第24話 Extra 小野司
司視点
私は、おけいはんに手を引かれて寝室へやってきた。
バカみたいにドキドキする。おけいはんとこうして二人きりになるのは久しぶりだったからかもしれない。ベッドの上に座らせられると同時に、おけいはんが私を抱きしめてきた。
ご機嫌取りのハグはなんかヤだし、ふんっとそっぽを向いておく。そんな、ちょっとした抵抗を試みるも、おけいはんに更に強く抱き締められるともうダメ。軽く押し倒される。
まあでも……最初からこうなることを望んでいたから、身を委ねることにする。でも、でも……
「む、ムード、ゼロか!」
イチャイチャチュッチュしとけば私の機嫌が直ると思っているのだろう。おけいはんの悪い癖だ。
ま、実際そうなんだけど……そういう風に軽く扱われたくないのが女心というものなのだ。
メンドーな女だという自覚はある。素直になれない自分が悪いってことも理解してるけど、わかっていてもどうにもできない衝動があるのだ。
「えーっと。その髪色、すごく似合ってるね」
「あんがと。……嬉しいけど、さっきもソレ聞いた」
「今日はずっと……つーちゃんのことばっか見てた。可愛い。最高に」
「う、うそつき。私のこと全然見てなかったじゃんか、おけいはん、ずっと千景と桜子のこと見てた」
「そんなことないよ。つーちゃんのこと、ずっと見てた」
ずるい。おけいはんは……ずるい。
なにがずるいってもう色々。
中世的な顔立ちで整った容貌だと思うし(個人的には超タイプ……!)、愚痴とか不満をこぼしても嫌な顔をせずに笑顔で受け止めてくれる。下心のある優しさじゃない。なんというか、私がどれだけ癇癪を起こしてもそっと優しく包み込んでくれるような安心感があるのだ。
そのくせ最近はちょっと女慣れしてきているというか、いや私と千景と桜子の扱いに慣れてきたんだろうけど、真っすぐな言葉でアプローチしてくるようになった。
こっちの気恥ずかしさなんてまるで度外視だ。
可愛くて、べらぼうに優しくて、ちゃんと『男の子』してる男の子。
スパダリの定義は高身長、高学歴、高収入だとか言われてるけど、それって養われたい女子の思考であって、私みたいに『好きな男の子を養いたい』と思ってる女にとっては、おけいはんぐらいがちょうどいい。
なんというか、そのちょうどいいを全面に押し出してくる感じが、おけいはんのズルさなのだ。
私は弱い。おけいはんにストレートに褒められると愛されてるという自覚が持てて、頭の中が幸せ成分で満たされてしまうから。
我ながらちょろい女だなぁとは思うけど……仕方がないとも思うのだ。おけいはんだから仕方がないって。
そこまで自覚しておきながら、どうして怒りをぶつけてしまうのか。
単純だ。嫉妬してるのだ。千景と桜子とは長い付き合いだし大切だと思っている。でも、二人とイチャイチャしてるおけいはんはあまり見たくない。
前はそうでもなかったけど、最近、特にそう感じることが多い。
そんな感じであーだこーだとぐるぐる思考を巡らせていると、おもむろにおけいはんの手が服の中に侵入してきた。私は思わず体をよじったけれど、強く拒んだりその手を払いのけたりはしなかった。ポカポカした手でお腹を撫でられるのは好きだ。あったかくて、心地が良い。
「つーちゃん、これ好きだよね」
「まー……嫌いじゃないけど」
「……あの、つーちゃん。今日はどこまで?」
「どこまでって、別に私は朝までコースでもいいけど。てか、おけいはんの好きにしなよ……」
「わ、わかった」
おけいはんの手がどんどん上昇してくる。胸部に辿り着いたその手は、メビウスの輪を描くように背中へと回り、ブラのホックを簡単に外してきた。ダメだ。期待してしまっている。お腹の奥の方がキュンとなる……もう、こうなると抵抗は無駄だ。
なんてことはない、私はいつも通りおけいはんに体を委ねることにした。
※
僕はつーちゃんの唇に自分のそれを重ねながら、小ぶりな果実に指を這わせる。
その慎ましくも柔らかな膨らみの先端には、グミのようなコリコリとした突起が。乳房と乳首を万遍なく撫でると、つーちゃんはびくんびくんと肩を跳ね上げた。
今日は感度が良い。
体調の問題なのかはたまた乗り気なのか、反応から鑑みるに後者が妥当だと思われる。
「今日のつーちゃんは……ちょっとイジワルだったから、お仕置き」
つーちゃんはノリノリの時でも、受け身になることが多い。ので、最近はのっけからオフェンス役を買うようにしている。
「お、おしおき? どんな?」
「つーちゃんが自分で決めてよ。千景と桜子にしないことでもいいよ」
「ふ、二人と何してるとか、知らないし。……四人でするときは、普通だし」
「それもそうか……そう言えばつーちゃんって耳弱かったよね?」
「え、うん」
つーちゃんの耳に口許を寄せて攻め立てると、マンゴープリンみたいな甘い吐息が寝室に充満し始めた。金の髪があちこちに揺れる
「ひう……それ……だめ……」
(か、可愛い……)
お腹の奥が熱くなるのを感じながら、僕はそのまま耳を攻め続ける。ほどなくして、つーちゃんは息もたえだえになっていた。
スカートをまくってみる。無地のグレーのパンツ。盛り上がったクロッチ部分にうっすらと染みのようなものが出来ている。
「つーちゃん……脱がせるよ?」
「や、だめ……今は恥ずかしいし……」
「
つーちゃんの名前を呼び捨てしたのは初めてだ。
ドグン、と心臓が跳ねる。やばい。下の名前を呼ぶのって……めちゃくちゃ緊張する。
反応は予想以上に上々だった。
つーちゃんはほんの一瞬だけ目を丸くしそれからすぐにトマトのように頬を赤らめて、「うん」とお姫様のように頷いた。
その破壊力は凄まじく、僕は全力のカウンターをお見舞いされた気分だった。
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