☆☆☆
*******************
まぁ、俺の方は余り変化がない。今の
後は、
「あれ、鬼眼の習熟度が上がってるね」
彩音に指摘されて思い出したが、先日「鬼眼」の習熟度が上がったばかりだった。
「なにか、効果が増えたりした?」
「うん、暗視できるようになったかな?」
「へぇ……暗くてもバッチリ見える感じ?」
「そうそう、ちょっと色味の識別はあやふやになるけど、結構見えるよ」
「……ってことは……もしかして、見えてた?」
あっ、と思って彩音を見ると、真っ赤な顔で俺を睨んでいる。彼女が言う「見えてた?」が「何を」指しているのか、直感的に分かるので、
「そ、そんなこと――」
「もう、エッチ!」
この後、フルスイングで繰り出された
******************
「もういい。っていうか、アタシだけ見えてなかったのは不公平だから、今度から電気点けてヤル」
頭の中でどういう処理をしたのか良く分からないが、彩音は色々と吞み込んだ様子で決意を述べる。
(いやいや「ヤル」とか、ストレート過ぎるだろ)
敢えて突っ込まない俺は、一段ギアが上がった感じの彩音が次々と「小骸穢」を斃していくのを見守る。それで、
「あ、忍術の習熟度上がった!」
ある意味「今日の目標」だった「忍術の習熟度上げ」を達成。ちなみに星1つになった彩音の忍術スキルは
忍術★☆☆
―臨事即用
―煙遁術
となっている。
「けむり……なんて読むの?」
「『えん・とん・じゅつ』じゃないかな?」
「へぇ……」
言いつつ、彩音はスキル名を長押しする。すると、
――煙遁術:煙を使った目くらまし。逃げてヨシ、攻撃してヨシの優れモノ。ニンニン――
という、説明文が表示される。
「目くらましか……使ってみよう」
何事にも積極的な彩音は、直ぐに新しいスキルを試す。その結果、
「煙遁術!」
――ボフッ
スキルの使用と同時に彩音の足元から白く濃い煙が立ち上る。それは、
「やだ、これじゃアタシが前見えないじゃん!」
とのこと。結局、彩音は煙の中から飛び出してくる。それで、
「そうか、アタシに使っても意味がないか」
ということ。どうやらスキルを使う際にそういうイメージをしたようだ。なので、
「もう一回、煙遁術!」
今度は、3匹ほど固まっている小骸穢が足元から立ち上った煙に包まれる。ちなみに煙の中の様子は、
(一応、鬼眼で見えるのな)
「鬼眼」の効果で視る事が出来る。一方、煙の中の小骸穢3匹は彩音の姿を見失ったようで、鈍い動作ながら「オロオロ」している様子。そこへ彩音は
「炎玉!」
を投げ込む。
まぁ、八等の「小骸穢」相手ならば煙による目くらましが有っても無くても結果は同じ。ただ、
「もしかして、迅さん、煙の中見えてた?」
「ああ、視えてたよ」
「じゃぁ……これ、迅さんの援護に使えるね」
とのこと。
「なるほど……確かに、そうかも」
彩音の発想に素直に感心する俺。煙で視界を遮った状態でも、俺なら「鬼眼」で視ることが出来る。相手の視界を潰した上で「俺だけ視えてる」という有利な状況を作り出すことが出来そうだ。
「その内試してみよう」
「そうね……じゃぁ、そろそろ?」
「そうだな。お腹も空いたし」
区切りが良いので、俺と彩音はそのまま「八等穢界の主」の元へ向かう事にする。
ちなみに、この穢界の主は七等相当の「餓鬼」と「魍魎小鬼」6匹ほどのグループだったが、「神楽」と「忍術:煙遁術」を駆使した彩音が煙に巻かれた怪異に「炎玉」を投げ続けるというワンサイドゲームで終了した。
(その戦い方、えげつないだろ)
という感想は……まぁ、黙っておくことにした。
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