第2話 魔磁砲ーマジキャノンー

「痛ったー!」

「なんでお前は少し上から落ちてんだ。早く起きろ。」

 ここは森の中。背中を打ったらしくソウガはうずくまっているがエドルは容赦なくつま先で小突いている。シャヤはなんとかしようとオロオロしているがナールは我関せずといった感じで周りを見渡している。

「痛いって言ってんだろ!」

「やっと起きたか。バカ野郎。」


               ―ラフレシア―

 

「あ...」

「え?」

「な...」

「は?」

 4人の頭上を巨大な火球が通り過ぎた。しばらくすると東の方から爆音が響き渡り、空が紅色に染め上げた。強風が4人の元まで吹いてくる。

「なんだよこれ...」

 ソウガがぼそりと呟いた。


「あらあら、だいぶ派手にやったんじゃない?」

「3,4チームは殺っただろうな。」

「もう2,3発くらい撃っとけよ。」

「いや...あまり魔力を消費するわけにはいかない。それに、減らしすぎてもつまらんだろう。」

「それもそうだな。ハッハッハ。」

 そう言うと巨大火球ラフレシアを放った赤髪の男とその仲間は小高い丘を後にした。


「なんだったんだあれ...」

「私も初めて見ました...」

「あれは炎魔法―ラフレシア―。あれを撃てるやつは俺が知る限り1人しかいない。」

 ソウガとシャヤが腰を抜かしている中、何かを知っているであろうエドルが説明しようとする。

「それよりこれからどうするか、作戦とか考えないと。ぐずぐずしてると敵が来ちゃうわ。」

「ん...まぁいい。作戦だが、それよりソウガ、お前のとっておきとやらを見せてくれ。」

 説明に興味がないのか、ナールは話題を変えようとしてきた。せっかくの話題を切り上げられ不服そうだったエドルだが、確認したいことがあるようで、ソウガに声をかけた。

「え?」

「え?じゃねーよ。お前から言ってきたんだろうが。」

 ソウガは忘れているようだったが、あぁ、あのことかと思い出すと、               

「そうだった、そうだった。ならば見せてあげましょう。開発に4年かかった俺のとっておき!」

 と言い、拳を握りしめ、

「ハアアアアアァァ!」

 と力を溜め始めた。力が溜まるに従ってソウガの首から頬にかけて紫の線が浮かび上がっていき、口元に紫の光が集まっていく。光球が大きく開けた口と同じくらいのサイズになると、

魔磁砲マジキャノン!!!!」

叫び声と同時に紫の光線が森の木々をなぎ倒しながら100mほど突き抜けた。

「どんなもんだい!魔力を水鉄砲の要領で放つ俺のとっておき!魔磁砲マジキャノン!!」

ソウガはドヤ顔で解説を決め、チームメイトに自分のとっておきの評価を求めた。

「威力だけは褒めてやろう。威力だけはな。」

「ビジュアル面を改善してほしいわね。」

「どんどん食らいたくない魔法が更新されていきますぅ~。」

評価は散々だった。

「なんでだよー。かっこいいだろ、ビームだぞ。」

「ともかく、これで役割は決まったな。俺が前衛でお前が後衛、シャヤは回復術士ヒーラーでナールはその護衛やサポートをしてくれ。」

悔しがるソウガを横目にエドルはこのチームを陣形を決めていく。

「おい、撃ってきたのはこっちじゃないか?」

「お前らかぁ!俺らを撃ったのはぁ‼」

「やっちまえ!人間砲弾ヒューマンシェル!!」

木々の間から男3人組が駆けてくる。来た方向は魔磁砲マジキャノンを撃った方向だ。

「来るぞ!陣形を崩すな...グフゥ!」

発破をかけようとしたエドルだったが、人間砲弾ヒューマンシェルが直撃し、吹き飛ばされていった。

「お...おい、大丈夫かエドル!」

「イヤぁ!ナールちゃん守ってぇ!」

「言われなくてもそのつもりよ。」

「先に仕掛けてきたのはそっちだろうがよぅ。」

「敵討ちだ。悪く思うな。」

―今、戦いの火蓋が切って落とされた―

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る