第3話 身バレ翌日

 「やばい、起きたくない……」

 目が覚めてすぐに二度寝を決め込もうとするが、昨日の出来事が頭に引っかかってしまって寝られなくなってしまった私はぼそっと一人で呟く。


 昨日の出来事が夢だったんじゃないかな?という一縷の望みとともにXを開くが、DMには、ファンの方々からのたくさんのメッセージが届いていて、一気に絶望してしまった。


「ほんっとにどうしよっかな……」

 昨日寝付けないまま色々な解決策を頭に巡らせたが、どれも良い結末に結びつくとは思えなかった。


「もう詰んじゃってるんだよなぁ……」

 そうつぶやきながら布団からのそっと起き上がる。


 時計を見ると9時をちょっと過ぎたくらい。

 今日の配信までにはまだまだ時間があった。


「気分変えるためにどっかに朝ごはん食べに行こっかな……」


『決めたら即行動。』


 これは私のモットーだ。


 小学生の頃宿題をしたくないとき、この言葉の通りに宿題を始めるとすぐに終わったことがある。

 高校生の時、好きな男子に告白するって決めてすぐに告白したからこそ、恋が成就したこともある。

 Vtuberになろうと決めたときだって、すぐに勉強を始めたり、Vtuberのライブをひたすら見続けたりした。


 今回もうじうじ考え続けることなく、とりあえず強制的に考えることを中断して服を着替え始めた。


 よし。

 このまま優雅な朝食を食べて、配信までこのことをあんまり考えないでおこう。

 私の精神衛生上良くないことばかりだから。


 そう考えながら、私は家を出た。


       ◇◇◇

 配信まで好きなことをしよう。

 そう考えていたころが私にもありました。


 家の近くのカフェに到着してホットコーヒーとサンドイッチのセットを頼んで、スマホの電源をつける。

 いつもの癖でXを開きトレンドのところを確認する。

「えっ、嘘……」


 そしてそこで私は固まった。


 私が目にしたものは……


 1.トレンド 月狐あかね  8000件のツイート

 2.トレンド 福岡ソフトバンクホークス  4500件のツイート

 ………


「え、ん、え、あ、え?」

 声にならない声を私は上げた。


 私がXのトレンド1位?

 え、なんで?――って心当たりがある理由なんて一つしかない。

 てことはツイート消したけど、いろんな人が知ってるって言うこと……?

 え、ちょっと待ってそれってやばくない…?


「失礼します。ホットコーヒーとサンドイッチになります。」

「やばいやばいやばい」

「お客様?大丈夫でしょうか?」

「まじで終わった終わった終わった……」

「……御用がございましたら何なりとお伝え下さい。失礼します」

「まじでどうしたらいいのまじで」


 結局それから一人で呆然とつぶやき続け、気がついたときには、目の前にコーヒーが置かれていて、しかも冷たくなっていた。


 全く優雅じゃない朝ごはんを胃の中に突っ込んだ私の気分は最悪だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る