第24話 姫からのお願い
俺は今日もレイナックの見習い兵士として、小屋の掃除をしていた。
シュガーだけでなくレイナックまでもが一緒になって、床を掃いている。
最初は俺も、まさか掃除まで任務に含まれているとは思っていなかった。
しかし、姫が自ら掃除をしているのだ。
なぜ護衛がこんなことをせねばならんのか、なんて不満を漏らすやつは一人もいなかった。
もちろん護衛が最優先の任務とされてはいるが、他にも洗濯物や料理の手伝いといったこともやっている。
そしてご飯はレイナックと一緒に、テーブルを囲って食べるのだ。
これは王族として扱われていないが故に、何をしようがほったらかし状態ということでもある。
しがらみにとらわれない自由気ままな生活に見えるが、城の外に出ることは基本的に許可されていない。
さらにレイナックは姉である第二王女の言いつけで、召使のようなことまでさせられているのだ。
この状況、どうにかできないものか。
レイナックは不満そうな顔を一切見せないが、彼女にはもっと幸せになってもらわねば。
そんなことを考えながら窓を拭いていたとき、レイナックが側にやってきた。
一緒に窓を拭きながら、彼女が声をかける。
「タロウさん、いつもお掃除を手伝っていただき、ありがとうございます」
「いえ。それよりも姫こそ、掃除なんて俺たちに任せてもらえればと思うのですけど」
「えへ。みなさんと一緒にお掃除するのが楽しくて」
そう言って向ける笑顔に、ウソは全くないように見えた。
第二王女の元へ向かうときも、レイナックはどこか嬉しそうだ。
どうにかしたいとも思うが、とりあえずベスケットの件も上手く回避できたし、この笑顔が続くうちはゆっくり対策を練っていくか。
「あ、あの。タロウさん、次の休日はお暇ですか?」
レイナックが、急にそのようなことを聞いてきた。
少し頬が赤くてもじもじしているようだが、これにはどのような意味があるのか。
「よ、よろしければ……お買い物をご一緒していただけませんか?」
魔族にはあまりない風習だが、どうやらそれは人間の世界でいうところのデートというものではないか。
レイナックと二人で歩くわけか。
想像すると、顔が熱くなってきてしまった。すごく嬉しい申し出だ。
「もちろんです! 姫とご一緒とは、ありがたき幸せ! では、城をこっそり抜け出す算段を立てましょう!」
「いえ、それだとタロウさんまで怒られちゃいます。ちゃんとお姉さまに許可をいただいてきますので」
お姉さまからと聞いて、少々不安になる。
「あの……。お姉さまというと、いつも姫を呼びつけている第二王女のことですか?」
「そうですけど」
俺の問いに、彼女が首をかしげながら答える。
「正直、許可なんて出してくれるんですかね」
「大丈夫です! お姉さまは、とっても優しい方なんですよ」
お日様のように明るい笑顔で言ってるが、レイナックをこき使っているような女だぞ。
とてもそうは思えない。
いや、もしかして召使のようにこき使っているというのは呼び出す名目で、実はレイナックに優しくしている。
そんなツンデレお姉さんなのでは。
優しいから大丈夫だとレイナック自身が言ってるわけだし、ここは信じてみるか。
一緒にお買い物。
どういう行動なのか。
並んで歩くのは確定として、何かを買うわけか。
いまいち何をするのか想像できない部分もあるが。
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