第2話 憂鬱とドキドキの体育。
「なぁ、今日何あったっけ?」
「今日は現文と古典と数Ⅰとコミュ英と……あとは体育が二時間だったかな」
「はあ……なんで体育二時間もあるんだ。いらないだろ二時間も」
俺は朝食である何も塗っていない焼いた食パンを頬張りながらぼやく。
なぜ何も塗っていないかって? うーん……俺はそっちの方が好みだとしか言いようがない。つまり、特別理由はない。
「二時間あるのは体育祭が近いからでしょ。仕方ないよ」
俺の反対に座っている
俺の作るハンバーグが好きって言っている割に、こいつは結構甘党だったりする。ほら、昨日だってアイス食べてただろ? そういうことだ。
んんっ、話を戻そうか。
「体育祭とかいう人柱の儀式はもう開催取りやめた方がいいまである」
「人柱って、そんなことないでしょ」
「そんなことあるだろ!!」
俺は勢いよく机を叩きながら身を乗り出すように立ち上がる。それを見た夜宵は目を丸くしていた。
「えっ? ど、どうしたの急に」
「甘い。甘すぎるぞ夜宵! 体育祭はなぁっ! なぜか必ず何かの種目に出なくてはいけなくて、クラスの奴らがどんどん出場種目を決めていき、余ったやつが俺に飛んできて、いい結果を残さなかったら血祭りにあげられるんだぞ! やりたくもないのにやらされるなんて人柱じゃなかったらいったい何だって言うんだ!!」
「わ、わかったから、落ち着いて、ね?」
「はっ! お、おれはいったい……」
「あ、無意識だったのね……」
「と、とにかく、俺は体育祭なんて知らん」
ぷいっと顔を背けぷくーと頬を膨らせる。夜宵に呆れたような笑みを向けられるが知ったこっちゃない。
本当に、体育祭なんてもうこりごりだ。
中学の最期のクラス対抗リレーで、俺が走り始めた途端、一着で走っていたのにいつの間にか最下位の一周遅れになってしまった。それはもうクラスの雰囲気はお通夜状態だった。
そんな俺をいつも励ましてくれたのは朝姫だったな。まじで天使だ。……零の奴は面白がってたが。あ、思い出したら腹立ってきた。今日会ったら一発殴ろう。うん。
と、俺が朝姫の慈愛に満ちたあの表情を思い浮かべていると、地獄のような、なんなら事実上の処刑宣告を夜宵が口にしてきた。
「でも、体育祭まで毎日体育あるとか先生言ってなかったっけ?」
「は? 聞いてないんだけど? まじ?」
「え? うん」
「ていうか体育祭っていつだっけ?」
「体育祭嫌でもそれくらい覚えておこうよ……二週間後だよ」
「二週間もあるのか……」
ああ、もういっそ地球滅びないかな……二週間もあれば滅ぼせるだろ? なあ地球外生命体の皆さんよ? 頼むよ! マジで! そうじゃなくてもなんかてきとーに隕石とか落ちてこないかなあ……異世界からの侵略でもいいぞ。うん。ああ、なんか体育祭滅ぼすテーマで一本書こうかな……まじで書けそう……。
そんなあほなことを考えてると、夜宵が食パンを一枚平らげて二枚目を手に取りながら困ったような顔をして言ってくる。
「わ、私も頑張るから、
「俺は運動が苦手なんだ。それはもう壊滅的で頑張るとかそういう次元じゃないくらいに。でも、お前は俺と違うだろ?」
「そんなことないよ? 私だってできないことあるし。ほら、家事とか? 家庭科のとき本当に苦労するんだよ? でも、頑張って最後までちゃんとやりきるの。それと同じでしょう? それに、私も別に体育祭やりたいわけじゃないしね」
「そうなのか?」
「うん」
夜宵が体育祭を楽しみにしていないというのは、正直意外だった。なんか、こう、学校行事は全部全力で楽しみまーす! 的なやつだと思ってたから。
「だって、体育祭って土曜日じゃない? いつも休日にゲームやってるから、ゲームやる時間が無くなっちゃうのよね。振替休日はあるだろうけど、平日と休日じゃドロップするアイテムとか変わってくるのがあるから予定立て直さないといけなくなるし……」
