家庭教師はこれからも。



「こんな感じでいいですか?」

「うん、ありがとう」



 二人がかりで抑えていた扉を代わりに抑えてもらうため、近くにあった謎の石膏像(制作者:矢骨)にご助力願い、テールさんと二人がかりで移動させました。

 これで扉の金具が取れたとしても多少は持つことでしょう。

 そう考えていたところで、


『ここを開け……ん? なんか変だな?』

『逃げ場……叩いた時の感覚が変わりやしたね?』

『まあ金持ちの家の扉だからな。叩いてたら材質も変わるんだろ』

『流石兄貴、慧眼ですね』


 扉の向こうからそんな会話が聞こえてきました。


「お金持ちの扉にどんなイメージを持っているのかしら。突然光ることはあっても材質が変わるなんてそうそうないと思うのだけれど」

「光るのもそうそうないと思いますけどね?」


 そうなのかしら。

 まあそれはともかく、目当ての物を探しましょう。

 えーっと、たしかこの空き部屋にはアレがあったはず。

 そんなことを脳内で呟きつつ、部屋の隅にあるタンスの前に移動。引き出しを上から順番に開けていきます。


「ん、あったわ」

「それは……サングラスと、ヘッドホン?」


 テールさんの言う通り、私が手にしているのは何の変哲もないサングラス。そしてもう一つはヘッドホン……ではなく、防音用イヤーマフです。


「じゃあテールさん、着けておいて」

「あ、はい……うわ暗っ!?」

「特別製だもの。ほら、そっちも耳に」


 黒々としたレンズは強い遮光効果を持っていて、イヤーマフも高い遮音性能を誇る特別製です。

 テールさんがレンズの暗さに驚いている横で私も装着します。おっと本当に暗い。

 これで準備は完了。あとは……矢骨の方だけれど―――。



 ―――ガタンッ!



 と、そうこうしているうちに扉から異音がしました。

 どうやら金具に限界が来てしまったようです。しかし扉が開くことはなく、像がつっかえ棒の役割を果たしてくれています。……あと少しくらいは持ちそうですね。


「こ、ここからどうするんですか?」

「とにかくそれを着けて耳を塞いで。そろそろだと思うから―――」


 流石にテールさんも焦ったのか、心配そうに声を掛けてきます。サングラスを掛けたままなのが少しシュールですね。

 そんな状況に少し笑いが込み上げそうになりつつ、二人揃ってイヤーカフを装備しました。その瞬間―――




 ―――ズドォォッッッッ!!!!!




 ―――遮音を貫く程の爆音と共に、辺り一面が眩い光に包まれました。






「―――よいしょっと……作戦通りね」


 金具の外れた扉を退けて廊下の様子を確認しつつ、呟きました。

 目の前には床に伏した男性が二人。先程まで扉を叩いていた人達が白目をむいて伸びています。


「な、なんだったんですか今の爆発音……!?」


 私に続くようにテールさんが廊下に飛び出してきました。

 あ、サングラスとイヤーマフを外してますね。私も外しておきましょう。


「あら、案外察しが悪いのね。さっきの音と光、貴女も体験済みのはずだけれど」

「体験済み……?」

「矢骨のドジっ子具合については今朝説明したでしょう?」

「えっ…………まさか」

「ええ、さっきの音と光もその一つよ」


 簡潔に説明を終えると、どういうわけかテールさんが固まってしまいました。

 どうしたのでしょう。分かりやすく纏めたつもりだったのですが……説明を省きすぎたのでしょうか。


「ええっと……ほら、矢骨のドジはいろんなものに干渉しちゃうから。だからこの家そのものも例外ではないというか……一日の頻度や今回の事態からして、あのくらいのタイミングで起こりえるのが予測できたというか、ね?」

