Episode05-05 文化祭準備委員会① 気になる委員
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文化祭の準備委員というものをやる事になった経緯に対して、私は色々と文句を言いたい。ただ、(ある意味当然だけど)私だけが文句を言いたいわけじゃない。他のクラスの準備委員だって、最初の頃はみんな「嫌々やってる感」がすごかった。今となっては、私も含めてみんなソコソコやる気を出しているけど、とにかく最初はそんな感じだった。
でもまぁ、仕方ない(迅さんの真似)。
だって考えてもみてほしい。これから10月末の文化祭当日まで、定期テストの期間を除いて毎週「月・水・金」の週3日、放課後に時間を取られるんだ。受験勉強をしている子にとっては時間の無駄に感じるだろうし、バイトをしている子にはシフトの都合でバイト先に迷惑をかけることになる。
私も平日の夕方~夜をメインに週3で入れていた「スーパーバリューショップ・与野店」のバイトシフトを週末に変更してもらう必要があった。店長は「助かる」って言っていたから、あまり迷惑じゃなかったかもしれないけど、私にとっては迷惑この上ない話だ。
お陰で週末は夕方のバイトの時間を気にした予定しか立てられなくなり、せっかく迅さんが(中古車だけど)車を買ったから、「あちこちドライブに行こう」と思っていたのに出来なくなってしまった。
実際、一昨日と昨日の土日は「穢界行き」を兼ねてショッピングモールとかアウトレットモール、家電量販店巡りだったし、その前の週末は大宮の「氷川神社」だった。
なんというか、思っていた感じとはちょっと違う事になっている。私としては、もうちょっと雰囲気の良いところへドライブとか……いっその事、お泊り旅行なんてのも……
(う~ん、お泊り旅行は……今でもそんな感じか?)
とにかく、思っていた感じとはちょっと違う展開になってしまっている。
それもこれも、みんな「準備委員」のせいだ。
ただ、準備委員になる経緯は腹の立つ感じだったけど、実際にやってみると「まぁ、高校生活最後だし?」という感じで結構
――彩音って、意外と真面目なんだよな――
ということ。
「意外と」とはどういう意味? と、ちょっと問い詰めたい気もするけど、まぁ、出会った頃が「
それに、クラスの出し物をくじ引きで決めた際、私はクラスの第1希望だった「
ただ、
とにかく、私はあの時、田代紗香が骨董品店の店先のワゴンから「それ」を取り上げた瞬間、直感的に「ダメっ」と思った。理由は不明だが、とにかく、「それをすぐに手放して!」 と思った。
もしも田代紗香が親しい友人なら……いや、最低でも挨拶を交わす程度の仲の相手なら、たぶん私は駆け寄って手を
だから、私は彼女の行動を見守る事しかできなかった……
(って、言い訳だよね。だって……相当怖かったから)
いや、自己弁護を外して本当の事を言えば、実際はこんな感じだ。
ちなみに、あの「小箱状のナニカ」について、迅さんも同様に「悪い物」だと直感したと。「鬼眼」で見たところ、赤黒いモヤモヤが纏わりついて見えたと話していたので、やっぱり
さらに迅さんは、あの後実家のお爺ちゃんに電話して聴いた話と合わせて、
――人を祟ったり呪ったりする「
と結論付けていた。それで私には
――なるべく関わるな、絶対に――
とのこと。「なるべく」なのか「絶対」なのか良く分からないが、とにかく「関わるな」と言った。
もちろん、私も同意見。あんな「感じの悪い物」に自分から積極的に絡んで行きたくない。
ただ、それはそうとしても、やっぱり「知ってしまった」以上、放置するのも気分が悪い。なので、あれからずっと、私は田代紗香と話す機会をうかがっていたのだが……
******************
「じゃぁ3年1組は旧校舎の理科室で『お化け屋敷』ということで――」
仕切り役の生徒会の子は、そう言うとホワイトボードに
――3-1 旧棟理科室 お化け屋敷――
と書く。
委員会は順調に進んでいて、今は「特殊教室」を使いたいクラスが希望を言っているが、旧校舎の方にある特殊教室を使いたいクラスは2つ3つ程度だったので、競争少なく3年1組が旧棟理科室をゲットしていた。
ちなみに、3年1組が田代紗香のクラスになるが、実は1組の準備委員は彼女から別の男子に交代になっている。その理由は、
(先週からずっと学校に来てないって……)
ということ。
つまり、田代紗香は「小箱状のナニカ」を購入した翌週の月曜日から登校してきていない。その理由を、彼女の代打として委員会に出てきた男子に訊いたところ、
――コロナだってさ……まったく、お陰でこっちはいい迷惑だよ――
と(ちょっとプリプリして)答えてくれた。ちなみに、その男子にもうちょっと詳しく田代紗香の事を聞くと
――根暗っていうか……教室でだれかと話している所はあんまり見たことないかな? 休み時間はいつも本を読んでるっぽい――
とのこと。
ちなみに1組は「大学進学」を目指す「進学クラス」だから、私の3組とはちょっと違うようで、休み時間に自習している子が多いみたい。その中でも田代紗香は
――友達? う~ん……どうだろう? 浮いてるっていうか、誰も相手にしない感じ? あ、でもイジメとかじゃないからな――
というように、目立たないものの、クラスでは「ちょっと浮いた」存在だった模様。
――文化祭の準備委員の決め方? 普通にくじ引きで決めたよ。出し物の希望もいくつか
の案に絞って、それを田代がくじ引きして「お化け屋敷」が第一希望になったんだけど……とにかく、くじ引きなんだから公平だろ? それなのに、イヤだからって仮病を使って――
そういう状況で現在に至るとのこと。
彼女が休んでいる理由は「仮病」と決め付けられているようだが、それはともかく、選ばれた経緯は「くじ引き」なので、(私なんかよりもずっと)公平な選ばれ方をしている。それに、文化祭の出し物も「くじ引き」で希望順をつけたらしい。
彼女が「感じの悪い物」を購入した事と、それからずっと学校を休んでいる事の2つを除けば、今の状況は極々普通、自然な成り行きのものだろう。
だけれども私は、
(本当に大丈夫なんだろうか?)
どうしても、そんな不安感が拭い去れなかった。
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