第33話 武闘派だったとは
「ええ、確か義母様が骨折なさったとか」
「その知らせはドレス代が送金された後でしたよね? ちょっと記憶が曖昧なんです」
ああアレンさんも忘れてしまいたい記憶なのですね?
まだ賭けに負けたことを引きずっているんでしょうか?
「ええ、ほぼ同時に近いですが、数日後だったと思います。お金はそのまま残ってますよね? その箱の中にお手紙も保管していると思うのですが」
アレンさんが頷くとリリさんが阿吽の呼吸で取りに行きました。
するとルイス様が目を見開いて呆れたように言いました。
「ゲンナマを送ってきたの? 商会経由為替じゃなく? なんて危ないことをするんだ」
「そうですよね。その時点で怪しむべきでした。なぜゲンナマだったのか」
アレンさんが顎に手を当てて呟きました。
ノベックさんが言います。
「屋敷にあった現金を全部送る必要があったんじゃないか?」
「現金があると拙いことが起こっていたということか?」
「宝石類なら換金するからどうしても痕跡が残るだろう? 現金なら足がつかない」
「やはりあの時点で何か起こっていたと察知するべきだったな」
リリさんが戻ってきました。
どさっと置かれた箱から現金が零れ落ちました。
急いで拾おうとした私をジュリアンが止めました。
アレンさんが手紙を取り出してルイス様に渡します。
「この頃に届いた手紙は分かりますか?」
「ああ、2年前の3月だな? これか? いや、これか?」
その時ドアが開き、ランドルさんが現れました、もちろんノヴァさんと一緒に。
「私が探します。2年前の3月ですね?21-3-5辺りかな」
「お前の無駄な努力が実を結ぶ日が来るとはな」
ルイス様がボソッとディスりました。
アレンさんが2通を照らし合わせて解読しています。
「ああ、なるほど。この時点ですでに賊が侵入していますね。ノース国の言語使用とあります。大奥様が相手をしたようです。賊は5人ですね。まあ5人程度なら大奥様ひとりで十分です」
「お義母様が! なぜ!」
私は驚いて大きな声をあげました。
「だって大奥様だから」
全員の声が揃いました。
マジですか? お義母様は武闘派だったのですか? あの優しいお義母様が?
ルイス様が私の肩に手を回して静かな声で言いました。
「父上も相当な使い手だけど、私を鍛えたのは母上だよ。剣術も体術も極めてる。父上も母上には勝てないって言ってたし、私も勝ったことがない。まあ寄る年波には勝てなかったのかもしれないけれど、おそらく賊とのバトルには関係ないところで怪我したんじゃない?」
「ええ、お風呂でコケたと書いてありますね」
アレンさんが溜息混じりで言いました。
「まあ、死ぬ以外ならかすり傷って人だから問題ない。それで現状は?」
「わざとおびき寄せて、軟禁された振りをしていると」
「それで暗号か? 完全に遊んでるな」
「伯爵のことだ。こちらの動きを察知しておられたのでしょう。奴らの作戦に乗ったふりをしてこちらの作戦に支障が出ないようにされたのだと思います。とにかくルシアを守れと全部の手紙に書いてありますね」
「状況が変わったのが。ああ、これだ」
1枚の暗号解読メモを抜き取りました。
「イーリスとリアトリスが来て、ルイス様とルシア様に成りすまして好き勝手しているという内容ですね。半年ほど前です」
「なんだとぉぉぉぉ!」
ルイス様の声が部屋中に響き渡りました。
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