第16話兄は妹に頭が上がらない

「お、おい!」


「ふふふふふ」


「なんか言えよ!笑ってないで!怖いわ!」


「じゃあ説明してくれる?なんでお兄ちゃんは私をシカトして爆睡かましてくれちゃってるのか?」


海斗は布団にくるめられ縛り上げられていた。

頭と足だけ出ていて逃げようにも七海に跨られているこの状況では手が動かせない以上、抵抗できなかった。全く動かないのをいいことに顔軽くを蹴られたりすね毛を一本ずつ抜かれたりと無限に嫌がらせできるストレス発散器とかしていた。


「いや、その写真撮ってきてやれなかったし」


「は?別に私は写真撮ってきてなんて言った?思い出話でいいよって言ったよね?」


「……確かに」


「今きずいたんかアホー!」


もはや呆れて海斗は解放され昨日の思い出話をすることになった。もちろん祈織の告白も含めて。


「ひゃー!祈織さんすご。」


「俺は困るんだがな」


「ナンデ?」


怖い。恐ろしい下手なことを言えば殺されそうだ。そうは思っても自分が持つ疑問を優先させた。


「そもそも、俺なんかの何に興味があって、す、好きなんて言うんだよ」


「まぁ、そうね。にぃなんて卑屈で拗らせてて勉強が性癖の変態だから」


「ぐ、否定できな…ちょっと待て最後のなんだよ」


ツッコミを無視してジト目で頭から足までをじっくり見て兄のいい所を探すが、なかったようだ。ため息をついて毒舌を吐いた。


「お兄ちゃんは何迷ってるの?その、転校生の沙耶さん?だって、他に言って欲しいことがあったんじゃないの?私が言ったらダメなような感じするし言わないけど。」


沙耶の事はよく分からない。何か怒らせてしまったのか。何かしてしまったのか。

そもそもアイツが聞きたかったことも分かってない。


「…くっそ…どうしろってんだよ」


頭を掻きながら腕を枕に考えをまとめようと思考するがどうにもまとまりきらず。その日は勉強もできず終わった。



祈織は待っていた。

銀時計前。やはりここには人が多く、近くで何かイベントでもやっているのだろうか?カメラを持ってきている人が居た。名古屋の裏側いわゆるオタクの多い場所。アニメのグッズ。

カードゲーム店の多いこと。


「遅い…遅」


二十分。自分から呼んだくせに遅刻する男に怒りが段々と膨らんでいった。


「悪い悪い」


ヘラヘラとした態度で話しかけてくるのは司。

片手に持つはスマホもう片方にはコンビニで買ってきたであろうフラッペがさらに祈織の怒りがさらに膨らんでいった。


「あんた、殺…ぶっこ…来てくれて嬉しいな」


「こっっわいぞ、お前」


こうして司は祈織を落ち着かせファミレスに向かった。



「今日はあんたの奢りね」


「えー、昨日遊んだから金ないんだが、俺」


「…」


「無視しないで」


周りから見れば喧嘩してるカップルに見えるのだろうかそんな疑問を抱きまぁどうでもいいかとメニューに目を通して完全に司の声をシャットアウトした。



「で、どうだったの?」


「…」


「今日呼んだのなんて分かってるだろ、それにお前も来たんだからよ」



近況報告のために呼んだようだった。

理由は言わずもがな、祈織が告白したかどうかを司は聞こうとしていた。司は勘がいいから帰る時の海斗の態度で分かってそうだが。



「……した」


「へ?」


「告白した…」


「おお!」


顔を赤く染め、恥ずかしそうに手で顔を隠して目線を司から外した。司の表情からイジりたいというオーラを纏っていたため、料理が来るまでスマホをいじって司の話を完全無視していた。

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