「あ、いや、別に詳細を知りたいわけでは……今の話からして訊きたいことは沢山ありますけど……」

「人体に影響はないから安心して。一般的な閃光手榴弾スタングレネードの2、3倍程度の威力しかないのよ?」

「もうこの家って建築じゃなくて兵器なのでは……」


 む、失礼な。

 専属執事が光源発生音響兵器のようなものを日時量産しているだけであって、この家自体は何の変哲もないちょっと大きいだけの一般的家屋ですよ。まあ家具は爆発したり発光したりしますけど。


 ―――ズルッ……ズズッ……。


 そんな会話をしていると、廊下の奥から何かを引きずるような音が聞こえてきました。

 不穏な物音に二人で警戒していると……



「―――お二人とも、ご無事ですか?」



 廊下の角から、見慣れた顔がひょっこりと出てきました。

 話題に上がっていた専属執事、矢骨です。


「矢骨さん! 無事だったんですね!」

「お二人もお怪我がないようで安心しました」

「ええ。……ところで矢骨、その引きずっているものは何かしら?」


 お互いの無事を確認して安堵したところで、矢骨の手元を指さしました。

 何か縄のようなものを持っていますが、これは……先程矢骨が縛られていたものでしょうか。曲がり角の先に繋がっているようですが……。


「失礼しました。こちら、捕らえた修理業者の皆様です」


 彼女がそう言ってぐい、と縄を引っ張ると、簀巻きにされた屈強な男達が数珠つなぎのようなていでズルズルと引きずられて出てきました。


「えっ……これ、矢骨さんが?」

「はい。あとは其方に倒れているお二人を繋げば全員かと」

「流石ね」

「お褒めにあずかり光栄です」


 ふ、と私が笑みを溢すと矢骨は恭しく頭を下げ、テキパキと扉を叩いていた男達を縄に繋いでいきます。


「……やけに手慣れてませんか?」

「ここに強盗が押し入る度に対応していますので、後片付けも慣れたものです。テールさん、この方達を玄関までお運びしますので、手伝っていただけますか?」

「あ、はい……はい?」

「ありがとうございます。ではあちらの最後尾を―――」


 矢骨は困惑しているテールさんを巻き込んで後片付けを続けます。

 ……あ、強盗が発光してしまいました。

 数珠繋ぎなこともあって冬場のイルミネーションのようですね、なんて考えながら私も二人の後をついて行きました。






 それから到着した警察の方々にイルミネーションじみた強盗の方々をお渡しして、お話をしました。

 何度も同じような事が起きているので、最近となっては顔馴染みとも言えそうなほど顔を突き合わせた仲の警官さん達も慣れた形で事は進んでいきます。


「―――それから、本来の修繕業者もこちらで保護しておりますので、また後日連絡があるかと思います。……それでは、我々はこれで」


『ありがとうございました』


 担当の警察官さんに三人揃って玄関先で頭を下げ、見送ります。

 ふう。この作業も慣れてきたものですが、やはり長時間の拘束は疲れますね。


「つ、疲れました……」


 隣でテールさんがそう溢し、脱力して壁に寄りかかりました。

 取り調べの最中の様子からして彼女は慣れていないようでしたし、余計に疲れてしまったのかもしれません。


「とんだ初日になったわね。お疲れ様」

「……これ、毎日続くとかじゃないです、よね?」

「どうかしら」


 私が笑ってみせると、彼女は顔をしかめて固まってしまいました。

 その顔が可笑しくて、「冗談よ」と笑うと、「冗談に聞こえません」と返されてしまいました。

 こんなことが毎日起きるなんてとんでもない。せいぜい月に一回程度です。


「……もうすっかり夜ね。早く中に入りましょう」


 見上げた空はすっかり暗く落ち込んだ色合いです。

 家の中に入ると、「すぐに夕食をご用意いたします」と矢骨が言ってくれました。


「そうね、じゃあ―――」

「あ、あの……矢骨さん、今日は疲れてると思うんです。なのでお二人さえ良ければ、私に作らせてもらえませんか?」


 私の返事を遮るようなテールさんの提案。