ああ、そうだった。こいつは最初からこうだったな。ゲームのことになると途端にIQが下がる。いや、逆に上がってるのか? ま、どっちでもいっか。
「ゲームもほどほどにしとけよ」
「わかってるよー」
ならいいんだけどな。――っと、そろそろ時間だな。夜宵もちょうど食べ終わったみたいだし。
「そろそろ家出ないと。準備はできてるか?」
「うん。あとは着替えるだけだよ」
「そうか。それじゃ、俺も着替えるか」
◇
部屋に戻った夜宵は制服を持った途端、硬直して、その場にしゃがみ込んだ。火照った頬に両手を当てて頭を振る。
あー! ヤバかった! もう平静保つので精いっぱいだったよ! そう簡単に昨日のこと忘れられるわけないじゃん! もう、壊くんの全裸(半裸)が脳裏に焼き付いて全く離れないんだけど!? 寝ても全然忘れないんだけど!? っていうか、なんで向こうはあんな平然としていられるの? 恥ずかしかったんじゃないの!? ずるいじゃん! あ、いやでも、平然じゃないか。怒り? くるってたね。
普段はクールな感じだし、あんな壊くんは珍しいな。ここ二か月で初めて見た。ふふっ、新しい壊くんも見れて今日は案外いい日かも?
もう昨日の夜から寝て朝起きても離れなかったあの光景を思い出して悶え、新しい一面を見たと興奮し身悶え、もう変態の極致に片足突っ込んでいた。しかしそこはお嬢様。理性はしっかり残っている。
「ああっ、こんなこと考えてる場合じゃなかった。早く着替えないと」
クローゼットを開けて、綺麗に掛けられた制服を手に取り着替える。
ドレッサーの鏡を見て髪を整え、少し薄く控えめのリップもしっかり塗って、鞄も持って――
「おーい、そろそろ出るぞー!」
「はーい、今行くー!」
玄関の方から聞こえてくる壊の声に、夜宵も元気よく返す。
さあ、今日も一日頑張るぞー!!
◇
「よし、いつも通りの時間だな」
「そりゃいつも通りだからなー」
「そうだね~」
「いつもと違ったら、その方がおかしいよ」
最後の夜宵の言葉に、同意を示すように俺はうなずいた。いや、まあ、確かにそうだと思ったからな。
さっきも言った通り、いつも通りに夜宵と部屋を出たあと、まず
これが、俺たちのいつも通りである。
「まぁとりあえず、席に着こう。もう少ししたら先生来てホームルーム始まるからな」
俺が言うと、三人は大人しくうなずいて自分の席に座った。
にしても教室は涼しいなあ。エアコンが窓際の真ん中らへんにあるから、教室の真ん中にある俺の席に冷風がちょうど来るんだよな。外でじりじり焼かれた身体に
登校中は地獄の釜にでも入ったみたいに暑かったからな。まだ六月初めだけど、最近は既に暑くて涼しさなんてどっかに行ってしまった。
こんな環境で体育二時間もやるとかこの学校アホなのか? 絶対やんない方がいいだろ。うん。体育とか抹消した方が世のためだな。はあ……午後の体育が今から憂鬱だ。
再び体育のことを思い出してしまい、気落ちしていると、突然バァン! と激しい音が鳴り、心臓を抑えて音の発生源に目を向ける。
び、びっくりした……何かと思ったら、扉の音か。いつものことだけど、ダイナミック入室を止めて欲しい。お願いだから。
「だ、大丈夫だよね!? まだ遅れてないよね!?」
「大丈夫です先生。まだ遅れていません。一分前です」
夜宵が入室してきた人物に、淡々と自然に言葉を返している。
そう、この光景は、この一年一組では毎日のことだった。
慌てたようすで教室にダイナミック入室を決めた、灰青色の瞳に赤茶色の髪をミディアムに切りそろえた女性はもちろん担任である。
彼女の名前はすずちゃ――ゲフンゲフン、
