2-1 私達の日常

 ここは私達のお家兼、お仕事用の事務所

裏世界の荒事専門の解決屋"lastpalm《ラストパーム》"

町外れにある2階建ての普通の建物。


 一階が事務所で二階は私達の居住スペースになっている。


 そして私は白銀凛々奈、このlastpalmの看板娘で何でもササッと解決の

事務所のエース。ジャージ姿で来客用のソファーで寝転がっているのが私だ。


「だらだらするなら自分の部屋にしておけ」


 事務所の一番奥の偉そうな席に座って煙草を吸いながらパソコンをカタカタ弄っている人がこの事務所の所長で私のセンセ、神代唯牙。


「このソファーが一番落ち着くの!ていうかセンセ!みーちゃんいるから煙草は外で吸うって言ってたじゃん!」


「ん?ああそうだったな、ごめんね みいなちゃん」


 そういって立ち上がろうとする。


「わたしは大丈夫ですよ、気にしないでください!」


 机を挟んで私の反対側に行儀よく座っている女の子が笑顔で言う、この子は

花守みいな、1ヶ月前から一緒に暮らしている可愛い私の天使ちゃん。


「みーちゃぁあん!駄目だよセンセに近付いたら、煙草臭くなっちゃうよ〜」


 机を乗り越えてみーちゃんに抱きつく。


「わわっ!ちょっと!凛々奈さん!」


「おい、暴れて物壊すんじゃないぞ」


 そう言うが大して気にしていなさそうにセンセは珈琲を口にする、煙草はもう灰皿に捨てた様だ。


 一ヶ月前のあの時、モヤシゴム男がみーちゃんを襲う奴らがやって来るって言っていたけれど、今の所平和にのんびり私達は暮らしていた。


「あらあら、今日も楽しそうね〜あなた達」


 事務所の入口のドアが開き一人女性が入ってくる。


「はい、これさっき売ってた焼きたてのメロンパン」


「やったー!みーちゃん食べよたべよ!」


 このおっとり系のお姉さんはセンセの元相棒で今は情報屋をやっている白銀ハルさん。家にいろんな情報やお仕事の依頼を持ってきてくれる、あとお菓子も。


 ちなみに私と同じ名字だが別に血縁関係がある訳では無くて、

私がみーちゃんと同じくらいの年の頃にセンセと暮らし始めた時、

名字の無かった私にセンセが「面倒だから私と同じで神代でいいだろ」って名付けようとした時に私が「可愛くないから嫌! ハルさんのしろがねの方が可愛い!」

とゴネた結果だ。ちなみにその後三日間くらいセンセは機嫌が悪かった。


「はい、どうぞ みいなちゃんも はい」


「あ、ありがとう御座います、ハルさんお茶淹れてきますね」


「うふふ ありがとう」


 この二人はあの事件の後直ぐに出会ったがハルさんの溢れ出る優しさオーラによって一瞬で打ち解けていた。


「仕事か?ハル」


 センセは珈琲を机の上のコースターに乗せてハルさんに向き直る。


「そうね〜 とりあえず三件あるけれど、まずは、はい」


 そう言ってハルさんはメロンパンをセンセの口に突っ込んだ。


「もうすぐ三時になるし、お茶にしましょうか」


 センセはなんかフガフガ文句を言っていたが気にしないでおこう、みーちゃんの手伝いにいくか。


 


 そしてふわふわのメロンパンをお茶菓子に皆で午後のお茶を楽しんだ。



「おいしかったー!ありがとハルさん」


「ご馳走様でした!すっごい美味しかったです!」


 私達はハルさんが用意してくれたメロンパンと紅茶を満喫した。


「うふふ、喜んで貰えて良かったわ ユイは?」


「なかなかだった、だがお前が来るたびに食べ物を持ってきているがこのままだとコイツらブクブク太るぞ」


 ハルさんはセンセの事をユイって呼ぶ、なんか長年の相棒って感じでかっこいい。


「ハルさんのお菓子は優しさで出来てるからカロリー0なんだよ?知らなかったの?センセ」


「そうなんですか!じゃあいっぱい食べても大丈夫なんですね!」


 隣でみーちゃんが目を輝かせる。


「適当な事を言うな、で、依頼は?」


「そうねぇ、一軒目は怖い人達に追われています、助けて下さい ですって、原因は借金で推しのホストに貢ぎすぎたせいみたいね」


「知らん、次」


「次はねぇ 怪しいバイトに手を出したら危ないお薬を運ぶ仕事だったみたいで 

その依頼者達と関係を切りたい、このままだといつか自分も捕まっちゃう! みたいな?」


「あっそ、次」


「凛々奈さん、お仕事・・・助けてあげないんですか?」


 隣でちょこんと座っているみーちゃんが問いかけてくる。


「そうねー、私達は誰でも助けるって訳でもなくててね 今ハルさんが言ってたみたいな自業自得な事柄とか普通に警察なりなんなりに対応できる依頼は受けないのよね」


「じゃあどういうお仕事をするんですか?」


「何も悪い事をしていない人に裏の人間が理不尽に力を振りかざしている時は必ず助けてあげてるね、

まあでも助けるか助けないかは私達の主観で決めてる 私達は私達の意思で悪人を選んで仕事するの」


「もちろん私達の判断が全部正しいとは思わないけれど、法律でも裁くことが出来ない悪い奴らは沢山いるし」


(いつか、報いを受けるとしても)


「ごめんね、難しかったね」


 ぽかーんとしているみーちゃんに取り繕う。


「後はあれだね、私とかこの前の奴らみたいに特別な武器とか力を持った奴らが絡む仕事はほぼ受けるかな、私達じゃないと解決出来ないだろうし」


「それじゃあ、またあんな危ない人達と戦うかもしれないんですか? また怪我、しちゃいますよ!」


「ふふっ心配してくれてありがと でも大丈夫、私達強いから」


「でも、」


「優しいねーみーちゃぁん」


 少女を抱き上げ膝の上に乗せる。


「こうしてみーちゃん抱っこすれば元気100倍だから大丈夫よー!」


 ぎゅーと強く抱きしめる


「うぅ、なんか誤魔化された気がします」


 そんなこんなでみーちゃんと喋っていると、センセがこちらへ声を掛けてくる。


「おい、受けるぞ依頼」


「あれ?いいのあったんだ、センセ」


 どうやら三つ目の案件は私達向きの内容だったらしい。


「ああ、特に厄介な相手と戦闘になるような事はない、簡単な奴だけどな」


「女子高生の子からの依頼でね、内容は・・・


 うーんっ!久々のお仕事だ ちゃちゃっと終わらせてみーちゃんにお土産買って帰ろっと。


 私は腕を伸ばしながらそんな事を思った。

 

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