2-2 凛々奈のお仕事 "打ち合わせ"

 あの怖い人達に追いかけられてから3日後


「ここが待ち合わせの喫茶店よね・・・」


 あの後警察へ行って事情を話したがロクに相手をしてもらえず、パトロールを増やしますって事しかしてくれなかった。


 今は学校から帰る時はお母さんに迎えに来てもらっているけど、私の不安は消えることは無かった。


 そして昨日、友人のミカからウチの制服の女子に私の写真を見せて探し回ってる奴が居るって連絡がきた。


 このままだと本当にやばいと思った私はもう一度警察へ相談にいったが相変わらずの対応だった、けれど帰る時に若い婦人警官が一枚の名刺を渡してくれた。


「本当に見の危険を感じたらここに相談しなさい、きっと力になってくれるから」


 なんて言っていたが


 lastpalm という文字と電話番号だけが書かれている、胡散臭いと思ったが私は藁にもすがる思いで連絡した。


 そして今日その連絡相手と合うことになっている。


「電話に出たのは優しそうな声の女の人だったけど、合うのちょっと怖いなぁ」


(でもこのままだと、もっと怖い目に合うかもしれない!)


 私は勇気を振り絞り、店内に入った。


「いらっしゃいませ!何名様ですか?」


 営業スマイルでお姉さんが接客してくれる。


「あっ待ち合わせで、一番角の席にいる筈なんですけど・・・・」


「あー、はい あちらにお待ちですよ」


 案内された方へ進む、少し他の席と離れていて目立ちにくい席だった そこに一人座っている人物がいた。


 黒いジャージに灰色のキャスケット帽を被り大きなサングラスをした 凄い変な格好の女?の人だった。


「たくっ!よりにもよってなんで今日なのよ!今日はみーちゃんと水族館に行く約束だったのに!!ハルさんは別件で対応出来ないって言うしセンセは事務所でやる事があるってみーちゃんと留守番するってみーちゃん独り占めするしであーーもうなんで今日なのよ!!明日でいいでしょ明日で!!」


 なんか凄い一人でブツブツ言ってる!!しかもめちゃめちゃ貧乏ゆすりしてる!怖いっ!


この人に声を掛ける勇気は無いと帰ろうとした時だった。


「あ! あんたね!!依頼人!」


見つかってしまった。


「さっさと座んなさいよ!!こんな仕事バーッとやってガーってやってボコボコにしてさっさと終わらせてあげるから!」


 この人が待ち合わせの相手だと信じたくは無かったが間違いないみたいだった


「あっあの よろしくお願いします、警察の方に紹介してもらって連絡しました 吉田佳穂です・・・」


「ある程度状況は聞いてるわよ、念の為に一度あなたの方からも聞いておこうかしら?」


 クリームソーダを飲みながら淡々と続けてくる、

ん?この人サングラスで分かりにくかったけど私と同じ位の年の女の子だ。


「えっ!女の子!?」


「何に見えたってーのよ!!」


 怪しさ満天の格好で言う。


「ご、ごめんなさい サングラスでかくれてたので」


「もう!あっそういえば名乗っても無かったわ、悪かったわね」


『誰も助けてくれないと絶望している貴方に救いの手を! 私達が必ず貴方に平和をお返しします!

lastpalm! 白銀凛々奈です』 キラッ☆


 サングラスと帽子をとって挨拶してくれた、決めポーズも付けて。


「なんですか、それ」


「決め台詞よ、ちなみに私の独断で毎回内容は変わるわ」


「そ、そうなんですね」


 いまいちこの人のテンションが分からないと、混乱していると


「あー ギリギリセーフだったかー」


 凛々奈と名乗った女の子は何か目に入ったのか席から見える窓の外を見ている。


「どうかしました??」


「うーん なんでもない気にしないで で状況を教えてくれる?」


「はっはい」


 私はあの日から今日までの事を話した。


「おっけー、それじゃあ私の仕事はあなたを付け狙ってる奴らをボコって二度とあなたに関わらせないよう約束させる、そしてそいつらが持ってるあなたの写真を消す事 以上で大丈夫かしら?」