この様子からわかるだろうが、少し時間にルーズなところがある。穏やかな性格をしていて、生徒からも他の先生からも結構人気のある先生だ。巷では親しみを込めて、すずちゃんと呼ばれたりもしているらしい。
まぁ、それを本人を前にして言うと、威厳がどうのこうのっていろいろ言ってくるらしい。つまり、この呼び名は公認ではないということだ。みんなも気をつけような……一人で何を言っているんだ俺は。ラノベの下手な人物紹介かってな。
一人でボケツッコみをしていたら、ちょうどホームルームの開始を合図する鐘の音が校内に響いた。
「あ、チャイムなりましたね! それでは、ホームルームを始めたいと思いますっ!」
◇
「はあ……憂鬱だ……」
「どうしたー? そんなに嫌かー?」
「いやだよ! どうして……なんで俺が……」
「まあしゃーないな。みんなしっかり数出てるし、お前だけ出ないなんてないだろ」
「にしたって……こんなの、あんまりだ……!」
「そこまででもないだろー」
今はお昼休みも終わって体育の時間。体育祭の練習をやるというところで、壊は絶望の宣告を受けた。
「なんで、俺が、全員リレーの、スタートを、やらなくちゃ、いけないんだ!! っていうか高校生にもなって全員リレーとかやんなくていいだろ!!」
そう、よりにもよってリレーのトップバッターを任されたのだ。頭の中を中学のころのトラウマが駆け抜ける。
「うぅ……」
「まあ、確かに選抜リレーだけやっときゃいいとは俺も思ったけど、前からあるみたいだし、仕方ないな」
「なにも仕方なくないわっ! 加えて俺は、騎馬戦と借り物競争にも出るんだぞ! 終わってやがる!」
「いや、それくらいよくないか?」
「よくないわっ! なら、零はなに出るんだよ!」
すまし顔で他人事のように言ってくる零に、勢いまかせで聞くと、普通に答えてくれた。
「えー? 俺? 俺はなー、綱引きとパン食い競争と、あとは……俺も全員リレーだな」
うっわ……パン食ってる姿まで様になってそう……イケメンがパンで口をふさがれた状態で、その首筋に流れる煌めく汗が、またエロい……じゃなくて!
「綱引きとか俺の出場競技と交換してくれよぉ! 騎馬戦、上に乗れって言われたんだけどぉ!!」
「ま、お前軽いしな」
「五〇キロって軽いの!? 初耳なんだけど!?」
「男子高校生の平均体重は五八キロ前後だって聞いたぞー」
えっ、そうなの? マジで初めて知った。てか俺、平均よりも八キロも軽いんだ。それは確かに軽いな。……でもなくて!
「軽くても騎馬の上に立つとか無理なんだけど! 普通に怖いんですけど! 速攻で負けてリタイアなんですけど!!」
「ふっ、まあ頑張れとしか言いようがないな?」
こいつ、ムカつく顔してるなぁ~くそぅ、したり顔しやがって! 絶対いい成績残してやる!
恨みがましく睨み付けても、すました表情を崩さない零にため息を吐いて、俺はその場にしゃがみ込んだ。
「はあ……にしてもマジで嫌だな……体育祭」
「そんなにか? 俺はいつもよりは少しだけ楽しみだけどな」
零のまさかの言葉に、正気を疑いそうになる。あんな地獄を楽しみなんて……いつもは俺と同じ……いや、俺よりはやる気はあるが、それでも楽しみなんて言うはずないのに。
「まじか……お前頭どうかしちゃったんじゃないか? 脳みそとっかえるか?」
「ははっ、ひどい言い草だなー親友よー。まあいいけど。壊様は楽しみじゃないご様子で……な、朝姫?」
「そうだね~残念だな~壊くんが楽しみにしてなかったなんて~ね? 夜宵ちゃん?」
「えっ!? わ、私に振らないでよ!」
朝姫が悪いことを考えたかのような笑みを浮かべながら話を振ってきて、夜宵が驚いたようにビクッと肩を震わせたと思ったら、わたわた慌て始めた。
びっくりした……なんでこいつらナチュラルにここにいるんだ? 全然気づかなかった。ていうか女子は別行動じゃなかったっけ?