 言葉を遮ったことにも気が付いていないような、焦りを含んだ表情を浮かべています。

 彼女はきっと今日のゴタゴタの中、特に働いた矢骨の身を案じているのでしょう。


「……分かったわ。矢骨、貴女はお風呂の準備をお願い」

「はい。ではテールさん、よろしくお願いいたします」

「はい! あ、でもキッチンが爆発してるんでした。どうしましょう……」

「心配ないわ。二階にも食堂と厨房はあるし、食材や調味料も他の場所にあるから。一緒に行きましょう」

「お金持ちって凄い」


 矢骨のトラブルを見越して色々と対策は施してありますからね。このくらいは当然です。



 それから移動して、第二食堂。

 元はこの屋敷で仕えていた人達のための場所でしたが、今でも掃除やメンテナンスをしているので問題なく使えるようになっています。

 ……というか、矢骨がよくメインキッチンを爆発させるのでよく使っているからこちらもメインキッチンになりつつあるのだけれど。


「純恋さん、なぜ壁際を見つめてるんですか?」

「いえ、なんでもないわ」

「お、お疲れでしたら言ってくださいね……?」

「大丈夫、ありがとう。それじゃ、色々説明するわね―――」


 いけないいけない。矢骨の爆発した数々を思い出している場合ではありませんでした。


 それから頭を切り替え、テールさんに鍋等の調理器具や調味料の位置を教えると、彼女はすぐさま作業に取り掛かりました。


「何を作るの?」

「食材が色々ありましたので……アイントプフ、野菜スープを中心に色々作ろうかと」


 アイン……というと、ドイツの料理でしたか。たしかポトフに似たものだったような。


 そんな献立確認から待つこと数分後。

 テールさんは鍋の様子を見つつ、他のおかずも並行して作っていき、キッチン内が良い香りで包まれてきました。


「あの、テールさん」

「あ、はい! 何かお嫌いな物でもありましたか?」

「いえ、好き嫌いは特にないから大丈夫よ。それより……料理、かなり手馴れているのね」


 ただ待っているのも手持ち無沙汰、ということで調理している彼女の後ろに立って作業工程を見ていたのですが……その動きは相当慣れている人のものでした。

 矢骨は勿論私も料理はしますが、テールさんは無駄のない動きであっという間に料理を完成させてしまいました。


「実は実家がしがない料理店でして。よく手伝ってたんですよ」

「なるほど、どおりで」

「はい。だからこうやって料理してると、ちょっと落ち着きます」

「ふむ。……貴女、住込みの料理人をしてみない?」

「既に家庭教師なんですけど……」

「そうだったわね」


 私がわざとらしく言うと、彼女はクスッと吹き出しました。


 その素朴な笑顔を見て、今日の彼女が浮かべた表情の数々が頭の中に過ぎります。

 笑顔、笑顔、少し怒ったような呆れた顔。震えながら強がる顔に、安堵したような笑顔。そしてたった今見せた、穏やかな笑み。

 ……どうしてでしょう? 考えてみれば今日は特に彼女の顔をよく見ていた気がしますね。


「……あの、純恋さん」

「っと、何かしら?」


 浮かんだ疑問を舌の上で転がしながら盛り付け用の大皿やスープ皿を食器棚から出していると、テールさんが口を開きました。


「実は私、悩んでたんです。吊り橋効果の話をした時に少し、考えたことがあって」


 悩み、ですか。

 鍋から皿へスープを注ぎながら話す彼女の声は少し低めで真剣そのもの。隣を見れば、その顔から微笑みは消えていました。


「その、昨日は落ちた時の恐怖や知らない場所で目覚めた時の混乱もあったんじゃないかって考えてしまって。純恋さんに一目惚れしたっていうのも、本当は吊り橋効果のような胸の高鳴りから来たものだったんじゃないかって思ったんです」


 ……なるほど。

 そう言われてみれば、テールさんの視点だとそう考えてもおかしくありませんね。というか、あの告白も気が動転してのものと考えた方が納得がいく気さえします。


 吊り橋効果。恐怖心からくる一時的な気の迷い。

 でも、心拍は?

