009

「私さ、京坂がユーバーのバイトで家にきたとき、かなりラフな格好してたんだけど、京坂ってば……私の谷間をチラ見さえしなかったんだよ」


「それをいうなら、アタシなんかカラオケでわざとおっぱい押し付けてたのに、無反応だったしぃ」


「わたしと口を利いた男子は大抵、無言で逃げ出していく。だから京坂くんみたいな人もいるって、知れてよかった。それと、司の行為はグレーだから気を付けた方がいい」


 三人は、つい最近の思い出話に花を咲かせる。


「司と桜子はさ、京坂のことが好きなわけ?」


「ん~、さっき千景もいってたじゃん? 好きとかそういうんじゃないって。アタシもそこは同意でさ、おけいはんってなんかこう、なんかこうさ」


「男の子として決定的なものが足りない」


「ソレだ! 男らしさ的な?」


「それが京坂のイイところでもあるんじゃないかな?」


「ちちち、プラスアルファっていうん? 例えばさ、おけいはんみたいな子が、グイグイ来てくれたらかなりのギャップ萌えじゃね?」


「司もたまには鋭いとこをつく」


「司、それいいね。すごくイイ。想像したら、ちょっと鼻血出そうになっちゃった」


「このエロ娘め」


「オタク女子の悪い見本」


「自覚はあるよ。……これ以上は倫理的によくないってこともわかってるつもり」


「ほほう。さてはおけいはんへの罪悪感から、キノコヘッドの提案をOKしたとか?」


「半分はそう。もう半分は本音かな。京坂に心を揺らされたんだよ……。お金のためじゃないって言い切った、あの真剣な表情にね。私が質問したときも間髪容れずに答えてた。妹さんのためって」


「土曜の件。さっき、京坂くんから連絡があった」


「んー、どういうこと? 桜子はいつの間に京坂と連絡先を交換したの?」


「アタシも交換シたけど、千景はしなかったん?」


 桜子と司は、スマホ画面を千景に見えるように向ける。


「ホントにしてるし。……交換するならするでさ、私も誘ってくれればよかったのに」


「フツーに聞けばよかったくね? 待ち合わせ場所とかも決めなきゃだし」


「千景はそういうところ抜けがち」


「そうかもね。そうじゃないかもしれないけど」


「まま、そう、むくれんなし。あ、そだ。アタシがおけいはんに千景にもLIENリアンのIDを教えていいか聞いてあげよっか?」


 司はニヤリと笑い、からかうような口調でそう問いかける。


「べつに……いい。自分で聞くから」


 すねた様子で、プイッと顔を背ける千景。


 司と桜子は顔を見合わせると、クスッと肩を竦めるのであった。




あとがき

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お読みいただきありがとうございます。

下記は本書のページの告知となります。

https://kakuyomu.jp/publication/entry/2024062002

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