いや、それより、やっぱり朝姫まで俺の前で楽しみにしてるとかどうの言うのはおかしい。昔から俺に体育祭のやる気がないことを知っているはずだから。
「てか、何を楽しみにすることがあるんだ? 体育祭なんて地獄でしかないだろ」
だが、何度も言っているが、体育祭なんて消えてしまった方がいい。あくまで個人的な意見だが、何がどうあれ俺の考えは変わらない!
そう決意を固めてると、ビミョーな表情で夜宵が口を開いた。
「あー、多分壊くん体育祭の話全部聞き流してるから、把握してないんだと思うよ」
「え~そうなの~? じゃあ、せっかくだし言わないでおく~?」
「いや、そこまで言われたら気になるだろ!」
「でも、壊様は体育祭楽しみにしてないんじゃなかったっけ?」
お前らが楽しみにしてて俺が楽しみにしてないのを意外そうに言うから気になったんだろうがっ! くっ、零のやついちいちムカつく顔するなぁ! 口の端歪んで隠せてないぞこのイケメンが! どうせ内心ニチャニチャしてるんだろ!
「ああ、開催取りやめてもいいまであるな」
ならこっちは徹底的に決め込んでやる。まあ正直、当日になればこいつらの言ってることもわかるだろうしな。
「そんなことよりだ。なんで女子の二人がこっちに来てるんだ? 別行動だった気がするんだが」
「あれ? 聞いてなかったの? 全員リレーは文字通り全員出るから、女子も一緒に練習するってなったんだよ?」
「そうだったのか」
全く聞いてなかった。なんなら今から全員リレーの練習するってことも今知った。俺まじで無意識に体育祭関連のこと全部聞き流してるわ。普通にヤバいな。末期じゃん。重篤症状じゃん。
「おーい、そっちの四人もこっち来てくれー。そろそろ始めるぞー」
「は~い」
クラスメイトに呼ばれると、朝姫が手を振り返してみんなが集まってるステージ前へと歩きだした。俺たちも一緒に朝姫の後ろについていく。
「おー、来たな。それじゃあ早速始めるぞー。時雨、お前はこっちだ。最初よろしくな」
「あ、そういえばそうだった。俺、最初なんだよな。最悪だ。ああ……」
「まあ……頑張れ」
この、俺たちを呼んで今俺に『頑張れ』と言ってきた、亜麻色髪イケメンクラスメイトは、
……にしても改めて思うが、なんで俺の周りはイケメンと美少女ばかりしかいないの? 顔面偏差値高すぎるんだが。そん中に俺一人放り込むとかいじめか? いじめなのか? 俺悲しいよ。どうせなら俺もイケメンにしてほしかった……。
「それじゃ、位置について――」
手を挙げた体育委員がよく通る声で言う。
「ん? もう始めるのか」
えっと……まあクラウチングスタートでいっか……よし。
「よーい――」
体育館暑いし、早く終わらせて家に帰りたいわ……ていうかマジでなんで俺が最初なんだ? 希空はあの悲劇知って――
「――どん!!」
体育委員が手を振り下げると、俺の後方からズルッと音が聞こえてきた。
「え――――」
顔を上げて前を見たはずが、視界一面は体育館の床一色だった。
ズベシャァァ!! と派手に音を上げて、まさかの一歩も踏み出さずにこけた。
『時雨ぇぇぇえ――――!!』
あー……痛ってぇ……四コマ漫画かって話なんだよなマジで。それくらい綺麗にこけた自覚あるぞ。つーか顔からいくとかツいてないな。これだから体育は嫌なんだ。
そう思いながら、俺は身体をうつ伏せから仰向けに変える。転んだ時の派手な音に反して、目立った外傷はない。鼻血も出ていない。当然痛みはあるけれど。
すると、夜宵が近づいてきて、上から俺の顔を心配そうに眉を八の字にしながら覗き込んできた。
「あの……壊くん大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。これくらい慣れてる」
「それは……すごいね?」
何がだよ。疑問形だし。まあ、確かに顔面からすっころぶことに慣れてるのは、全国を探しても俺くらいしかいないか。
「はい」
夜宵が手を差し出してきてくれた。こういう優しさは素直にありがたいと思う。まあ、女子の好奇の目と男子の刺さるような視線がなければな。
「ありがとう」
「んっ、うん」
夜宵の手を取って起き上がる。そのとき、夜宵の顔がはっきりと見えた。
ん? なんか夜宵の顔が赤い気がするな……それに何か落ち着かないようだし……。
「なあ? 熱でもあるんじゃないか? 顔赤いぞ」
「へっ? そ、そんなこと――」
「ちょっと失礼――」
そう言って、俺は自分のおでこと夜宵のおでこに手を当てる。
マンガでよくやってるところ見るけど、ちょっとわかりずらい……ん? なんかだんだん熱が上がってる?