 今日は朝から何度もテールさんの胸が高鳴っているのを確認しました。その時の態度だって……いえ、あれも考えてみれば簡単な事ですね。

 どの状況も状況でしたし、戸惑いや焦りなどから来る鼓動だったのかもしれません。

 勘違い。そう思うと、なんだか残念ですね。


 ……? 何故、私は残念だと思ったのでしょう?

 ああ、そうか。




 私は彼女が離れていくかもしれないのが、怖いのか。




「……そう、ね」


 テールさんの言葉に辛うじて返事をしました。

 彼女が自分の勘違いに気が付いた今、家庭教師を続ける義理はありません。

 家の修繕費用についても、仮に彼女が投げ出したいと言えばこちらはそれを受け入れますし、何の問題もない。晴れて自由の身です。


 ……これでまた、矢骨と二人きりね。


 ふと、両親が亡くなった時のことを思い出しました。

 勤めていた従業員は莫大な資産に目の色を変えて私に媚びるようになり、それが堪らなく不快で……全員を解雇したのです。あの時残ったのは矢骨だけで、二人きりになった時のことは……あまり思い出したくないですね。


 ……お金なんて見ずに、隣に居てくれるだけで良かったのに。



「……純恋さん? 大丈夫ですか?」

「っ、なんでもないわ。……続けて」


 つい過去を思い出して他所へと背けた私の顔をテールさんが覗き込んできました。

 そんな彼女を手で制止しながら、話の続きを促します。


 ……覚悟はできている。だから、大丈夫。

 …………大丈夫、よ。


「あ、それでですね。今料理人としても誘われたじゃないですか。それで気づいたんです―――




 ―――やっぱり私、純恋さんのことが好きなんだって!」




「…………うん?」


 ……なんですって?

 テールさんの華やぐような笑顔と声に、私は困惑してしまいました。


「あの、テールさん? 今のお話でどうしてその結論に?」

「え、だって私純恋さんのことが好きですし」

「ほぁ」


 あっけからんと言い放たれた彼女の言葉に、いつかと同じように私の口から変な鳴き声が出ました。

 あ、頭がついていきません。彼女は何を言っているのでしょう。


「あの、テールさん。もう少し詳しくお願いできるかしら?」

「あ、すいません。えっと……吊り橋効果ってあくまでもきっかけじゃないですか。後から気持ちが冷めていくことはあっても、その気持ちが続くのならそれはもう本物の恋だと思うんです」

「……貴女は、それが続いていると?」

「はい!」


 あら元気な返事。

 いえ、感心している場合ではなく。


「それはまた……情熱的ね。続いている理由を訊いても?」

「えー……まあそうなりますよね。……その、顔をですね」

「顔?」

「はい。今日一日一緒にいて、ずっと純恋さんの顔を見ていました」


 私の顔を?

 そんなに面白いものだったのでしょうか。


「ずっと近くにいたのもあるんでしょうけど、今日は純恋さんの顔ばかり見ていて、頭の中でも浮かべて。純恋さんは表情の変化が少ないですけど、よく見ると色んな顔をしているのが分かって、それが面白くて……ドキドキしたんです。今だって、貴女の色んな顔を思い浮かべてるんですよ」


 ……どこかで聞いたような、考えたような話ですね。

 話しながら盛り付けた料理を一緒に運ぶテールさんの背中を無言で見ていると、彼女は「ふふっ」と楽しそうに笑い声を上げて続けます。


「きっと、ふとした時にその人の顔を思い浮かべるっていうのが恋なんじゃないかなぁ、って思うんです。だから私、やっぱり純恋さんが好きなんだーって。それにさっきまた誘われた時、料理人でも家庭教師でも私は……純恋さんの隣にいられたらそれでいいんだって思っちゃいましたから」