「そうですけど、凛々奈さんがやるんですか!?」


「ん?そうよ?まあ不安になるのも分かるけど」


 こんな女の子にそんな荒っぽい事させていいのかと心配になったがそんな気を他所に凛々奈さんは続けた。


「じゃあ最後にいくつかこちらから、まず貰った名刺は預かるわ」


 そう言って此方に手を伸ばす。


「あ、これですか?」


 婦警さんに貰った名刺を差し出された手に渡す。


「そうよ、そして私達の事は絶対に他言無用 平和な生活が戻ったらこの出来事は忘れて生きて行くこと」


 真面目な顔になって続ける。


「そして連絡に使った連絡先は消さなくてもいいけど他人に教えちゃ駄目、但し もしもあなたと同じようにどうしようもなくなっちゃってる人があなたの側にいた時、その時だけはその人に連絡先を紹介する事は許可するわ」


「分かった?約束出来る?」


「は、はい」


「ん、おっけー!じゃあ最後に質問」


「あなたはアイツらを殺せるなら殺したい?」


ゾクッ

 凛々奈さんの雰囲気が変わって刺すような視線で此方を見ている


「いえ!そんな!私にもう関わらなければそれでいいです!!」


 振り絞るように言う


「りょーかい!じゃあ今日中にお仕事済ませちゃうから安心してて!一応終わったら連絡が行くと思うから」


 元の雰囲気に戻った凛々奈さんは帽子とサングラスをつけ直す。


「あの!これってお金幾らかかるんですか!?」


気になっていた事を問いかける、無償でこんな事をしてくれるなんて話があるわけが無い。


「あんた今幾らもってる?」


「えっ!ごめんなさい、そんなには・・・」


財布の中には貯めていたお小遣いを引き出してきて数万円用意していただけだった。


「足りなかったら!バイトして払いますから!」


「じゃあここの支払いよろしく、まあまあ飲み食いしたからそれなりの金額になってると思うけど」


 トントンと机の隅にある伝票を叩いた。


「えっ!?それだけ!?」


「支払先は他にあるからいいのよ」


 フフンっと何故かドヤ顔をする凛々奈さん。


「あんたは安心して全部解決するのをまってりゃいいの、他に何かある?無ければ私は行くわよ」


 私はあの時、トラブルに巻き込まれた日の事を思い出す。


「あの、もしもあいつらの中にこの人が居たら もうわるい事はしないで、帰って来てって伝えて貰えますか」


 私はスマホで写真を見せる、数年前のユウキの写真


「えっ誰?彼氏?」


「違います!!幼馴染です!!高校に入る前位から疎遠になっちゃって、良くない人達と付き合ってるって噂は聞いてて、ユウキのお母さんが暫く帰って来てないって でも!」


「悪い奴じゃ!、ないんです!!」


 スマホを強く握りしめて訴える。


「知らなーい、それは私達の仕事とは関係ないわね」


 帰ってきたのはそんな冷たい返事だった、

肩を落としていると。


「まあ頭の片隅には置いといてあげる」


 そう言って凛々奈さんは立ち上がる。


「あっそうそう、あとパフェとパンケーキが来るから、あんた食べちゃっていいわよ」


 そう言い残し店から出ていってしまった。


「え、私もうお昼食べてきたんだけど・・・・」


 なんというか、マイペースを極めた様な人だった



「ありがとうごさいましたー」


 店員に見送られて店から出る。


「文句言いまくってたものの、ギリギリだったみたいね 今日来なきゃ危なかったかも」


 言いながら周りを見回す 少し離れた建物の影に柄の悪そうな男が二人、先程喫茶店の外から佳穂ちゃんの事を見ていた奴らだ、ほぼ間違いなく件の連中だろう。


「ま!丁度いいわ! ボコって事務所の場所とか聞いてきましょ!」


 ポキポキと指の骨を鳴らしながら凛々奈は男達の方へと歩いていった。


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