「夜宵」
「ひゃっ、ひゃいっ!?」
「やっぱり、熱あるんじゃないか? ちょっと熱いぞ?」
「えっ、あ、い、いやいやいや、き、ききき気のせいだよ! うん! 気のせい気のせい」
「えっ? そうか?」
いや、気のせいにしてはすごく動揺してるように見えるけど……本人がここまで言うなら……大丈夫なのか?
「まあいいや。体調悪くなったりしたらすぐ言えよ? すぐ転ぶ俺が言えたことじゃないが」
「う、うん。ありがとね……」
なんかポーッとしてるけど、本当に大丈夫か?
なんだか心配で、夜宵の後ろにいた朝姫にも一応言っておく。
「朝姫、こいつのこと一応みておいてくれ。熱あるかもしんないから」
「わかった~まかせて~」
朝姫がグッと親指を立ててウィンクしてくる。さすが幼馴染、頼りになる。ここは朝姫に任せておけば大丈夫そうだな。
◇
「時雨、大丈夫か?」
「派手に転んだなー」
「うるせー。はぁ……もう大丈夫だ。さっきは考え事してたから――――」
はあー……いや、破壊力やばしゅぎりゅぅ……。もぅ……壊くんの手を取ったときの気を許したようなあの顔! あの、こう、胸がきゅうってなる!! お風呂上がりの壊くんを見たときにも感じるやつ!
それに、なにあれ! お、おでこに手を当てて熱計るとか……もう、恋人じゃん! なんか恋のABCのAを飛ばしてBまで一気に行っちゃった気分なんですけど!?
あ~どうしよう……ずっと一緒にいるのに、全然慣れないよ~ドキドキしちゃう~!
「――ちゃん! 夜宵ちゃん!!」
「はっ! な、なに!? どうしたの!?」
「どうしたの!? は、こっちのセリフだよ~。ずっとぼーっとしてるし~本当に熱でもあるのかと思っちゃったでしょ~?」
「い、いや、それはなんというか……」
ここで夜宵が言い淀んでいると、朝姫がなにかに気づいたように顔をニヤッとさせた。
「ふぅ~ん……そっかぁ~。そうだよね~好きな人の顔があれだけ近づけば、ぽけ~ってなっちゃうのもしかたないよね~」
「へあっ!? な、なに言ってるの朝姫っ! べ、別にそそそそんなじゃないしっ!」
「え~そうなの~? あのままおでこコツンてさせて、あわよくばチューまでって期待しちゃったんじゃないの~? 私には~そんな期待に打ち震える、女の子の顔にみえたけどなあ~」
「そっそそそそんなところまで考えてないしっ! キ、キスだってもっとシチュエーションとかムードが……って、何言わせるのっ!」
「ふふっ、冗談だよ~。夜宵ちゃんかわい~。あっ、そろそろ私たちも順番来るから位置についておこ~?」
「う、うん……」
もうっ、朝姫はたまにこうやっていじわるしてくるのよね……どうせ全部お見通しのくせに……。
まあいいや。今は切り替えなくちゃ! さっきは……その……思わずぼーっとしちゃったけど、クラスのみんなには迷惑をかけられないし、どうせなら体育祭勝ちたいからね。
さ、体育祭に向けて頑張るぞー!!
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