 ―――隣に居てくれるだけで良かったのに。



 私の考えに答えるような、そんな彼女の言葉が胸に溶け込みました。


「……ふふ」


 思わず笑いが零れてしまいました。

 まさかそんな風に言ってくれるなんて、思ってもいませんでしたから。


「純恋さん?」

「いえ……ありがとう。これからもよろしくね?」

「あ、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」


 料理をテーブルに置き、あらためてお互いに挨拶を交わしました。

 それから料理とテーブルを挟んで挨拶をしているこの状況がおかしかったのか、テールさんはクスクスと笑いだし、そんな彼女につられて私の頬も少しだけ緩んでしまいます。


「……それにしても、矢骨さん遅いですね?」


 一安心、そして一段落といったところでテールさんがそう言いました。

 言われてみればたしかに遅い気がしますね……。


「……でも爆発音は聞こえていないし、大丈夫よ」

「判断基準そこなんですね」

「まあ、きっとすぐに来るでしょう。ほら、他も並べるわよ」

「あ、はい!」


 矢骨のことは気になりますが、それよりも先に夕食です。

 今日は色々ありすぎて朝食から何も食べていませんでしたからね。人間の三大欲求の一つには敵いません。


 というわけで気を取り直して、盛り付けた料理を引き続き並べ始めました。

 その傍らで、テールさんの話した内容が頭の中で走り回ります。



『きっと、ふとした時にその人の顔を思い浮かべるっていうのが恋なんじゃないかなぁ、って思うんです』



 そういうことなら、それなら……私も。

 テールさんの色んな顔を思い浮かべていた、私はもしかして―――




 ―――ズドォォオンッッ!!




 ……私の思考を遮るように、爆発音が聞こえました。

 それからすぐに食堂の扉が開かれ、先程話題に上がったばかりの専属執事、矢骨が立っていました。


「お二人とも、お騒がせして申し訳ございません。バスタブにお湯を入れていたらお湯が爆発してしまいました」

「お湯の方が!?」


 テールさんは何を驚いているのでしょう。

 矢骨の手にかかれば大概の物体は爆発するのです。今更ではないかしら。


「他に被害状況は?」

「バスタブが虹色に発光しています。それから脱衣所の籠が自立稼働を……このように」


 彼女がそう言って掌を向けた先、足元には二本足の生えた籠がガニ股でヒョコヒョコと歩いているではありませんか。

 ……素早くないエリマキトカゲのようね。


「ふふ、もう……うっかりなんだから」

「ふふ、お恥ずかしい限りです」

「待ってください。笑い合っているところ申し訳ないんですが理解が追い付きません」


 頭が痛いと言わんばかりに額に手を当てるテールさんは苦悶の表情を浮かべています。

 もう、朝にも見たはずなのに……早く慣れて貰わないと。


「じゃあ、行きましょうか」

「えっ?」

「承知しました。お供致します」

「ええ。ほら、テールさんも一緒に」

「え、えっ……あの、何処に?」

「勿論、面白そ……矢骨のドジっ子に早く慣れてもらうためにもバスタブを見に行くのよ」

「今面白そうって言いませんでした?」


 だって浴場が変な事になるのは珍しいんだもの。普段お風呂を用意しているのは私ですし。


「まあなんでもいいじゃない。行きましょう」

「え、あの……料理は!?」

「もう少し後で、ね。矢骨、温めておいて」

「承知しました」

「待ってください承知しないでください料理が変になります!」


 変に……いやまあそうかもしれませんが。

 ともかく、料理は矢骨に任せてテールさんの手を引いて食堂を出ました。


「テールさん」

「な、なんですか?」




「これからも色々、教えてね?」




 ……私のこの気持ちが何なのか、今はまだ分かりません。

 それでも一つ、確かなことは―――





 ―――彼女にはまだまだ教えてもらうことがある、ということですね。





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