第4話 謝罪配信①

「ふぅ……」

 配信の待機画面を映し出すパソコンを前に、重いため息をつく。


 ディスプレイには15:59の文字。

 配信まであと1分だ。


 朝ごはんからずっと配信のことを考え続けていた私は、このあとどういう流れで進めるかのある程度の段取りを決めていた。


 まず、視聴者の方々に謝罪する。

 そして、自分の口で何が起こったのかを説明する。

 最後にこれからも見てもらえるようにお願いする。


 何も面白くない配信になってしまいそうだが、悪いことをしてしまった次こそが大事なのだ。ここはふざける場面ではないと思う。


 ディスプレイ上の文字が、16:00に変わる。


 その瞬間に待機画面から配信画面へと変わる。


 それを確認して私は段取り通りに言葉を発した。

「この度は視聴者の皆さんをはじめ、世間の方々をお騒がせしてしまって申し訳ないです。本当にすいませんでした。」


 さあ、これでコメントが説明を求める声で溢れるだろう。

 それに乗って配信をしていったら不自然にはならないはず……

 コメント

 :www

 :不倫した芸能人みたいなコメント出すやんw

 :むちゃくちゃ落ち込んでそうやけど大丈夫か?

 :というか同接エグいことになってて草

 :個人系でこの数叩き出すんはマジでエグい


 ――ん?

 なんか思ってたんと違う……?

「へ?」

 予想していたコメントとは違うコメントの数々に私は呆けた声を出してしまう。


「えーっと、皆さん、怒ってないんですか……?」

 恐る恐る、質問してみると


 コメント

 :なんで?

 :怒ること一つもなくね?

 :大袈裟すぎるんよw

 :むしろファンとしては配信中よりもテンションの高いあかねちゃんを見れてむしろ嬉しいまであるんよな


「うぅっ」


 ああ、

 なんて視聴者の方々は優しいんだろう。


 私の印象が崩れてしまうような事件を私は起こしてしまったのに、みんな呆れるどころか気にせずに接してくれているのだ。

 

 コメント

 :そうか?俺は俺の中のあかねちゃんのイメージが崩れた感じでなんだかなッて感じだけど

 :なんか、ちょっと複雑ではあるよな


 でもやっぱり快く思わない人達もいる。

 今回の配信の中ではそういうコメントの数は少数派。


そのコメントを見て、目をそむけたくなってしまう。

 でも無視するわけじゃなく……

 私はひとつ息を吸ってから噛みしめるように言葉を吐き出す。

「皆さん、優しいコメントありがとうございます。もちろん中に昨日のツイートを見て幻滅した方もいることは承知しています。ただ、そんな方々にも納得していただけるような配信を作り上げるよう努力していきたいと思っています。だから――」

「私のことを見捨てずに、ずっと見てくれたら嬉しいですっ……!」


 コメント

 :まあ、俺らもあれが嫌いなわけじゃないしな

 :複雑だけど、いつか自然と応援できるようになると思うよ?

 :まあ、清楚なあかねちゃんも見れるならソフトバンクが好きなことを表に出してもいいと思う

 :野球好きな女子って男子からしても割とポイント高いしな。それはそれでありなんよな


「ほんっとうにありがとうございます!」

 視聴者の方々がいい人ばかりで良かった。


 アバターと同じようにカメラの前で深くお辞儀した私はそう思った。

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